続・発想法 KJ法の展開と応用 (中公新書) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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感想・レビュー・書評

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  • 発想法の補足説明と、時間が経ったゆえに増えた示唆が示されている。新しい発見があるという類ではあまりないが、理解を深めたりKJ法を思い出すのに使える。

  • 素晴らしい内容。KJ法が素晴らしい。単なる情報整理術や自己啓発的な道具ではない。ノイローゼの治療や夫婦間の和解にさえも用いることが出来る。(図らずもそのようになった記録が記されている。)そこから発展して、文明論とか人間思想論のようなところにまで本書は言及。

    キリスト者的には、教会のカウンセリングやビジョンの一致などに用いたいと思わされた。

    この震いでは最高の、私的評価である星四つ。

    下記にハイライトした箇所をコピペ:

    70 個のハイライト | 13 個のメモ

    オレンジ色のハイライト | 位置: 31
    たとえばKJ法を適切に活用すると、なぜ心身病患者は治り、学童は勉強が大好きになり、職場は活性化するのか。誰も本格的な研究結果を報告していない

    メモそんな事実があったのかと驚く一文。本書に例示があることを期待

    オレンジ色のハイライト | 位置: 184
    そこで今日といえども文化人類学における牢固たる伝統は、暗黙のうちに、「データそれ自身をして語らしめよ」という方法をとっている。これこそまさにKJ法の根底をも流れる方法なのである。したがってこの点においては、文化人類学の方法を理論化し体系づけたものが、ある意味でKJ法である


    オレンジ色のハイライト | 位置: 380
    ところが不思議なことに、その「なんだか気にかかる」ものごとを出しつくして、これをKJ法で組み立てると、自分の悩みのほんとうの構造がつかまれてくるのであ

    メモKJ法で自分の心のモヤモヤを視覚化し、解決へ導ける。

    メモ | 位置: 400
    この図は素晴らしい。教会や夫婦家族の意識のズレも、意識されなければ喧嘩や分裂のきっかけとなる。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 443
    もっともたいせつなことは、「なんだか気にかかる」と感じられるものを、ことごとく観察対象とすることである。人間は理性的に「なぜ必要な観察対象か」が説明できるよりもまえに、理性的以外の能力のほうが、それにさきだって必要性を感知するのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 554
    ことに今日の日本人はどのような意味にもとれるようなあいまいな文章を書く欠陥をもっている。メモが終わってから、自分がただちに死んでも、その資料を他人がまちがいなく使えるような表現が必要である。ときがたてば、自分もまた第二の他人となってしまう


    オレンジ色のハイライト | 位置: 566
    つぎの四つの注記はどのデータにもかならず必要である。すなわち「とき」と「ところ」と「出所」と「採集者」である


    オレンジ色のハイライト | 位置: 700
    内容をカードごとに一行見出し的に圧縮したものを書きこ


    オレンジ色のハイライト | 位置: 705
    さらにカードに書かれた一単位のデータが一枚におさまりきれない場合には、おなじ一行見出しのもとに何枚ものカードに、ひとつづきとして記してもさしつかえないようになっている。その場合には、何枚中何枚目であるかを示す数字をも書きこ


    オレンジ色のハイライト | 位置: 803
    この第二ステップの紙きれ集めにあたっての諸注意は、つぎのようなものである。  まず、それぞれの紙きれたちがいいたいことの本質を、すなおに聞きとどけることである。その本質同士の親近性で集めること。字づらの表面的な類似性で集めてはならない。たとえば「学生は……」とか、「品質管理」などという用語が共通であるからといって集めてはならない


    オレンジ色のハイライト | 位置: 808
    もっとも注意を要することはなにか。それはたがいに親しいと感ずる紙きれ同士を集めることであって、このさい、「感ずる」という能力がさきに立たなければならない。ところが不慣れな人は、感ずるという能力よりもさきに、理屈を考えて集めようとする。すなわち「Aの紙きれとBの紙きれとは、こういう理由によって一ヵ所に集めておいたほうがよい」などということを考えるのである。このように理屈がさきにたつと、グループ編成はまず第一歩からして、KJ法とはまったく逆の精神でおこなわれ、みせかけのグループ編成になるのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 829
    すなわち、紙きれたちの言い分をすなおに聞いた結果、自然に彼らの要求にしたがって、グループが段階的に編成されてゆくのである。つまり小分けから大分けへと進むのが正しい


