2021年中にギリギリ読み終わったぞ!
いや、1年の末尾を飾るに相ふさわしい青春野球小説でした。
もっともっと野球しているかと思ったらそうでもなく、青春群像劇的な展開。とはいえ野球を(ルールだけじゃなく観戦を楽しめる程度には)知らないと面白さは減少する。フットボールやバスケが人気とはいえ、アメリカ人のハートには野球がしっかり沁みついているんだろうなぁ…でないと、こういう小説は書けないし、ここまで取り上げられないと思う。
個人的には主人公の一人、ヘンリーの栄光と挫折の描写がすごく気になった。頂点を極めそうになってからのイップス…。藤波やハンカチ王子をを叩ける連中には、この描写は分からんだろうな。俺もこないだまではこの本を楽しめる資格はなかったかも
閑話休題
下巻の初めでヘンリーが回想するシーンが良い
僕が望んだのは何も変わらないことだった。いや、物事がよいほうに変わることだった。少しずつ、日々、永遠に、向上し続けること。毎日同じ夢をみること。毎日が前日と同じながら、少しだけ良くなっていること。スタジアムを少しだけ早く走る、ベンチプレスで少しだけ思い重量をあげる、バッティングケージで球を少しだけ強く打ち、スイング向上に役立つ小さなヒントを得る、すべてが少しずつ単純になる、同じものを食べ、同じ時刻に目覚め、同じ服を着る。そうやって不要なものが抜けていき、単純で有用なものだけが残る。少しずつ少しずつ向上を続けて、ついにすべてが完璧になる日が来て、その後は永遠に何も変わらない…。
究極のストイックでありミニマリズム。これ、これが俺もしたいねん、こういうことを目指していきたいねん、と共感の嵐が心をざわつかせた。53歳煩悩と無駄だらけの人生を生きてきて、その残滓が身体と生活にこびりついてしまっているが、明日…奇しくも2022年の幕開けとともに、ヘンリーの目指していた理想郷を目指して一歩一歩無駄を取り除いていきたい。
まぁ、彼自身はイップスの後、ストイックの行き場をなくして、しばし迷子になってしまうのだが…。
良い小説は面白いことは勿論のこと、人生に大きな影響を与えてくれる!