- Amazon.co.jp ・電子書籍 (484ページ)
感想・レビュー・書評
-
カエサルがいかにローマ共和国の実権を握っていったのかがわかります。大変面白く、興奮します。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シーザーがルビコンを渡って、元老院体制を崩壊させ、その象徴たるポンペイウスをトラキアに追って倒す。
シーザーは、終身独裁官に就任して効率的に各種改革を進めたが、権力の集中に不満を持つ層に暗殺される。
その後は、後に雌雄を決するアントニウスとオクタビアヌスがブルータスや共和派のキケロを倒す。アントニウスはクレオパトラと帝国の東側を分離させようとして、オクタビアヌス率いるローマと戦い無惨に敗れる。こうして前30年にパックスロマーナが完成。
女性の機微が分かるからか、特にクレオパトラについての塩野さんの描写は秀逸。 -
この巻-ルビコン以後-の主題は、カエサルと元老院派の抗争である。「ローマ帝国」をデザインしていたカエサルと「イタリア共和国」による国家運営を維持しようとしていた元老院派では格の違いを感じざるを得ないが、権力の集中によるリスクについてカエサルがどう考えていたのかは気になる。
王制の強権に対するチェック機能として採用されたはずの寡頭制システムが、いつの間にか「システムそれ自身」を維持するために「元老院最終勧告」という強権を持ってしまったことの非合法性を指摘し、勝者の地位に上り詰めた後もその権力を政敵の抹殺には使わなかったカエサルのことだから、権力の濫用という問題は間違いなく認識していたはずである。
徴税請負人制度の改革や医師と教師の待遇改善、そして後継者としてオクタヴィアヌスを指名したことから想像すると、カエサルの根底には人間に対する「信頼」があったのではないだろうか。それもサヨクの薄っぺらで偽善極まりない性善説による「信頼」ではなく、時に欲に流され、保身に走り、弱者を虐げるが、時に我が身を犠牲にしても信頼に応え、名誉に殉じ、不正に立ち向かう人間の性質を理解しての「信頼」が。もしもカエサルが暗殺されずに、オクタヴィアヌスへの権力移譲が平和的に完了していたら、そのときの法やルールはもしかしたら現在の民主制より優れたものができていたのかもしれない。
後半のアントニウスとクレオパトラに対する塩野七生の評価は辛辣だが優しい。「女への愛を貫きとおすのも、男の生き方の一つである。」 -
独裁官になってから、あっけなく暗殺され、その後のカエサルの後継者争いまで書かれている。
丁寧に、カエサルがどんな人生を送ったのかが記されている。
ただ、これは塩野節なのだが、必要以上のワクワク感は煽られない。
カエサルのすごさが文面からは伝わってこない。
淡々と、事績を追う。
それでも、この本は面白い。
カエサルの人生がそれほど特異なものだったからだろう。 -
ユリウス・カエサルがルビコン川を渡り、ポンペイウスとの闘いを制し、ローマ帝国を作り上げる。共和制ローマから帝政ローマへの変遷がおこる。
カエサル暗殺、アントニウスとクレオパトラ対オクタヴィアヌスとの権力闘争を経て、初代皇帝アウグストゥスの誕生まで。
多神教で法律を重んじ、火葬で故郷に埋葬されることを好むローマ人は、どこか今の日本に通づるところがあり、すごく惹かれます。
-
英雄の英雄たる所以、歴史が動いた瞬間、それに人間の悲しさや愚かさも。