木下古栗「股間の大転換」収録。
温暖化がさらに進んだ3000年代、人びとは股間をまる出しにして暮らしていた。公共の場で股間を隠すことは禁じられ、性交時や入浴時には逆にパンツを履く。居酒屋ではビールで股間を冷やし、煙草は肛門で吸う。女性は股間に化粧をするようになり、陰部を剛毛にするのが流行っている。美容院では頭髪と一緒に陰毛もシャンプーで洗う。
「蒸し暑いから、また殺人増えてるみたいだね」
「太陽も眩しいしね」(p.102)
数か月後、世界中が大寒波に見舞われ、死者も出るようになる。そんななか、朝のニュース番組でひとりのアナウンサーが決意をもって語り始める。
「今の世の中の、現代人の格好はどこか、間違っているのではないか…」
筒井康隆の随筆「ウクライナ幻想」も収録。クリミア併合を受けて、現地の旅行体験を思い返しながら自身も小説化したロシア叙事詩の英雄「イリヤ・ムウロメツ」の生涯を回想する。