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感想・レビュー・書評
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刊行は2015年。著者はアメリカの最高情報機関の元分析・報告部部長。
現代の潮流から2035年がどのような世界になるかを予測する。退屈な予測では全くなく、かといって荒唐無稽なことは書かれていない。「生物兵器テロ」の名前ではあるが、ウイルスの席巻と混乱する世界を描いたドラマ仕立てのフィクションは、コロナ禍の今の状況そのものであり背筋が寒くなった。
キーワードは「個人へのパワーシフト」、「台頭する新興国と多極化する世界」、「人類は神を超えるのか」、「人口爆発と気候変動」。
今の世界とは違う世界になることはなんとなくわかっているが、それに注意を払わず生きている。そうではなくて、刻々と起きている変化に対して目を背けずにいることの重大さを教えてくれる書籍。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずっとリストに積んでしまっていて、ようやく読んだと思ったら刊行(2015)から5年も経ってしまっていた。
予測の内容としてはあまり興味深いものはなく、前作『2030年世界はこう変わる(グローバル・トレンド2030)(2013)』と同じような内容だった。地味というか、どれも知ってる話と感じたのは、予想が極端ではなくあくまでフラットであるため、あまりドラスティックな予想を描いていないからか。フラットなのは
その一方で、歴史は予想に対して外れるのが常であり、ここで描かれていた予想「ではない未来」が来ると考えると、ちょっと怖い。本書刊行のあとトランプ政権に代わって、本書における楽観シナリオのいくつかが覆され、悲観シナリオに進んでいる気がするのは気になる。きちんと検証したい。
テクノロジーの影響がほとんどなかった。インパクトがあるのは水・食料と、あとは労働問題くらいか。IT技術は確実に世界を変えているものの、今後についてはインパクトとしては二の次になるっぽい。生活は変えても、地政学的な影響はやはりもっとマクロな変数によるのかも。
きちんと読み返せてないけどざっくりまとめると、メガトレンドとゲームチェンジャーはおよそ次のように整理できるかな。
・メガトレンド
-個人の力が、既存の国家の仕組みや、国家間関係を変える
-新興国が台頭し、相対的に国際秩序が変わる
-水と食料問題が大問題になる
・ゲームチェンジャー
-中国はどうふるまうか
-テクノロジーはグローバルイシューをどの程度解決できるか
-世界で紛争は発生するか(特に中東に注目)
-米国はどのように振る舞う意志があるのか
本書の次(2020年刊行?)との差分がむしろ楽しみ。
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【目次】
・本書について
・メガトレンド(1)「個人」へのパワーシフト
-「個」のパワーが国家を解体しようとする
-個人と権力の闘いは個人の側に大きく振れる
-中間層が世界の命運を握る
-世界から貧困は消えない
-個人と国家の経済的地位は、これまで以上に教育水準に左右されるようになる
-西側中間層は相対的に影が薄くなる
-中間層の拡大が「民主主義の赤字」をもたらす
-中国の民主化が試金石となる/ITは民主化運動に重要な役割を果たす
-大衆間・エリート間ともに、宗教の影響力が増す
-国家権力とプライバシー保護の問題の検討はこれから
-テクノロジーが雇用を奪う
・メガトレンド(2)台頭する新興国と多極化する世界
-個人が国家の能力を左右させる
-国際システムは多様なアクターの影響が大きくなる
-非「西側」へのパワーシフト/中国とインドの台頭
-日本は「過去」の国になる
-欧州の成長は鈍化/英国が西欧州最大の経済大国/ロシアは引き続き大国
-新興国の成長は止まらないが、ソフトパワーは上昇しない
-ユースバルジと民主主義体制への移行が紛争要因となる
-都市が富と経済力を高め、安全保障のイニシアチブもとるが、犯罪の温床にもなる
-地域統合が進むが、アジア・中東では協力関係に限界
-国際機構は必要とされるが改革が必要
-核の未来は北朝鮮とイランがカギ/紛争解決のために大国と中堅国家が結束する
-インターネットは分割されるのか
-世界は分裂しないが、可能性はある
-現在の国際秩序に代わる秩序は存在しない
・メガトレンド(3)人類は神を越えるのか
-人間の能力拡張や長寿命化のための技術が進歩する
-「熟年国家」は財政破綻する
-テクノロジーの倫理的な問題が懸念される
-ビッグデータ・IoTの可能性とリスク
・メガトレンド(4)人口爆発と気候変動
-異常気象は増え、安全保障問題に結びつく
-水・食料は不足し、生産効率を高めることが決定的に重要になる
-人口増加と都市化が資源需要を高める
-シェール革命と米国エネルギー自給により世界の供給に変化が起こる
・ゲームチェンジャー(1)もし中国の「成長」が止まったら
-中国は自国を負け犬だと思っている
-中国の成長のペースは鈍化し、高付加価値産業育成により中所得国の罠の脱出を図る
-経済成長が民主化を迫り、近隣諸国との緊張が一段と高まる
-中国のシナリオが世界経済に影響を与える
-中国の社会改革・政治改革の実現にはまだ長い道のりがある
-中国はしばらく移行に苦しみ、大戦争は起こらない
-中国は国際システムを大きく変える力を持つが、展望を持たない
・ゲームチェンジャー(2)テクノロジーの進歩が人類の制御を越える
-生産技術革命が第3次産業革命をもたらす
-3Dプリンティングは多くの国に新たな経済的チャンスをもたらす
-自働化技術は短期的には雇用を奪う
-合成生物学はかつてのインターネット並みの技術革新や経済成長を引き起こす可能性
-2030年の「農業」のかたち
-アメリカの代替エネルギー投資は鈍化するが、中国は大規模に投資
・ゲームチェンジャー(3)第三次世界大戦を誘発するいくつかの不安要因
-米国の軍事優位は続き、大戦争は起こらない
-若年人口は減るが、紛争が減るとは言い切れない
-中東地域全体が紛争に呑み込まれる可能性/カギを握るのはイラン
-南アジアも今後 15~20 年間に国内外でさまざまなショックに直面する
-インドとパキスタンをめぐる3つのシナリオ
-アジアは中国と米国とに引っ張られるが、中国は不確定要因となる
-アジアがたどる4つのシナリオ
-ロシアが独自の影響圏を確立した場合、世界が地域圏に分裂するきっかけになる
-中国よりも中東を注視すべき
・ゲームチェンジャー(4)さまようアメリカ
-パックス・アメリカーナは終焉し、アメリカは新しいリーダーシップを求められる
-TTIPとTPPはアメリカを欧州・アジアに繋ぎ留め、自由な貿易体制の要となる
-アメリカ経済について二つのシナリオ
-アメリカの能力が低下しても、いまはまだ世界はアメリカに期待する
-国際通貨体制は 10 年以内に間違いなく大きく変わる
-米中戦争からは程遠い
-アメリカが国際秩序を再構築するには、アメリカ自身も再構築が必要
・2035年の世界
-核の未来(中東核戦争とその後のシナリオ)