    オレンジ色のハイライト | 位置: 831
    したがってグループ編成の第一段階で、ある一ヵ所に五枚以上の紙きれがたくさん集まってきたなら、そういうときには、自分がある既成概念にしたがってむりに紙きれを集めている危険性があるといっても、いいすぎではないかもしれない


    オレンジ色のハイライト | 位置: 887
    できる。しかしときには第一質問にたいして自信をもってイエスといえないことがある。すなわち、ここに数枚集まっているのが、きわめて自然にもっともだといいきれない場合がある。このときには、このグループの表札づくりはあとまわしにする。そして別の数枚のグループに着目して、おなじ試みをする。自信をもって表札のつくられるものからさきにかたづける。そして表札ができれば、束ねていったほうがよい


    オレンジ色のハイライト | 位置: 911
    表札さえみれば中味をみなくても、だいたいどんなものが収容されているかが感じとれるような表札でなければこまる


    オレンジ色のハイライト | 位置: 973
    再度強調したように、この場合は情念がまずさきに働き、それにおくれて理性が活躍するのである。けっしてその逆ではないし、また逆であってはならない

    メモKJ法の基本的な進め方。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,024
    たとえば探検の段階においてもしかりである。いったいどこをぶらつけばよいのか、それは必ずしも明白でない。なるほど東のほうをぶらついた結果、その人は金鉱を掘りあてるかもしれない。掘りあててしまえば、その人は得々として、自分が掘りあてるにいたった経緯を科学的に説明するかもしれない。けれどもこちらへゆけば金鉱があるということは、じつは、最初はなんとなくカンのようなもの、あるいはイヌの嗅覚のようなものを多分に用いて動いているのであり、理性的な推論過程はつねにそれよりも何歩かおくれがちなのである。  すくなくとも情念の斥候兵よりまえに進みでることは望みがない。また賢明でもないのである。

    メモKJ法はその情念を自覚し、理性で知る方法。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,051
    人間には十以内ぐらいの異なる要素ならば、これを直観的に全体としてまとめ、もしくはそこからなにかを見抜く力があるらしい。しかし、それ以上多い要素の数になると、むりになってくる。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,066
    適切な空間配置の場合には、なによりもまず、作業をしている本人に一種のさわやかな快感がおこるということである。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,187
    まず評価をするからには、図解の上のどの島を単位にして評価をするかをきめなければならない。

    メモ島、かたまり、の重要性の評価をする。点数をつける。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,234
    すなわち人は、自分の意見が軽視され、あるいは否定されることによって恨みをいだくということは、きわめて少なそうである。そうではなくて、それにさきだつ足し算や掛け算の段階が無視されて、たんに引き算や割り算のみがおこなわれることにたいして、いいしれぬ憤懣をおぼえて恨みをいだくのである。

    メモ人は自分が無視されなければ、意見が採用されなくても文句言わない。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,257
    けれどもここにきわめて重要な問題がある。「この人は有能である」とか、「あの人はだめである」とかいうふうに、能力の上下を単純なものさしで計ろうとすることは、はたして健全なことであろうか。すくなくともKJ法の作品をつうじて私が感ずることは、人間の能力とはたんに有能、無能とか、上下のみをもって計ることはできないものだということである。そうではなくて、いまひとつ、きわめて重要な能力評価の基準がある。それは「その人らしい個性」というものである。これは野原に咲くキキョウとオミナエシをもってきて、キキョウのほうがオミナエシよりもすぐれた花であるといいきれるかどうかということによく似ている。キキョウはキキョウらしく、オミナエシはオミナエシらしく、その個性的な姿のままに、われわれは十分の喜びをもって、それぞれの花を味わうことができる。

