千夜一夜物語もアラビアンナイトも見分けがつかない、
そもそも就学前に親に買ってもらった、正方形の「名作アニメ絵本シリーズ50 シンドバッドのぼうけん」(永岡書店)か、
藤子・F・不二雄「大長編ドラえもん のび太のドラビアンナイト」くらいでしか知識のない者だが、
枠物語が、シェヘラザードの寝物語ではなく、若者アルディンの体験が背骨になっている。
もちろん挿話は一続きでなくブツ切りだし、ちょうど1時間で15年後になって視点人物も変わるのだが、
そうはいっても一貫性のある物語になっていて、話は理解しやすい。
>本来アラビアンナイトとは関係のない女護ヶ島やバベルの塔のエピソードも組み込まれている。
とあるが、いかにもありそうな話なので、違和感は憶えなかった。
またアルディンがどうしてもルパン三世を思い出すキャラクターで、爽快な印象もよかった。
以上話について。
しかしやはり本作の強烈さは、アニメーションだろう。
実写、ミニチュア撮影、漫画的表現、鉛筆画のアニメーションなど、実験的で前衛的。
裸や衣装や男女やがエロいのではなく、身体がメタモルフォーズすることが一番エロいのだと教えてくれたのは手塚治虫だが、本作でもたっぷり。
真っピンクの鉛筆画のアニメーションで、足の絡み合いなんだか指の絡み合いなんだか、とにかく前後だか左右だかに動きながら変わっていく……ちょっと言語化できないシーンは驚愕。
インパクトは「哀しみのベラドンナ」ほどではないが、なかなか面白かった。