戦う操縦士(新潮文庫) [Kindle]

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  • サン・テグ・ジュペリが第二次世界大戦での、対ドイツとの戦地での偵察飛行をもとに描いた一作。

    フランスも大きな失敗をしてドイツに負けたのだろう。アメリカの参戦を促すうえで書かれた背景もあるようですが、それ以上にやはり感じるのは戦争の理不尽さ。フランスの後手に回った対応と無謀な指揮への批判を含むような印象も受けます。
    無意味とも無謀とも思える偵察飛行に向かう彼の、空を飛ぶ偵察機の現世から離れた空間の中で、死に対するシニカルな目線とを感じます。その一方できわめて危険な仕事に”コミットすること”というものや覚悟を持つこと、書かれており、心を揺さぶられる。
    死に赴いた親友を持ち、自らの死をすぐ隣にした著者は「何に注意したらよいのでしょう? 空は空虚ですぜ。 」とシニカルに現実を見つめながら、
    「人間はどこまでも人間だ」というメッセージは、幾多の戦争をテーマにした作品が共通に語る言葉。
    著者の『人間の土地』も好きですが、本書はより重苦しい戦争の世界を描いたものとして、読む価値のある名著だと思います。

    ちなみに1956年発刊の新潮社版を買ったのはただ単に調査不足で適当に買ってしまったせい。読めない漢字で書かれた難しい表現も結構多くて苦戦しました。
    後から調べて知りましたが、2018年に出てる光文社版のほうが読みやすかっただろうなと思います。まあサンテグジュペリの瞑想的というか、深い観念的な部分はもしかすると本訳の難しい表現のほうがそれっぽいかも?気が向いたら光文社版を読んでみます。

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著者プロフィール

フランス・リヨンに伯爵家の長男として生まれる。海軍兵学校の入試に失敗したあと、21歳のときに兵役で航空隊に入隊。除隊後、26歳で民間航空会社に就職し郵便飛行に従事する。同年、作家デビュー。以後さまざまな形で飛行し、その体験にもとづく作品を残した。代表作に『南方郵便機』(29年)『夜間飛行』(31年、フェミナ賞)、『人間の大地』(39年、アカデミー・フランセーズ賞)などがある。『星の王子さま』(原題は『小さな王子』、43年)は第二次世界大戦中、亡命先のニューヨークで書かれた。翌44年7月、偵察任務でコルシカ島の基地を発進したあと消息を絶った。

「2016年 『星の王子さま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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