    メモKJ法をとうして著者が感じる人の本質。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,282
    まず文章化についてであるが、文章化は図解をふまえておこなう。そのときに図解のどの部分から文章化を始めるかという、一つの作戦の問題がある。どこから始めてもよいようなものであり、けっきょくは全体の構造にたどりつくのであるが、やはりこのあたりから始めるのが順序としてよいという場所がある。それは、個々の材料により、また作者の意図によってきまる。そこで「このあたりから始めよう」と思う島のうち、最小単元の島にまず注目する。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,294
    またこの島以上の大量のデータを同時に考慮のなかにいれようとすると、無理がおこって、かえって混沌におちいってしまって、なんのアイデアもでないのである。そこでまず、いちばん基本的に新しいヒントをしぼりだすのに適当な、多すぎず少なすぎずという一群のデータに注目する。基本的発想データ群と名づけた意味はここにある。私はこれの英訳としてベイシック・アブダクティブ・データという言葉をあて、その略で前著ではBADと呼んでみた。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,306
    一つは、つぎつぎに選ばれるBDAは、原則として図解上の隣接地区へとすすんでゆくこと。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,311
    もう一つの原則は、文章化のコースをはじめからあまり固定するよりも、書きすすんだつごうによって、柔軟に上下左右どちらに文章化をすすめるかを、そのつど、決定するほうがよいという原則である。


    ★ オレンジ色のハイライト | 位置: 1,358
    ここに人間についての不可思議なひとつの問題がおこってくる。すなわち人間は手を動かすことによって、新しいアイデアを思いつく。このことは文章化の段階だけでなく、グループ編成の場合にも、A型図解の場合にも同様によくおこることである。たんに頭で考えるだけでなく、手を動かして作業をするということが、アイデアの触発にたいしてひじょうにプラスに働くものである。そこで私はすでに「考えるといっても、理性で考えるというのと、情念で考えるというのがある」と述べたが、さらにもうひとつ「手で考える」という、不可思議な作用をつけ加えないわけにはゆかない。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,368
    かりに「手で考える」という、はなはだ便宜的、文学的な表現が許されるならば、この三種類の考える方法、すなわち「理性」、「情念」および「手」で考える、三者のあいだに適切な連合が生じ、相互に他方の考えかたを刺激しあい、また相互にその三つの考えかたのあいだに円滑な翻訳関係が成立したとき、最高度のすぐれた思索活動がおこなわれるものだと思う。


    ★ 青色のハイライト | 位置: 1,380
    そのほかにまだある。書きすすめているあいだに、「こういうことがあるのなら、もっとほかにありはしないか」という形の、データの追加にたいする要求が浮かぶのである。すなわち文章化の最中に、もっとほしい資料を思いつくことがある。これらのことを思いついたならば、たとえその場ですぐに追加資料を調査し、集めることができなくても、このような資料がほしいのだというアイデアをメモしておくことを忘れてはならない。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,407
    細かくいえばこのようにいろいろあるが、B型もしくはB'型にあたっての、それらの重要性の順序はつぎのようだろう。一番重要なのは統合発想である。つぎが構造修正、第三には構造の追加である。第四の構造の精密化は、やればはてしのないことである。第五の内容追加と合わせて、むしろ次のラウンドでの探検的な累積KJ法の出発点として行なったほうが歯ぎれがよい。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,508
    そこで、もっと時間のかからぬ方法はないかということが、とうぜん問題になる。そのとき登場してくるのは、文章化にかえて、あたかも文章化をやるとおなじような精神で、しゃべってみてはどうかということである。これならばひじょうにスピーディーに作業が進行する。文章化にかえて第四ステップをおしゃべりによっておこなうというこの方法を「省略B型」略して「B'型」とよんでお


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,521
    もう一つの大きな相違点は、ともすれば見落とされることが多い。それは、文章化での論理は、さきほどの言葉でいえば、きわめて「理性の論理」に近いものである。ところがしゃべること、あるいは会話の論理というものは、もちろんそのなかに理性の論理が貫徹している半面もあるが、さらに大幅に、むしろ「情念の論理」というべきものが加味されている


