狭小邸宅 (集英社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 不動産仲介業者の営業マンの心理の一部を垣間見ることができた。
    途中、「不動産なんてものは、シラフで買えるわけがない」のようなフレーズが出てきて、妙に納得してしまった。営業マンに煽られて勢いで購入することがないようにしないと。
    勉強になるが、物語として楽しめる小説ではないと感じた。

  • 普通に営業のノウハウ本のようなチップスや不動産事情を教えてくれる小説。かつ若い働き盛りの時期の仕事とその周辺の葛藤。心情と変化、その描写がリアルで読み始めの頃は読んでて辛かった。

    上司からの暴言・暴力、どうやって家を売ったら良いのかわからない状態で売れない状態から一変して家が売れるようになっていく主人公が出会った豊川課長の魅力が凄い。ここから物語としても惹き込まれてくる。

    やっぱり建築・不動産は治外法権で古き悪しきパワハラがあるんだと現実で答え合わせを済ました後のこの小説だったので不動産は本当にブラフと胆力の仕事なんだという感想(この小説自体は今から10年以上前の作品)。ただこの物語ではだまし討ちなしに適切に見合った物件を上手く売りさばいているし、営業テクニックとして感心してしまった。
    ブラックな不動産でも、ただ単に人を貶したり陥れるような感じではなく、上の人間が売るマシンと化したバケモノなだけでちゃんと褒めるときは褒めるし、同じ苦難を超えてその立場にいるんだという感じも伝わってくる。ただそれだけに、この仕打ちと努力を経て、客や自分周辺の人間から浴びせられる「営業なんて金に目が眩んだ詐欺師」のような言われようをするのは腹立たしい。

    彼女とも別れて、営業にも翳りが見え始めたあたりで物語も不穏なフェードアウトで終わる。
    読者としてはその先が気になってしまうが、敢えてそこを語らず未来の顛末は誰もわからないという感じがまた"人生"って感じがした。このまま主人公は不動産を続けるのか?
    あと豊川課長が大手商社を転職して街の不動産屋の課長をやっている理由も気になる。

  • イメージ通りの不動産営業の話。
    超ブラック企業の営業をなんとなく続けている主人公が心機一転、死ぬ気で仕事をしてみると、結果が出てうまく回りだすところまでは、あの手の企業で働いてもこんな充実感があるのかと目から鱗でした。その後、結局燃え尽きていく感じまで描いていたのがリアルで良かったです。

  • 不動産に勤めるいい学校出の主人公k

  • 不動産営業という仕事についての小説

    見てて辛い部分は多いが、ストーリーとしては面白い

    終わり方が少し唐突に感じたが、主人公はこれからもこういう生き方をしていくのかなと思った

  • お仕事小説として普通に面白くて好きなんだけど、もう少しボリュームが欲しかった。もっと小説の世界に浸っていたかった。
    売れるきっかけが偶然というのがリアルでいい。転機ってほんとに偶然なので。下手に努力が身を結んだとかじゃない、身も蓋もない感じが好き。
    そして結末の身も蓋もなさも、偶然をきっかけに成功の階段を駆け上りはじめたことが厳密にいうと布石になっている。成功に根拠なんてなくて、課長から指示された努力なんて間接的付随的なものにすぎなくて、本質は単なる偶然なんだよね。
    成功すると服に凝り出すとか、イヤミな先輩の造形とか、そのあたり「あるある!」と膝を叩きたくなる。
    もう少し長ければ星5つだったなー。

  • 日本の中小不動産会社と労働文化、住宅消費社会の歪みを抽出してありのまま描いた小説。放り出されるように闇に溶けるラストが印象的。

  • 最初は、恐喝、暴力ありのブラック不動産会社で働く主人公を見て、これが人生、と苦い気持ちになりました。

    主人公は全く家を売っておらず、課長に辞めるよう言われても辞めないことを不思議に思いましたが、課長から「自分のこと特別だと思ってるだろ」と言われてハッとしました。自分は特別で、いつか何者かになれると思っている、主人公以外の多くの人に刺さる言葉だと思います。

    主人公は、執念で仕事を続け、運と課長の教えにより、家を売れるようになっていきます。サクセスストーリーにも見えますが、残念ながら、決して幸せそうには見えませんでした。

    仕事にのめり込むにつれ、途中から、彼女と過ごす描写がなくなっていたのが気になりましたが、やはり距離を置いていた主人公に対して、彼女は愛想を尽かし、離れていってしまいました。

    酷使され、身も心もぼろぼろになっているのに、興奮して、仕事にのめり込んでしまう主人公。課長から「やっぱり、無理か」と言われてしまいますが、何が無理なのでしょうか。仕事はこなし、結果も出している。私にも課長の意図が掴みきれませんでした。

    ただ、家を売れなかったときの主人公の方が、売れた後よりも確実に、普通の心を持った人間でした。

  • ページ数も多くないので2時間ぐらいで読み終わった(気がする)窓際三等兵さんが紹介していたのでつい手に取った。

    主人公の松尾は大学は良いところを出てなんとなく不動産営業に就職。暴力・恫喝はびこる圧倒的社畜になってしまったのだったーー!!(○ープンハウスに対する私のイメージそのものだった)

    数千万払ってペンシルハウスと呼ばれる狭小邸宅に住むのが東京。資本のない人が這い上がるのは楽ではないんだワ。商社?外銀・外コン?それで年収1000万、2000万行ったところで元から都心に土地持ってる地主には逆立ちしても勝てんのだワ。いつまで東京で消費してるの?とクソリプが飛んできそうな
    社会人の苦しさを詰め込んだような、人間の嫌なところを煮詰めたような本だった。うん、まぁ、私は戸建不動産営業はできないなと思わされた。とはいえ相手を殺す(=物件を買わせる)までの過程はなるほどと思わされた。

    名言『いや、お前は思っている。自分は特別な存在だと思っている。自分には大きな可能性が残されていて、いつかは自分は何者かになるとどこかで思っている。俺はお前のことが嫌いでも憎いわけでもない、事実を事実として言う。お前は特別でも何でも無い。何かを成し遂げることはないし、何者にもならない』

  • すごい強烈で苦しくなる本。

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著者プロフィール

1983年、京都市生まれ。神奈川県在住。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2012年「狭小邸宅」で第36回すばる文学賞を受賞しデビュー。著書に『狭小邸宅』『ニューカルマ』、近刊に『カトク 過重労働撲滅特別対策班』がある。

「2018年 『サーラレーオ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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