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- / ISBN・EAN: 4933672242309
感想・レビュー・書評
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イタリアネオ+クラシッコ映画祭にて今作を初めて鑑賞しました。
第二次世界大戦の敗戦を終え不景気真っ只中のイタリアの貧困を描いた「イタリア ネオリアリズム」の名作とも呼ばれている通り、極限の貧困の中で生まれる混沌とした社会、そして家族愛を基盤にしたヒューマニズムをシンプルなストーリーのなかにしっかりと組み込んでいる作品でした。
働くための大切な自転車を盗まれるという絶望から始まり、また絶望とこれでもかというほどに主人公を打ちのめしていきます。
ようやくありつけた仕事はこの自転車がないとクビになるのに、警察も協力してくれないし犯人の手掛かりもかなりお先真っ暗。
自転車がないと言うことは家族が飢え死にすることにも相当するのでそりゃあ父親は必死です。
この絶望に次ぐ絶望のお話の唯一の救いは大人びた顔立ちでしっかり者なのに、たまにコミカルに子供らしく振舞ってくれる、かわいい息子ブルーノ君に他なりません。
警察はなんか冷たい感じ描かれていますが、そこまで理不尽すぎるわけではないし、現代の警察だってこんなもんだと思うけれど、集団での激昂ぶりは、なんかラテン気質もあるイタリア人らしい描き方。
こんな風に主人公たちの悲壮感を過度な演出でデフォルメすることなく、まるでドキュメンタリーのように当時のそのままの状況を表現してるところが嘘臭さもなく今尚人々から愛されている理由なのかなと思いました。
家族を守るために自転車を手に入れて、家族に美味しいもの食べてもらうために必死で自転車探して、そしてラストには自転車を手に入れることで頭がいっぱいになっていた父親。
ブルーノ君の涙と、父親の感じた絶望感はもう大きな大きなため息しか出ない。
思った以上に救いがなくてこの生きづらい世の中に置かれてしまった親子の今後を思うといたたまれない。
この映画の訴えるもののすべてはあのブルーノ君が父親を悲しげに見つめるラストシーンにこそあるんだなと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示