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,553
    ない。ひとりごとや口頭発表の途中でとびだすアイデアにどんな場合があるかは、すでにB型でふれたとおりである。  B'型のおしゃべりはひとりごとでもよく、あるいはだれかを前において口頭発表の形式にしてもよい


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,598
    この累積KJ法のラウンドを一つからつぎの一つへと移るためには、一つのラウンドの最終ステップであるB型文章化、もしくはB'型口頭発表、あるいはひとりごとから得られたすべてのヒントを、ふたたび紙きれに収録し、これをつぎのラウンドの出発点のステップである紙きれづくりとする。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,715
    問題提起ラウンドから具体策ラウンドへ  まず順次述べてゆくと、第一ラウンドは問題提起ラウンド。すなわちA点を占めている。第二ラウンドは現状把握ラウンドともいうことができる。図ではABC、およびいくぶんCDにまたがる範囲である。第三ラウンドは本質追求ラウンドである。これは現状把握にもとづき、さらにそのなかの問題点を煮つめてゆくラウンドである。この第三ラウンドのあとに、評価というステップを一つ入れると、なおよいのではないかと思われる。

    メモ第22図参照。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,732
    まず第一に問題提起ラウンドは、われわれ当事者の心の奥底を深くみつめるところに大きな特異な性格があるのである。これは内部探検「内省型」である


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,734
    ついで現状把握ラウンドの特色は、内部探検「思いだし型」およびそれをふみ台としてうってでる外部探検である


    青色のハイライト | 位置: 1,741
    しかし、研修会などで現状把握ラウンドのとき十分探検をしていないと、つぎの本質追求ラウンドに踏みこんでも依然として前のラウンドの続きのように、現状についての素材提供ばかりやる人びとがあ


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,743
    そこで両ラウンドの性格の違いがよくのみこめなくなってしまう。本質追求ラウンドは、すでに前ラウンドであきらかになった問題点をのぞき、それ以上に、前段階のラウンドの作品に密着しつつ、ばらばらに問題点を読みとることからはじまり、その最後には、問題のもっとも中核的本質はなんであるのかということが明るみにだされてくることである


    青色のハイライト | 位置: 1,748
    事情の許すかぎり、解決策をあわてて論ずるよりもまえに、一歩さがって現状をふまえ、問題点の真底を徹底的に読みぬくことこそ真の解決への道である


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,784
    第一ラウンドは「問題提起」のラウンドとし、紙きれ枚数にしては数十枚以内。ついで第二ラウンドを「現状把握」のラウンドとし、このときに百枚ないし二百枚。第三ラウンドを「本質追求」のラウンドとし、枚数はおそらく数十枚から百枚前後になるであろう。つぎに「本質追求」のA型図解のうえに「評価」を加えるとよい


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,130
    前記三ラウンドの累積KJ法の研修会の場合についてみると、第一ラウンドではぼんやりと、だいたいの手順がわかった感じである。第二ラウンドにいたって、いちばん苦しむ関門を通過する。そして第三ラウンドを仕上げたときに、ようやく身についてきたという感じがわいてくる。そして評価の段階をへたとき、なにかほんとうに得心がいったという実感におそわれる


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,403
    それにしてもおなじ資料から人によりずいぶん違った図ができると感心した。各人のまとめがなんと十人十


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,404



    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,465
    手で考えるということについていえば、KJ法の作業は、手をもちいて具体的な紙きれを操作するところに特色がある。この作業中、ふと思いつくアイデアがはなはだ多いのである。ふと浮かんだアイデアは、ただちに定着させておかないと、ふたたびかえってこないことがある。その意味では、作業場所のかたわらにメモ用紙をおいておき、ふと浮かんだことをなんでも書きつけてゆくと、あとでおおいに参考になる


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,561
    さまざまな用途のなかで、根本的に重要でありながら、かならずしもKJ法の関係者にその重要性が知られていない問題がある。それはKJ法の体験をつうじて、人間が自分自身をいかに変革するかという問題である。この方法をじっさいにやってみて痛感することは、KJ法はみずからに試練を課して問題解決にせまるのに、もっとも適した方法ではないかという一事である


