携挙が起こり、終末が始まった世界を操縦士のレイフォードと記者のバックの二人の視点から描いた物語。全体として丁寧に描かれており、くどさを感じるくらいだった。また、急に過去回想に入るシーンも多く、時系列が分かりにくいところもあった。
携挙の結果、半分くらいの人がいなくなった後の世界をレイフォードの個人としての視点とバックの世界全体での視点で進み、対比の構造になっていた。対比はその二人だけでなく、信仰に関してもレイフォードやクローイ、ハティでそれぞれ態度が異なり、様々な立場の読者が感情移入しやすい物語構成となっていた。また、カリスマ性のある反キリストとして登場するカルパチアの描写が上手く、スピーチ一つでもカリスマ性を感じることができた。
最初の方は記者のバックは身近に挙げられた人がそこまで多くなかったこともあり、携挙に関してあまり深く考えておらず、今まで通り国際会議の取材などに行っているのが印象的で、確かに携挙は世界的事件だったが、それは数ある事件の一つに過ぎず、それで権力や社会の構造が変わる訳でないと言われているような気がした。対して、レイフォードは妻と息子がいなくなったこともあり、携挙に関しての後悔が強く、それ故に信仰を持つという人生の転機を迎えており、携挙の扱いに差があるのが面白かった。
この正反対のようにも思える二人が会うのに、間にハティの存在があり、その繋がりが自然だった。ただ、バックがクローイに一目惚れするシーンは少し都合良すぎだと思った。年は十歳も離れてるし、バックの挙げたクローイの印象的な描写もいまいちピンとこなかった。おかげでレイフォードとの繋がりがより強固になったり、バックの生の人間臭さが出たのはよかったものの引っ掛かりのある部分だった。また、クローイの件があったせいかバックがレイフォードの話を素直に信じるのも違和感があった。
読み終わってから知ったのだが、これはシリーズものの一巻で、最終的にはレイフォードの伝道でバックも娘のクローイも信仰を持ち、二巻に続いていく流れで終わっており、少し消化不良が残った。二巻は読まないと思う。これも紙で読んだ。