月刊群雛 (GunSu) 2015年 06月号 ～ インディーズ作家を応援するマガジン ～ [Kindle]

著者 : 合川幸希 川畑愛 見星昌嶺 晴海まどか くろま くみ 神楽坂らせん 神谷依緒 魅上満

制作 : 鷹野凌 

• 日本独立作家同盟 (2015年5月25日発売)

感想・レビュー・書評

[waratasさんの感想 · 2015年7月1日]

久々にシュールな作品が読みたいね、なんて呟いたらそんな号が来ましたな。カテゴリーとしては「シュール×ライト」です。
読みやすい作品が多かったのですが、その一方で物足りなさも感じてしまいました。文字数の多寡というよりも、「展開にもうひとつ山場があれば…」という作品が多かったと思います。難しいことだとは思いますが…。
そんな中、期待以上の出来だった「恋、未満。」を今回の私的ＭＶＰに推します。展開・構成ともにボリュームがあり、かつ読後の満足感も非常に高かったです。

川畑愛『ない』
全体的に暗い…。無という空間や心象で何かを求める辛さ、厳しさを感じました。「転」の無意識のうちに昨日と同じ今日を生きてしまい、その事に気がついて色々と後悔してしまうのは自分も良くあるなあ、とも。

見星昌嶺『荒神、再臨セリ。』
とにかく話のスケールがでかい。インディー・ジョーンズやダンジョンゲーム的な冒険心が呼び起こされる１作。ただ、ダンジョンを簡単にクリアしすぎ？

竹島八百富『運命』
竹島氏の作品を知っている／大好きならば大丈夫だけど、初見だったら「！？」になること間違いなし笑　いやあ、この転調はヒドい（誉め言葉）
ただ、前回もそうだけど氏の「おかしな（英語でいうところのfunnyです。決して頭がry）作品」を僕はとても好んでいるのかもしれない。怖い作品を生み出せるからこその「振り幅」なのでしょうか

晴海まどか・合川幸希『ギソウクラブ』
第３話は双子の心情変化を描く。歌奈の抱えている心情って、腕時計や携帯電話を忘れた時に感じる「失われた錯覚」というものと同じかもしません。
物語の本線からちょっと外れた感じも受けたのですが、果たしてどう収束していくのでしょうか？　色々と妄想を膨らませつつ、４話を読み進めているところです。

くろま『念力少年』
これまたスケールの大きな物語。念力シーン（？）の描写に力を入れすぎていて、主人公の描写や人となりの要素をもう少し加えて欲しかったかなあ。

神楽坂らせん『恋、未満。』
今号のＭＶＰは間違いなくこれ。構成・内容・描写どれも質が高かった。凄く良いロードムービーですな。そして、二人の関係を築いていく「スマホ」という小道具も効果的に使われているし、設定的にも合致している。
それにしても、ジンクスを気にしすぎて思うように動けなくなるというのも、僕もそういうのを気にするタイプなので凄くわかるなあ。
あと、ネタバレになるから伏せ字にしますが、○○○○は誰が見ても○○○○という印象を抱くんですね笑

有坂汀『二つの時代の罪と罰』
相棒を筆頭に昨今の刑事ドラマは「過剰な正義の暴走」を題材にすることが多いなあ、と思っていたけれど、この評論もその題材をどう解釈するかの示唆を与えてくれる。「正義と悪」の二項対立では、「罪」の意識は薄まってしまうのだろうか。

くみ・魅上満『井の頭cherry blossom』
この回単体でも十分面白いというか、今までで一番ぐぐっと引き込まれたかも。主人公二人が接する描写は無いんだけれども、地上と宇宙空間という設定を上手く消化しつつ、丁寧に心情変化を記しているのが好印象。

幸田玲『伝説の古寺』
おっ、どうなるんだろう？　というところで物語が終わってしまった印象あり。描写は非常に細かくて、わかりやすくていいと思うのですが。思い切ってもう１つシーンを先に進めても良かったかもしれません

神谷依緒『屋根までのぼって』（表紙）
淡い色使いが梅雨の季節を彩る。紫陽花も奇麗