ネルソン・マンデラという人物が黒人差別制度であるアパルトヘイトに立ち向かい、制度撤廃を達成した大統領であることはある程度の予備知識を持っていたが、大統領にまでなった人物がここまで壮絶な人生、特に人生の27年間を政治犯として刑務所で過ごしたというのは筆舌に尽くし難い。
そして、歴史的に分かり合う事が難しい人種同士を対立させずに、いかに共存の道を示し、目標を実現するまで信念を貫いた姿勢は本当に感服させられる。
歴史的なしがらみから相当な数の反対者もいたであろうし、命の危険もあり、家族も犠牲にしても尚、心折れずに、志を曲げずに事を成し遂げた。
ビジネスの世界でも対立する問題は多々あるが、それとは比較にならないくらい大きな問題だし、犠牲になるものも大きいが、自分が絶対的に正しいと思うことに対して信念を曲げない事の大切さを改めて感じさせられた。
恐らく、マンデラ自身も勉強して身に付いたというよりも、先に大志を抱いて、事を進めていく過程で、人格を磨き、処世術を学んだのだと思う。
そういう意味で本書のマンデラの行動哲学を本当の意味で理解することは難しいだろうが、どういった視点で考えていたのかは参考になる。
本書に記されている15の行動哲学の中でも、特に私にとって参考になったことが、「相手の良い面を見出せ」である。ビジネスの世界に身を置いていると、性善説で考えるべきか、性悪説で考えるべきかは度々悩ましいが、マンデラは自分に危害を与えたり、批判をしている人物でさえ、その人の良い面を認めて引き出そうとする。
志が大きければ大きいほど、事を成し遂げる為には、今日の敵も味方に取り込まなければならない事を肌で感じていたのだろう。そういった姿勢は時には同志からも対応が甘いという批判が出ていた事もあった様だが、「人は元を正せば、偏見や人種差別の意識を持って生まれてくるわけではない」という信念(原理原則)に従っていた。