社会学入門-人間と社会の未来 (岩波新書) [Kindle]

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  • 大学で40年間教鞭をとった筆者の「教養としての社会学」としての講義の内容の圧縮(「あとがき」より)。著者の専門は比較社会学。

    語りかけるような文体。ですます調の章とだ・である調の章と両方ある。
    全体的に「文学的」な印象を受けた。

    論理で何かを主張・提案するというよりは、読者が自ら考えてみるための材料として語り聞かせてくれている印象。

    第1章.鏡の中の現代社会
    著者自身の旅(インドやラテンアメリカ)のエピソードを引きながら、社会学・比較社会学のものの見方を語っている。

    第2章.〈魔のない世界〉
    ・柳田国男がいうところの「天然の禁色」=民衆の自発的な社会心理としての禁忌。
    ・貝を殺さずに染料を採取していたメキシコのインディオ(その風習があったために、ユーラシア大陸全土で絶滅したその貝はメキシコのテワンテペックの太平洋岸でだけ生き残っている)
    ・ウェーバーのEntzauberung〈魔術からの解放〉の言葉の借用元のシラーの詩「歓喜に」の「Deine Zauber 〜」(ベートーベンの第九交響曲)。

    第3章.夢の時代と虚構の時代
    高度経済成長を経て現代に至った日本を「現実」の3つの対義語をキーワードに読み解く。

    第4章.愛の変容/自我の変容
    著者が「新聞に投稿された短歌から日本社会の変動を論じる」依頼を受けて書いた文章の書き直し。

    第5章.二千年の黙示録
    9.11とアフガニスタン戦争を軸に、それらが正当化される視点「関係の絶対性」(吉本隆明「マチウ書論考」の用語)

    第6章.人間と社会の未来
    現代社会が経験してきた四つの革命それぞれに産業革命と情報革命があったとの指摘(0次革命「道具化」「言語」で人間社会が立ち現れた)
    これからあるべき革命の予想。

    補章.交響圏とルール圏
    未来の社会構想の骨格としての論
    サルトルの提示した「溶融集団」とは反対の〈交響圏〉、あるいは〈交響するコミューン〉を提案。

  • 社会学の入門にプラスしてあまりにも難解な“補遺”を加えてある本。見田宗介さんの文章を読み進めようかと思ったが、補遺で脱落した。一から十までわからないことが書いてある。

  • とてつもなく旅したい衝動に駆られた。自分たちの社会を確認するときは離れてみないと全体が見えない、ということを鏡で自分の全身を見る時に例えている表現がとてもしっくりきた。今すぐバックパッカーでもして世界を自分の目で見てきたいと純粋に思った。そのためにも早くコロナ収束してくれ。

    インドのコモリン岬で少年たちと出会った体験も非常に興味深かった。深い渕に間違って入り込まないように教えてくれたまっすぐな瞳の少年たちが、その後、スマトラ沖大地震で500人以上の生命を救った漁民たちに成長していたとは。感動的なコラムだった。こういう出会いがあるから旅は面白い。

  • 【目的】
    社会学的思考方法を身につけたい

    【構造】
    ① 近代・現代社会の特質と問題
    ② 日本における近代・現代社会の特徴と、そこを生きる人のあり方、関係、ものの見方
    ③ 近代・現代社会の歴史上の位置付け・意味・問題
    を論じている。本書を読むことで
    A 社会学することの本質
    B 理論のフレームワークと考え方
    C 人と社会の様々なあり方の全体像
    が掴めるようになっている。

    【感想】
    交響響圏とルール圏の話が、自分の問題意識にヒットした。
    他者の両義性:
    ・生きることの意味の感覚。あらゆる喜びと感動の源泉
    ・生きることの不幸と制約のほとんどのことの源泉

    「近しい人々」と、生の喜びと感動を分かち合いつつも、同時に、「近しくない人々」とは、お互いに(生の喜びと感動を分かち合うことを妨げないと言う意味で)尊重しながら、共に生きていく社会を構築する。

    全てをゲマインシャフト的に覆い尽くすのは無理。失敗例が多数。ジョン・レノンの「Imagine」はあくまで、Imaginationの産物なのである。

  • 見田社会学のエッセンスを圧縮した入門書。
    1、鏡の中の現代社会
    2、魔のない世界
    3、夢の時代と虚構の時代
    4、愛の変容 自我の変容
    5、二千年の黙示録
    6、現代社会はどこに向かうか

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著者プロフィール

1937年生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。著書に『まなざしの地獄』『現代社会の理論』『自我の起原』『社会学入門』など。『定本 見田宗 介著作集』で2012年毎日出版文化賞受賞。東大の見田ゼミは常に見田信奉者で満席だった。

「2017年 『〈わたし〉と〈みんな〉の社会学 THINKING「O」014号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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