湿地 エーレンデュル捜査官シリーズ (創元推理文庫) [Kindle]

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  • 著者はアーナルデュルで、登場人物の名前がエーレンデュル刑事で、相棒はシグルデュル、舞台はノルデュルミリ・・・・。デュル、デュル、デュル。
    日本人にとってはクセの強い名前ばかりが氾濫して最初は上手く名前が頭に入ってこないかも知れません。
    しかし慣れとは恐ろしいもので、本書を読み終わる頃には自然な名前に見えてくるから不思議です。

    自分がこのシリーズを手に取ったきっかけは、文庫で出ているシリーズ5巻とも分冊されてない!
    これ大事です。日本の出版社の悪習で、少しでも厚みが出るようなテーマの本はすぐに上下巻分冊してしまいますが、
    1つのテーマが分冊されてしまうと、とくに下巻を読んでいるとき、少しでも気になった前のページを読み返して細部に渡って頭の中で世界を構築して物語に没入していくことが難しくなるので、
    分冊されてないシリーズものは大変貴重です。ぜひ読むべし。

    おっと、話が逸れてしまいました。
    本書巻末の解説によると、著者は「アイスランド的なるもの」を、このシリーズを通して表現していくつもりのようです。
    この本の巻頭は、主人公のセリフの引用から始まります。
    「この話はすべてが北の湿地のようなものだ」
    読み終えて、この一行がまさに本書の中に漂う世界観を言い表していると思いました。
    アイスランド的なもの、なかなかに言葉にしがたい。
    だけども確実にある。アイスランド特有の何かが。

    アイスランドは北海道を少し大きくした程度の島で、お隣はグリーンランド、
    日本に行くには太平洋も大西洋も通らず、北極点を通過して行った方が早いというような位置にある。
    そういう土地柄なので、何世紀にも渡ってあまり人の流入がなく、北海道より少し大きい土地の範囲の中だけで血統を育んできた。
    だから、街・町ですれ違った見知らぬ他人の血統を辿ると遠い親戚、ということがアイスランドではよくあることのようだ。
    島まるごと、村のようでもある。そういうアイスランドという国は、白人社会なのにヨーロッパの国とは一線を画すほど何かが違ってみえる。

    本書は刑事モノだが、アメリカの刑事モノとはまったく違う。
    劇的タイプの猟奇連続殺人犯なんか出て来ない。
    刑事のカンが冴えまくった刑事になるために生まれてきたような主人公なんか存在しない。
    常人には想像も付かないような”仰天の動機”なんか、どこにも無い。
    トリッキーなことは何も起こらず、カッコイイ男性も素敵な女性も、出現しない。
    小説なのに、登場人物たちが揃いも揃って、個性で光る部分が無い。
    せいぜい主人公の刑事の娘が少しトリッキーな不良娘、ってだけで他の人物たちはとくに長所も欠点も抜きんでているところがない。
    だけども、登場人物たちは確実に「アイスランド人」としての個性がある。
    この国の人間たちは、なにかがこじれている。増悪ですら、何かこじれたものになっている。
    アイスランド自体が湿地のようであり、アイスランド人はその湿地に片足を突っ込んだまま、それとは知らずに、でも何かが自分の重荷になっていると思いながら、この地で生きているかのようだ。

    物語全体としては地味ではあるが、引きこまれて読んでしまう魅力が確かにある。
    自分はこの「湿地」を読んで、すぐに5巻全部揃えました。
    このアイスランドの深淵を覗いてしまおう、そういう気にさせられました。

  • アイスランドの著作、初めてかもしれない
    かなり印象的な内容・筆致で、堪能した。
    普通ならありそうなあざとい?ひねりもなく、
    静かに終わっているところが良かった

  • アイスランドという人口32万人の単一国家でしか起こりえない殺人である。約33万人という単一国家であり個人一人ひとりのデータベースを充実させることで病気の遺伝を掴むことができている。それにより遺伝による病気がこの子に発生するわけがないということを起因とする殺人が発生する。浮気相手の子なのか養子なのか?

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