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感想・レビュー・書評
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立川談春が17歳で高校を中退し、立川談志に弟子入りしてから真打ちに昇進するまでを書いた一冊。落語好きな方は読まれると良いかと思います。修行の辛さ、特に真打ち昇進するのがどれだけ大変か、よくわかりました。特に最後の小さん師匠とのやり取りは胸を打つものがありました。
【メモ】
・落語とは人間の業の肯定である
・師匠なんてものは、誉めてやることぐらいしか弟子にしてやれることはないのかもしれん
・修業とは矛盾に耐えることである詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
語り口は落語さながらの軽妙さで、
ぐいぐいと引き込まれて読み進む。
「修行とは矛盾に耐えることだ」
その矛盾さに、ハラハラしながらも、
節目節目に感じられる談志師匠の愛情。
著者の葛藤。
最後には小さん師匠も登場し、
師匠と弟子とは、そこに流れる深い愛情を
しみじみと感じ入り、感動した。
その底に流れる情を感じながら、
しみじみと落語を味わいたくなった。 -
面白かった
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コロナ禍になって本を読むようになり、小説以外を読むと決めてこの2年で400冊読んできた。
そのいくつかの本に通底していたのが、落語は人間の業を受け入れる、というものであり、そうやって人間の不完全さを当たり前のものと考えることが、現代のいろんな問題の根本に抜けているのではないか、というものである。
この本には、粋とはなにかということを感じられるエピソードが満載である。宵越しの銭は持たぬ、武士は食わねど高楊枝、などの江戸っ子の粋を体現する落語家の生き様を読みながら、目の前のことに打算抜きで必死に生きていると、粋になるのかなと感じるな。
談秋廃業の夜のラーメン屋、志らくとふたりで開いた落語会が盛況に終わったあと二人で食べた渋谷道玄坂の牛丼。
流石に聴かせるエピソードが多い。やや尻すぼみは感じたが、素晴らしい本だった。 -
発売当時話題となっていて、読みたいと思ってリストに入れて、そのままなんとなく読んだと思い込んでいた。
最近リストを見ながら未読だったことに気づいて改めて読み始めた。
今1番チケットが取れない落語家、立川談春さんのなぜ落語家を目指したのか、なぜ談志だったのかに始まり、前座時代の話、河岸での修行、師弟関係、落語界の話が読みやすくまとめてある。本人が書いたのか?と思うくらい、落語家というのは文才もあるのだと改めて思う。
真打昇進の際の、談志と小さんのエピソードはグッとくる。
読み終わると談志の落語が聞きたくなった。
(談春ではない)
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師弟関係が色濃く残る落語業界。
10代の頃は、こういう理不尽な世界は嫌だなあと思っていたが、大人になって読んだ今は、師匠側の気持ちも少しわかるせいか、こういう世界もちょっと良いなと理解できるようになってきた。
会社なら即クビになるような失敗も、本人の行動や周囲の手助け次第で挽回できる。不公平で理不尽な世界だけど、その人その人の特性が活かされる事もあるだろう。
自分には師匠という存在がいないから、ちょっと憧れる。
落語も見てみたい。 -
今日本一チケットが取れない落語家と言われている立川談春の半生を、自ら描いたエッセイ。
TBSでドラマ化もされて評判になった。
読了し、今まで読んでなかったのが不思議に感じたくらいの読後感だった。
「本を通じて、人の人生を生きることができる」とはよく言うが、こういう本に出会うと幸せな気持ちになれる。
自分とほぼ同年代で、こういう人生の選択をした談春氏は本当にすごい。
そして何度も挫折を繰り返しながらも、今現実的に活躍に至っている。
人って生きている以上は、結局は「人生をどう生きるか?」を選択しなければいけない。
みんな幸福な人生を歩みたいと願っているはずなのに、思い通りにならない事の方が多い。
人生は無常なものなのだ。
そんな人生の機微を、江戸時代から受け継がれる「落語」がそのまま体現している。
この本を読むとよく分かる。
「落語」は修業しないと、絶対に上手くならない。
「本で覚える」「ビデオで覚える」そういう事ではない。
なぜなら、語られる言葉が、まさに「人生の機微」そのものだから。
会社というのは、社員の成長を効率的に行うために、OJT含めて教育制度の充実に向かう。
それで仕事のテクニックは覚えるかもしれないが、人間性はなかなか育たない。
(しかも「それは家庭の育ちの問題」と切り捨てたりしてる)
本当に大事な部分は、修行とか苦労をしないと、身につかないのかもしれない。
改めて「人生をどう生きるか?」考えてしまった。
(2017/7/7) -
面白かった。ドラマも良かったけど、原作もいい
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年末に嵐の二宮くんが談春役をやって話題になった「赤めだか」の原作を読みました。
あとがきにも書かれていますが
「談春は間違いなく言葉に祝福されている」
という評価どおりに、こんなに出来上がったエッセイを読んだことない。
大爆笑の後に大泣きがあり、読んでいて映像を見ているかのような
感覚になる。
師匠の談志の人柄や自分の生い立ちや性格、そして落語の世界の解説まで
巧みな言葉のセンスで綴られていて
読んでいる人を一気に物語の中、落語の世界へと引き込みます。
故人立川談志が弟子に向けて話した含蓄のある言葉の数々
それをこの本を通してでも知れたことで
自分の人生の深みが増したような気すらさせてくれました。
読むのが遅かったぐらいで、自分にとっては大げさでもなんでもなく
振り返っても人生の一冊と言える本です。 -
2016.01.03