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- / ISBN・EAN: 4988111249760
感想・レビュー・書評
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⬜ 魂の重さが21gならば命の重さは… ⬜
父の持っていた“キログラム原器”をパリまで運ぶ任を仰せつかる、ノルウェーの国立計量研究所に勤務する女性:マリエ。
今風に言うならばいわゆる、“リケジョ”のヒロイン。
この彼女がフランスの男性と恋に落ちるというストーローなのだが・・・
“キログラム原器”という代物が何のことなのか?
先ずそこに興味をそそられた。(詳しいことはこの名の入力でネット検索をしてみることにしよう。)
《計量器に誤差が生じていないか?》それを調べ上げるのがマリエの仕事。驚いたのは雨の中、スキーのジャンプの急傾斜のところで長さの確認作業を行なっていた場面。
次いでガソリンスタンドの給油機器も誤差が無いか調べて認証済みのシールを貼って立ち去る。何ともマニアックな職種の女性を主人公にしている辺りがユニークである。
BGMにはやや短調な音階だけれども、リズミカルな調べがが繰り返し画面から流れてくる。これもストーリーと良く調和している。
離婚を協議中のマリエの今後のことを父親は案ずるのだった。そして、この仕事をしている娘に対して仕事になぞらえた助言をするシーンも実に印象深い。
「魂は21gろ言われるが自分の周りにはそれより軽いと思えるやつらばかりだ」
自分の人生をこの辺で量りに掛けてみては…?というような示唆をされて間もなくのこと…
車で事故を起こし“キログラム原器”の外装を破損したり、病に襲われた父に他界されてしまったりと、マリエの心は大きく動揺するのだった・・・
人生の重さを量れ…
亡くなった父の希望で火葬にふしたその灰の重さを、マリエが計量器に乗せるシーンも印象的だ。細かい灰が光線の中で浮遊し、マリエは鼻から父を迎え入れていたような気がする。計量器のデジタル数値がカウントしだし…
それが、“1,001”で止まる。彼女はどこか安堵の面持ちで、うっすら笑みを浮かべたような気がする。父の重さ(父が歩んできた人生の集約、終着点)、不要な物すべてが剥ぎ取られそこに残った《父の真の中身》のようなものを知っマリエは、ある意味、悟りの境地に至ることができたのかもしれない。
結婚に失敗し、この地味な仕事に笑顔も失いかけている自分に、灰になった父は自らを以ってマリエに更に問いただてくれたのだろう・・・
涙腺が緩んだシーンであった。
覚えておきたい重みのある言葉を、登場人物たちが本編でさりげなく口にする場面が幾度となくある。それがひじょうに心地よい感慨に陥るらせてくれる。
マリエに扮した女優、アーネ・ダール・トルプは知らなかったが、今が旬のフランス女優のれレア・セドゥと、ダイアン・レインを足して2で割ったような面立ちの彼女の“単調な笑わない毎日“の演技が秀逸。
笑顔を見せることがなかったマリエが、パリでパイ (ロラン・ストッケル)という男性に出会い恋に落ち・・・
ラスト、解き放たれたマリエはひとつのバスタブに彼とふたり、ひとつになる・・・
《キーワード》
*幸せを測るハカリはひとつじゃない
《Nice アイテム》
*電気自動車
(地球環境にやさしい車。だけれども、生きていくということは、たまには毒も吐かないといけないのだ。その対峙のように、彼女がこれを愛用している辺りが実に巧いと感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示