何者(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 就活に臨む大学生の話。かれらは「何者」かになっていくために自己に対する模索を続けています。SNS全盛の今の就活事情、人間の表と裏を鋭く切り取っていてリアリティーがあります。私個人の話ですが、学生時代様々なバイトをしてみて、ダメダメでした。幸い、たった一つだけハマったものがありました。だから就活はこの業界しかないなと吹っ切れました。でも、バイトながら凄く大変な世界だろうなぁということは察することができました。されどこの仕事でがんばらねばならぬ。もう、相当な覚悟で勉強しました。「何者」かになるために。
    内定をもらえたときには、やっとスタートにたったんだと安心と共にプレッシャーがおそってきたのを思い出しました。結局、「何者」かなんて就活の時点ではわかりませんでした。何で採用されたのかもわからない。登場人物の負の感情も共感できました。
    就活と学業の両立で慌ただしく毎日は過ぎました。どうせ受からないだろうとも思っていたため大学でとれる資格を全てとってやろうと思っていたためです。
    本書はそんな時代の自分を思い起こさせてくれました。そして、もういい加減にしなさいと思いながら自分が「何者」なのか探り続けています。

  • 就活とTwitterを交えた現代的な小説。
    自分の就活時代も思い出して、少しゾッとする。内定企業先の知名度によって、その人の価値まで評価されてしまうような感覚。
    人生がうまくいっているように見える身近な存在にほど、嫉妬心を抱いてしまうドス黒い感情。

    企業側も変にプライド高い学生よりも、純粋で素直な学生をとりたいよなとも思った。

  • 就職活動に懸命になる大学生ら男女の物語。
    私は年齢的にも時代的にも、違うので、前半は特に面白く感じなかったのだけど、後半のリカの反撃には、なかなかの爽快感があった。

    皆んなの前では大人しいフリをしながら、Twitterの裏アカでは、仲間を高い場所から俯瞰しているように批判する。馬鹿にする。見下す。否定する。
    今の時代だったら、普通にありそうな話。
    裏アカだからこその、心の本音。
    でも、意外とそういうのって人に見透かされるもの。
    私も若い頃は、そういう風に人を俯瞰して見下すような傾向にあったと思う。
    裏アカで同じ事をしていたかもしれない。
    でも、大人になった今となっては、そういう事自体が品の無い行為で、自信の無さの表れで、みっともないことだと分かる。
    人の生き方をジャッジしない、人の選択を否定しない、なるべく沢山の考えの違いを受け容れる、そういう大人になりたい。

  • 自分が何者なのかを常に考えてた時期は、人生で一回くらい通る道なのではないかと思う。

    「本当の自分はもっとできる」「あの人よりは優れている」だとか、人との会話でもその人より上か下か判別したり、相手の行動を蔑むときもあったかもしれない。しかも、自分の行動を棚に上げて。さらに、そんな周りを冷静に分析して、俯瞰的にみれる自分がカッコいいという自尊心にとらわれながら。

    そんな人間の根本の心情に優しくそして、重く気付かされる作品。

  • 叶わない、失敗、人に見られたくない心の裏側、などなど。
    就活に追われた大学生を介して生々しい痛みが描かれた作品。

    自分はこの登場人物たちのように、猛烈に駆られるような経験をせずに社会人になったので、最初こそ俯瞰して読み進めていましたが、最後に主人公の本性が見抜かれたシーンは他人事と思えなかった。読んでいてしんどいなと思いました。そういう人いるよね、では済ませることが出来ませんでした。

    なるべく正しく、上手く生きていけるようにしている中でも、きっと誰にでも歪んだ部分はあって。
    でもそれを見ない振りして格好つけるのか、恥ずかしくてダサくても、それが自分だと思うことができるのか。

    色々考えさせられました。
    いい意味で、もう読みたくないです。

  • 人生における就活って何なんだろう?就活の正解って何なんだろう?
    複数の企業から内定を得ること?早くに内定を決めること?などと考えながら読んでいました。

    最後の30ページに主人公である拓人の心の中の闇というか、心の奥底に眠っている化け物みたいなものが出てくるのが非常に読んでいてハラハラしました。

    仲間意識のようなものを持ちながらも他人の成功を喜ぶって難しいことだと感じました。そのようにして他人との関係を通じて自分が「何者」なのか知っていくのかなとも思いました。

  •  就活生たちの青春群像劇かと思いきや、さにあらず、どろりとした沼へ突き落とされるような感覚になりました。

     特に、自然とそうなってしまうのですが、拓人目線で読むとかなり痛い目にあう物語だと思います。特大のブーメランが返ってくるので・・・。

     個人的な話ですが、先日、本書で読書会をしました。一時間半かけて本書や映画化作品、スピンオフ作品について語り合いました。
    色んな話が出たのですが、キーワードはやっぱり「想像力」だとなったことは、印象的でした。

     自分が就活生のときに読んでいたら、もっと違う進路になったのではないだろうかと思ったりしましたし、2012年の作品ですが、今のこのSNS全盛期を象徴するかのようなシーンも多くて、今読んでも面白いと思います。

  • 「観察者」という単語が心に残った。自分も身に覚えがある。何事も綺麗にスマートに物事を進めていこうとする傾向が自分にもある。もっと泥臭く生きていくことも大切だと痛感する。


  • グサグサきた。

    今まで理香のようなひとをずっと心の内でバカにしてきた。
    いつでも明るく、やりたいことに真っ直ぐで必死になれる人。
    だけどそういう人のことを、どこかで羨ましく思う自分にも気付いていた。

    頑張れない自分をうまく受け入れることができず、失敗しないように保険をかけている。
    そんなんだからいつまで経っても自分のことを認められず、誰かをバカにすることでしか自分を保てない。
    誰が読んでも自分を省みれる一冊。
    作者にまんまと誘導されていく感じが、ラストはもはや心地良くて笑ってしまった。

    あまり読んでこなかった朝井リョウさんの話題作(それこそ天邪鬼で)、もっと手に取ってみたいと思えました。

  • インターネットに企業の裏情報や就活ノウハウが溢れ、就活生自身も日々SNSで状況を短く発信していく。そこでは、人からこう見られたいという見栄や願望、自己防衛本能の裏返しの自虐や誹謗中傷が飛び交っている、というのが最近の大学生の就活状況らしい。

    本書は、SNSでの呟きを織り混ぜながら、主人公、二宮拓人の視点で大学5年生4人(いや5人かも)の就活を通した交流が描かれている。お互いライバルであり同志、という微妙な関係の4人繰り広げる就活&恋愛事情。

    それぞれ紆余曲折有りながらも何とか内定にこぎ着けるのかと思いきや、なんとラストに大どんでん返しが! 読み終わってみれば、拓人の心の闇がテーマの割と重めの作品だった。まあ、自分に自信が持てなくて斜に構えてしまうことって、程度の差こそあれ多くの人に有るんじゃないかな。読み終わってちょっとドキッとした。

    なお、理香の独りよがりのアピールでは,内定を取るのがかなり難しいだろうな。おそらく採否の基準は面接官が一緒に仕事をしたいと思うかどうかだろうから。

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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