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,606
    その人のKJ法の作品を味わったとき、その作者が急に自分にとって親しみぶかい人間になったような感じを、われわれは経験する。生まれはどこで、○○大学を卒業したなどという形式的な自己紹介よりは、よほど魅力的な印象深いものとなるのであ


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,608



    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,616
    したがって研修会が終わったときには、いっしょに参加した人びとのあいだで同窓会をつくろうという意見がしばしば登場してくる。私は事実、このような同窓会をいくつか経験している。それはいまでも活気のある相互交流の母体になっている。移動大学の試みでは、さらにこれが顕著になり、たんなる同窓会にとどまることに満足せず、一つの強力な運動体となってきている。そのなかで参加者たちはつねに、みずからの意思にもとづいてフレッシュな問題解決プロジェクトをいくつも展開しているのである。  なぜこのような人間の活力がKJ法の実践のなかから生まれてくるのか、私には十分説明できない。ソニーKKの小林茂氏はKJ法の研修会をじっさいに観察して「これは現代人が忘れていた人間の原始的能力を使わせるものだ」といわれたことがある。これはなかなか鋭い指摘であると思う。じっさいにやってみればわかることであるが、われわれの内面的実感としていえば、そのなかでわれわれは一個の人間のもつさまざまな精神的諸能力を、しかもばらばらではなくて、総合的、関連的に使うという感じを抱くのである。おそらくそのことが人間性の回復に役だつものだと思う

    メモkJ法での交わりが、人間活力の回復になるとの事。教会も利用したら良いと思う。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,628
    ある精神身体医学の医者から手紙と論説の資料をいただいたことがある。その人は患者の治療にKJ法を使い、これを「発想療法」と名づけた。その解説によれば、医者と患者との対談のあいだに、患者は医者の指導でみずから紙きれに自分の内面的体験を書き綴ってゆくのである。このようにしてできた紙きれを患者みずからがKJ法で組み立てる。これをくりかえしているうちに、患者はおのずから悟るところがあり、そして未来にたいする希望と光明をいだいて、みずからの力で病気を治してゆくのである。その治率はきわめて高いという。  この例の場合、KJ法をつうじてたんに患者の内面の世界が外に投影されたと考えるのは浅薄な理解だと思う。それももちろんあるが、それ以上に、患者自身が汗水たらして新しいものを組み立て、創造的に奮闘することをつうじて、彼の心に人間らしい強烈な生きることへの喜びが湧きあがるのである。もともと心の悩みがひきおこした肉体的障害であるから、このような結果が現われても不思議ではないと思う


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,638
    このことからもうかがわれるように、KJ法はカウンセリングに大幅に活用できる。ノイローゼの人の悩みを解決するためには、だれでもが活用できるだろう。また、だれしも感ずる内面的体験は、KJ法の仕事に従事していると、発見や発明の喜びを身近に感ずることである。問題解決というものが、このうえもなくおもしろく感ぜられてくる。そして自分の力で作品をつくりだすという体験は、ほとんどまったく芸術的な表現の喜びといってもよい


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,689
    私はこれまで企業界の多くの方々とともに数多くのKJ法の研修会をもった。その参加者のなかには、新入社員もあれば、高齢の経営者まであった。ところが、ふつう被陶冶性が少ないといわれている、五十歳を超える高齢者の場合でも、自己改造の事例はしばしばうかがわれるのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,713
    KJ法と人間の倫理的な諸能力との関係は、今後きわめて重要な諸問題をもたらすと思う。たとえば「勇気」の源泉についてである。結論をいえばこういうことになる。「事実をして語らしめるものは勇者となる」という問題である。すなわち問題提起からはじめて、現状をすなおにみつめ、正直に素材を収集し、ついでその素材をして語らしめて本質がどこにあるかを見抜き、これに自分の主体性の立場から価値判断を加えるにいたれば、だれしも猛然たる勇気の湧きあがるのを感ずるのである。すなわち状況がほんとうに自分の腑に落ちれば、人間というものはおのずから「わかった」という状況とともに「よし、やろう」という勇気が湧くものであるらしい。腑に落ちることが大切なのである

