最後の努力──ローマ人の物語[電子版]XIII [Kindle]

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  • 利己的であり利他的でもある「人間」の本質を熟知し、人間の能力を最大限に活用する共同体「だった」ローマ帝国の終焉。

    強力な軍事力+経済力による抑止力で平和を維持し、身分や貧富や男女の差を区別しつつも公正(平等ではない)な法と税制を堅持し、指導者層にはシビリアンとミリタリーのキャリアを積ませることで、統治者に「公」と「私」のバランス感覚を養わせてきたローマ帝国は、セヴェルスによる軍事偏重とカラカラの浅慮による税制の破壊で致命傷を負い、本巻のディオクレティアヌスとコンスタンティヌスで止めを刺された。

    「優秀な」ディオクレティアヌスの統治は、人間の考え得ることには「限界」があるという当たり前のことがわからないサヨク政治の典型で、思い描いた理想と真逆の現実を引き起こし、職業の世襲制や歯止めの利かない税制等、悪しきルールだけを後世に残した。

    権力闘争に勝利して皇帝となったコンスタンティヌスは帝国を私物化し、キリスト教の「神に対する批判を許さない」性質に目をつけて、権力の私物化を正当化した。

    コンスタンティヌスの所業は、現代の拝金主義グローバリストと、ポリコレ棒を振りかざす平和・人権・環境サヨクがおぞましく結合し、「自分さえよければ」エリートが、反論のできない綺麗ごとを並べて自分たちへの批判を封じているのに似ている。
    結果として大多数の国民を不幸にしただけでなく、キリスト教(それもより偏狭なアタナシウス派)への肩入れによって、現在の人類にまで不幸をまき散らしている。

    こんな人物に「大帝」の称号がついているのが何とも忌々しい。

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