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イルカ族の血を引く人魚のリトは、人間の王子グレンに恋をしている。イルカの姿で友達になれただけでも幸せだったが、嵐の夜に海へ落ちた彼を助けたことをきっかけに、どんな犠牲払っても傍にいたいと願う。報われない恋と知りながら美しい瞳とひきかえに魔女の薬で少年へと変身するが…。表題作のほか、ユリアスとテオの美人兄弟それぞれの初恋を描く「輪」シリーズを収録。濃密エロスで贈る童話世界の匂いやかな恋愛譚!
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グリム童話をモチーフにしたBL。
1つはヘンゼルとグレーテル。兄のユリアスは両親に体を売らされてきていて、今度は弟に客を取らせようとする両親から弟を連れて逃げたのだけども、森で迷ってしまう。たどり着いたのはおかしの家ではなくて、「青髭の悪魔が住む赤い家」と噂される赤い家。空腹の兄弟が食べたのはおかしではなくて、馬鈴薯。実は悪魔と噂されるフェルナンは、馬鈴薯を世の中に普及させようとしている研究家。男娼の印であるアンクレットをつけているのに、物慣れなくて弟思いのユリアスにフェルナンが惚れて一緒に暮らすようになるという話。
もう1つは、人魚姫。恋に破れて海の泡となった人魚姫の弟リトと、フューン王国の第一王子グレンが主人公で、グレンは王国一の美女エルザよりもリトを選んで、めでたし…とはいかなくて、グレンが毒で死にかけたのをリトが自分の心臓を差し出して助け、死んでしまったリトを蘇らせるためにグレンは自分の心臓を抉り…血まみれっス。心臓を抉ったグレンだけれども、リトの心臓によって人魚に変わっていたので、海の力とリトの父親の人魚王の助けで一命を取り留め、二人海の中で一緒に暮らすことになり、今度こそ本当にめでたし。
短編集は読み応えがないのであまり読まないのだけれども、この短編集は構成が良いのかしっかりとした読み応えがあった。童話の世界観も良かった。