- Amazon.co.jp ・電子書籍 (269ページ)
感想・レビュー・書評
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読む前に期待していた内容とは違っていて、それが良い意味で本書の印象を濃いものにした気がする。読んで良かったと思える一冊。
(ただ、読み終わってから帯を見たら「(当初の期待に対して)そういう本ではない」というのは見て取れたかも知れない)
「会議の場でどうやって良い流れを作るか?」というものが得られるかと思って買ったのだけど、終始「ファシリテーターに大事なこと」という話題が扱われていた。
ファシリテーションをしている中で遭遇する対立や混乱、予想外の出来事といった、議論を炎上させる要素を「炎」と呼んでいる。そして、炎にうまく向き合い、冷静さを保ちながら場を落ち着かせて本当の目的に向けて進ませるプロフェッショナルを「炎の達人」である。(日本語にすると少しフフッてなる表現だなー)
炎の達人となるために重要な6つの流儀(心身の整え方)が、「自分の状態変化に敏感になる」「『いま、ここ』に集中する」「オープンマインドを保つ」「自分の役割を明確に意識する」「意外性を楽しむ」「共感力を養う」だ。これらのもたらすものと、その意義について説明するのが第2部。これが本書のコアであるように思う。第3部は、読者がそれらをどうやって磨いていくか?を指南する。
ファシリテーターにとって大事なのは、自分の感情やエゴの渦に飲み込まれず・・あるいは飲み込まれた時に素早くそれを感知し、自分をニュートラルに保ちながら、徹底的に「場」や参加者に起きていることを観察し続ける。そして、共感の波をその場にいる全員に伝播させる事なのかなーと感じた。
傾聴、オープンマインド、「いま、ここ」、共感(empathy)というのは、最近の自分がよく目にするし意識することの多いキーワード。「うまいファシリテーションをするための会議術」みたいなものを期待して買ったけれど、もっと別のレイヤーでの自分にとって「今読むべき本」であったな、と満足度が高い。確かに「プロフェッショナル」とは「スキルの引き出しが多い」ことよりも「どういう態度、哲学を持っているか」の方が重要で本質的なものかもな、とも感じた。
「おわりに」で筆者が実際に遭遇した出来事とそこでの気付きについて紹介されているが、”「内容(what)」よりも「どういう存在であるか(who)」が遥かに大切だ”、”炎の達人でいるということは、その瞬間に「どういう存在としているか(who)」を自ら選択するということだ。"というフレーズが個人的にとても気に入った。