    メモモチベーションについてもこれからやることについて腑に落ち理解できたのなら、猛然とやる気が出るのだろう。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,734
    このように、野外科学の方法を理解し、KJ法を理解する人は、すなおな状況の把握が人間に勇気を与えるということを痛感するだろう


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,743
    「エレミヤが観察者であったことが現われている個所というのは、五章一節、六章九節、六章二七節など、その他にもあると思います。予言者が当時の国内的、国際的情勢をよく観察した人であったことは確かです。ただし、重要なことは、彼がヤウェの神との関係を活きたものとして、心に持っていた、ということです。これは何のために調査するのかが、常に明確にあったということでしょう

    メモ預言者エレミヤの勇気の源泉について。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,857
    それはすでにふれたが、A型図解を相手に示しつつ、その内容とまったく重なり、かみあう説明を、文章ではなくて話として相手に伝えることである。このようにすると、相手には目から視覚的な、空間的な意味の関連づけが送りこまれつつ、耳から聴覚的に、したがってまた時系列的な説明が送りこまれることになる。この両方がシンクロナイズして送りこまれると、相手の頭のなかで、ご本人の責任において、その両方の情報がたがいに照合され、そのとき明快に「わかった」という実感がまきおこってくるのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,865
    多くの図解は本文の文章をむしろ補足する意味で使われており、両者の内容はかならずしも重ねあわされていない。しかも両方ともに目を使うために、文章を見、かつ図解を見るために、目は左右に振子のように使われなければならない。それでかえってわずらわしいという印象をうけることがしばしばある。だから、A型図解と声による説明との併用のほうが、はるかに理解にたいして役だつのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,897
    同様にして、複雑難解な書物を理解するときには、手間がかかるようでも、いちどその内容の要点を紙きれに書きとり、それを組み立ててみるとよい。このようにすると著者の立場が明確につかみとれる。これはKJ法のAB型ではなく、BA型ということになる。すなわち、もとになった資料は、整然と活字として整えられているからである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,901
    書物からの抜き書きからKJ法を用いるには、二つの場合がある。ひとつは著者の意図するところを理解するために用いる場合。もうひとつは読書中、自分が関心を示した個所にアンダーラインをひき、その個所についてだけ紙きれと化するわけである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,941
    あるいはまた、発言者自身が自分のいいたいことを紙の札、あるいはラベルなどに書きこみ、そしてそれを読みあげるのも一つの方法である

    メモ家族でやると、子供の文章訓練にもなりそう。

    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,958
    ところが、みずからKJ法をマスターしたことのない人びとは、この仕事がいかにたいへんな大仕事であるかをほとんど共感してくれない。しかもできのよかったまとめであればあるほど、明快に早わかりする。そこで「簡単なことだ」と、きわめて安くその労働を値踏みされるのである。まとめ役はいちおう言葉づらで感謝はされるものの、ほんとうにはその努力を理解してもらえず、そのうえ「このつぎもまた頼むよ」といったぐあいに、人をバカにしたような扱いで便利小僧としてこき使われるのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 2,965
    じっさいにやって骨身にしみて痛感すれば、だれでもが共感してまとめ役の労を理解することができる。全員ができるならば順番でまとめ役がつとまるから、たとえ三日に一度の会議でも、十人のグループならば一月に一度、自分の順番がまわってくることになる。そこでその時おおいにはりきって、まとめ役がつとまるのである。このようにして、息切れしないで会議の効率化に活用できるのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,001
    そこでたとえば十人くらいの見解を集めることで調査をうちきり、そのさまざまの見解を徹底的にKJ法で組み立てる。そうすると、その問題をめぐる見解や状況の構造があきらかになる。われわれはそこからいくつかの有力な仮説を見出すことができる


