- Amazon.co.jp ・電子書籍 (438ページ)
感想・レビュー・書評
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12篇からなる短編集.前半は,ディックらしからぬファンタジックな話だな,と思っていると,段々後半からいつも通りのディストピア世界一色になる.表題にもなっている人間以前は,中絶にまつわる今でも未解決の問題を孕み,フィクションとして全く読めない恐怖に苛まれる.
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「地図にない町」うぉー!この、記憶のあやふやな感覚めっちゃわかる。リアル!建物が新築されたとき以前は何があったのか思い出せない感覚よくある。いつもの日常が一瞬別物に見える感覚、フラッと現実から離れてまた戻る感覚。
「妖精の王」むちゃくちゃ良かった。好き。主人公の人の良いキャラがほのぼのしていていい、エンディングの、妖精たちがもじもじとしている描写もよき。
「この卑しい地上に」ドラマ性が深いのはわかるがあまり好きじゃない。丁寧さに冗長性を感じてしまった。
「欠陥ビーバー」途中でビーバー設定が崩壊してまた戻り、のグラグラ感は面白い。ただこの話自体、一体なんなのかよくわからない。
「不法侵入者」これはこれだけなのか。すげー星新一感。オチのためのドラマ。
「宇宙の死者」「ユービック」の兄弟作か!半生装置の設定自体面白いのにそっからこんな多様なドラマを生み出すとは。これもまた素晴らしい。
「父さんもどき」精神的なドラマかと思ったらちゃんと実体的なSFドラマだった。思い込みが働きすぎた。食べちゃう設定に「レベルE」の話を思い出した。
「新世代」面白いねー!世代間ギャップもあり。好き。
「ナニー」怖い。次の「フォスター〜」もそうだけど、行き過ぎた資本主義の末路みたいな、ここまであからさまじゃなくても最近の家電は壊れやすくなってるとかに通じそう。
「フォスター、お前はもう死んでるぞ」切ない。うずくまった少年の描写にシンジ君を重ねてしまう謎のエヴァ脳。日本では特にあるあるな印象を持った。皆と同じじゃなきゃ安心できない、同じじゃないものは避けるみたいな部分。でもテーマはそこだけじゃないんだろうな。
「買うか死ぬか」は究極過ぎて恐ろしい。
「人間以前」これは近年だったら炎上しそうな危うい話だなぁと思ったら解説で当時も団体からわんさか手紙が届いたとあったので変わらぬ問題か。人間かそれ以前かどこが境界なのだってホントに難しくて、こんなに真っ向からその議論に立ち向かったのは凄いことだなと思う。
「シビュラの目」語り口が面白い。 -
20180214読了。
短編集だけど、各短編がかなりビビッドな印象をもつ個性的な作品達。
内容の濃さとしては久々に読み応えの作品群だった。