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感想・レビュー・書評
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この作品は元警察官のノンフィクション作家・大道寺圭が巻き込まれた様々な事件の間に、 彼が警察を退職するきっかけとなった事件を挟み込んだ、オムニバス形式のミステリです。
まず『大道寺圭最後の事件』と題された冒頭から始まり、その第一章が終わると本編の事件が始まる。 事件が終わるとそれに別の観点での解決を与えるような形で過去の事件が進んでいくという 大変特徴的な構成になっています。
主人公の大道寺の現在は、警察時代に出あった間抜けな犯罪者の姿を書いて本にする『食っていける失業者』。
幼なじみの編集者にやりこめられ、書いた作品が原因で凶悪犯にはカージャックされ泥棒には騙される、 お人よしでトラブル背負い込み屋。
しかしそれは彼の一面であり、もうひとりの彼はとても切れ者で機転が利き、クールで、そしてかなり ハードボイルドな人物だったりします。
話の一つ一つの面白さもありますが、彼の二面性こそがこの作品の大きな魅力なのです。
少なくとも私はそう思っています。
また、大道寺にはかつて新婚の妻を逃走中の強盗にひき逃げされたという悲しい過去を持っており、 それがこの一冊を一つの話としてまとめる大きな要素となっています。
大道寺が過去の事件において最後の最後に言う台詞によって、読者は全ての話が彼の過去に決着をつける ための物語であったことを知るのです。
特殊な形式、人物の魅力。
安心して読める好きな作家の作品にいつしか慣れてしまっていた私に、久々に『この作品は面白いぞ!』という 新鮮な衝撃を与えてくれた一冊です。
ぜひあなたも『爪を隠した鷹』の魅力を堪能してみてください。詳細をみるコメント0件をすべて表示