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,065
    以上を総括すると、上下の意思疎通、水平的な部門間の意思疎通、チームワークにおける仕事の受けわたし、会議を生産的にするなど、あるいは個人間の相互理解など、さまざまの点でコミュニケーションが改善できる


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,111
    会議のやり方は前著にもふれたように、算術の四則演算とおなじ精神がよい。ただし加減乗除の順番ではなく、加乗減除でなければならない。  まず必要なのは足し算である。すなわち会議のテーマをめぐり、必要な情報や見解や願望を、おたがいにできるだけ豊富にだしあうことである。良いとか悪いとかはけっしていうべきではない。このときのやり方は探検の精神でおこなう。足し算であるためには、もとよりこれらの見解や情報はことごとく紙きれに収録されるべきである。  つぎに掛け算である。これがすなわちKJ法の本体をなす部分である。掛け算の結果は、状況は的確に出席者にわかる。そしてこの過程で、当初にはだれももっていなかったような、新たな見解や発想が生まれ、あるいは新たな着眼点の発見がある。  そこでようやくつぎに引き算である。これは評価の段階である。このようにしておこなわれる評価は、足し算からただちに引き算にうつった場合、すなわちたんに項目を列挙し、それを個別的に評価した場合とはいちじるしく異なってくる。そして前者の場合よりはるかに妥当な評価に到達するのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,130
    ある人が会議に不満なのは、自分の意見が軽んじられたせいなのではない。そうではなくて、足し算も掛け算もおこなわれないままに、引き算という評価の俎上に自分の意見がのせられ、あるいはそれすらも無視されて、いきなり多数決に持ちこまれ、葬り去られるからである。  これに反し、加乗減除の方式にしたがえば、足し算段階では、良い悪いをいわないから、かならずその人の意見も収録されている。足し算がおこなわれると、いくぶんの満足感がおこるものである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,182
    逆に掛け算に自信ができればできるほど、足し算を十分にやることを恐れなくなる。むしろ、「もっと違った意見はございませんか」と、積極的に多様な見解を追い求めるようにすらなりうるのである


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,185
    つけ加えるならば、掛け算の結果は、はじめにはだれも持っていなかったような意見が新しく生まれでてくることがむしろ普通である


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,192
    現代の民主主義なるものを根本的に改造するために、KJ法を役だてなければならない。KJ法はもともとその使命感も加わって創られたものだ(拙著『パーティー学』参照)


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,422
    抵抗は、時間と慣れと、なによりもKJ法を重ねているうちにとりつかれる、あのなんとも説明しがたい一種の強力な魅力のとりこになることで解決されていったのである。


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,768
    たとえば作文にKJ法を使うのは、もっとも多くの人がまず足もとで試みて成果をあげている。すなわち自分が表現したい問題点を紙きれに書いてKJ法で組み立てる。そしてそれをみながら作文を書けば、しっかりとして論理的にも筋のとおった作文が書きやすくなる。また作文の構成力が高まるにはちがいない。しかし、ただそれだけでは、あまりにも論理的構成力だけの露出した作文になってしまう。このようなときには、論理の骨子をなすA型図解もしくはB型文章をみながら、さらにその各部分にかかわる、ふと浮かんだ事例とか、エピソードとか、あるいはアナロジーなどを書きこんでみるとよい。エッセイなどを書くためには、むしろ論理的な骨子よりも、さらにそれに書きこんだこのような材料を生かして、それを文章化したほうが、柔らかみのある味のある文章になる。ちょっとした応用にはちがいないが、一つの生かし方である

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著者プロフィール

1920年(大正9年),三重県生まれ.1943年,京都大学文学部地理学科卒業.大阪市立大学助教授,中部大学教授などを経て,KJ法本部川喜田研究所理事長,元社団法人日本ネパール協会会長,ヒマラヤ保全協会会長.理学博士.昭和53年度秩父宮記念学術賞,マグサイサイ賞,経営技術開発賞,福岡アジア文化賞受賞.著書に『続・発想法』『野外科学の方法』『KJ法』ほか

「2019年 『まんがでわかる 発想法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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