本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (23ページ)
感想・レビュー・書評
-
高級タワーマンションの内廊下。プライバシー重視のホテルライクな空間では、物音が外廊下よりも響くぶん、住人たちは息をひそめ、それぞれの存在を消しながら暮らしている。だが本当はだれもが隣戸が気になり、玄関の覗き穴からたがいを監視しては妄想を繰り広げている倒錯した空間である。ある日、そこで事件が起きる。
現場は豊洲のタワーマンションだった。九階の内廊下で幼児が、自転車のハンドルに貼りつけられたカミソリで手を切る事件が発生する。ホテル運営会社に勤める岩瀬晋治は、隣の騒がしい子どもが痛い目に遭ったうえ、場合によっては、その子を連れて両親が引っ越してくれるかもしれないと内心期待していた。だが疑いの目が自分に向けられていると知るようになると、心穏やかでなくなる。
岩瀬は旅行代理店勤務の妻・圭子と暮らしていたが、岩瀬宅には以前から、住人と思われる人物から警告書めいたイエローカードが玄関に届くことがあり、岩瀬は今回の一件は、住環境に敏感なその人物が幼児を懲らしめた結果ではないかと見る。しかし、内廊下を中心に互いに対峙するように配置された五戸の住人は、相手の名前はおろか、顔もはっきり見分けがつかない状況で、事件について互いに相談するのも憚られた。そんな折、岩瀬の職場に宣伝会社の男が訪ねてくる。その顔を見て岩瀬は驚く。それは、堀内という名の岩瀬宅の真向かいに暮らす気味の悪い男で、堀内は岩瀬が自分とおなじフロアの住人だと知らぬかのように振る舞いつつ、マンションで起きたカミソリ事件について語りだすのだった……。詳細をみるコメント0件をすべて表示
全1件中 1 - 1件を表示