野火(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 以前から気になっていた作品でした。読んでみると、戦争小説というより、哲学的な感じを受けました。また、戦争というと、敵との争いの内容が多いと思っていましたが、この作品はまったく違いました。極度に腹を空かした日本兵が食糧を求め、死と向き合い、自分が何であるのかが描かれています。

    人間の肉を食べなければ生きていけない世界、戦後のトラウマから逃れられない日常を主人公の主観的な感情で話が進んでいきます。
    今だからこそ、人を食べるなんて・・・と思えますが、戦争をしている世界に正しい、正しくないという分別なんてっと思えてもきます。

    戦争は絶対にしてはいけない。

  • 自分を基準としているから他人の弱さが分からず、人は「正義」の名の元に裁いたりしていると考えさせられる作品だ。
    人間の考える正義は自分に都合良いもので、穴だらけであり、人それぞれに異なった基準、正義があるから人間の判断はブレるのだ。
    また、その判断ができないから葛藤するので正義に生きるとは正しい生き方なのか否かは個人の判断によるものではないのかと自身の生き方を省察させられた傑作。

  • 難解だけれど何度も読みたいと思った。

    「死ねば私の意識はたしかに無となるに違いないが、肉体はこの宇宙という大物質に溶け込んで、存在するのを止めないであろう。私はいつまでも生きるであろう」これは私自身の死の観念というか願望とほぼ同じで驚きと同時にちょっと感動。

  • 一行目を読んだ瞬間に、戦場に叩き落とされたような感覚に陥った。まだ掴みきれていない部分が多い。再読必須。

  • フィリピンの島での従軍中、肺病で戦争に加われず病院に行けと言われたが、食べ物も少なく受け入れてもらえない。病院の爆撃があり、一人で逃げつづける。
    戦争で同じような悲惨な体験をした人が多かったのかもしれず、戦争は繰り返してはならない。

  •  戦争小説として、その凄絶さは読んでみないとわからないであろう。現代の小中高校生に一読を進めたい。NHK教育でなんとかDe名著で紹介されており購入。小説としてもよくできている。

  • 真っ先に思ったのが、「戦争を美化してはいけないってこういうことか」でした。

    どうして永遠のゼロなどが批判されるのかをガツーンと思い知らされた感じです。
    あまりの陰鬱さと読みにくさで、正直きちんと丁寧に読んだかと言われれば頷きがくはあるのですが、それでも文章から圧倒的に伝わってくる悲惨さ。
    夢も希望も未来もなく、飢えと疑心暗鬼。死がすぐ隣にある場所での人間の滅裂さや意地汚さとか、なんかもう知りたく無いし見たくも無いけど、でも極限こうなるよな…という絶望感。

    本当に理屈抜きで戦争は嫌だと思い知らされる。


    ※新潮文庫ではなく『日本文学全集(集英社)』で読んだ

  • 戦争末期のレイテ島に取り残された、ひとりの日本兵の記録。「戦争を知らない人間は、半分は子供である」。人間が、獣ですらない、異形のものになる瞬間が克明に描かれます。

  • 記憶のなかの臭いや熱を指先からじわりと吸い取ってしまった。狂うことでしか生き延びられなかったその時代の感触をわずかでも感じ取ることができたのなら、それを感じ続けることがこの作品に価値を与えることなのだと思う。

  • よくわからない小説だった。
    解説もよくわからん。

    高校のとき、
    高校の図書館で レイテ戦記 を借りて読んだが、
    レイテ戦記は難しくなかった。

    英霊の御霊に哀悼の誠を捧げます。

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著者プロフィール

大岡昇平

明治四十二年(一九〇九)東京牛込に生まれる。成城高校を経て京大文学部仏文科に入学。成城時代、東大生の小林秀雄にフランス語の個人指導を受け、中原中也、河上徹太郎らを知る。昭和七年京大卒業後、スタンダールの翻訳、文芸批評を試みる。昭和十九年三月召集の後、フィリピン、ミンドロ島に派遣され、二十年一月米軍の俘虜となり、十二月復員。昭和二十三年『俘虜記』を「文学界」に発表。以後『武蔵野夫人』『野火』(読売文学賞)『花影』(新潮社文学賞)『将門記』『中原中也』(野間文芸賞)『歴史小説の問題』『事件』(日本推理作家協会賞)『雲の肖像』等を発表、この間、昭和四十七年『レイテ戦記』により毎日芸術賞を受賞した。昭和六十三年(一九八八)死去。

「2019年 『成城だよりⅢ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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