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感想・レビュー・書評
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クリストファー・プリーストは『奇術師』の衝撃以来。『夢幻諸島から』(原題 "The Islanders")は、「夢幻諸島(dream archipelago)」の島々に関するガイドブック風読みものを中心に、警察調書、ルポタージュ、遺言書、一人称小説、三人称小説、序文(!)、手記など様々な形態で描かれる 36 の短編からなる連作集。一つのテーマに関連した短編を並べることで、その奥底に流れる主流のエピソードを傍流の連鎖として描き出す手法は、近年の小説では珍しくない構成だが、この『夢幻諸島から』ではその主流のエピソードすら判然とせず、いくつかのストーリー(コミス殺害事件、カウラーの社会活動、カムストンの著作活動、バーサーストの絵画芸術、ヨーのインスターレーション芸術などなど)が絡まるようにして全体を構成する。風に始まり、風に終わる全体構成もいかにも語りの達人らしい。さらに再読者は、あの冗長な序文の著者がチェスター・カムストンであることに驚くし、献辞がエズラに捧げられているに至っては、創作の一部なのかどうかも判然とせず。カウラー、カムストンともに替え玉がいる設定なので、何が何やら。年代が合わない記述もあるが、不老不死(ただしそれ以前の記憶を失う)の技術もある。プリーストが「騙り」の達人とも言われる所以。
ちなみに、この「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」のラインアップはもの凄く、全部揃えたいほどだが、装丁の割に高い気がしてなかなか手が出ていない。今回は Kindle のセールで安くなっていたのを購入して読了。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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