- Amazon.co.jp ・電子書籍 (248ページ)
感想・レビュー・書評
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凡人のあなたでも新たな宗教を開設し、その教祖として大成功できる完全マニュアル。
という体裁をとった宗教の仕組みや成り立ち、その背景にある合理性や時代の特徴など多面的に分析し解説された本であり、現代におけるマーケティングや組織マネジメントに通じるエッセンスがふんだんに盛り込まれた本。
文体が軽妙で笑いながら読める。
本書の目次に沿って学びのエッセンスをまとめると
・教義を定めるのは、ビジョン策定やブランディングそのもの
・大衆に迎合するのはユーザーニーズに寄り添ったマーケットインの思想
・信者の保持はリードナーチャリングとCRMの話
・教義の進化はベネフィットの確立、UXの話
・布教はPRマーケティング
・困難に打ち勝とうは競争戦略、差別化
・甘い汁を吸おうはビジネスモデル、マネタイズ
・後世に名を残そうは心構え、スタンス
と思いながら読むととっても味わい深い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『完全自殺マニュアル』と同じ、茶化しながらアングラな内容を解説する本。自分は宗教にはだまされないとか、なんでカルト宗教にはまる人がいるのかよく分からない人にオススメ。
これを読むと、インフルエンサーのオンラインサロンやネットワークビジネス、反ワクチンや陰謀論、SDGsや環境保護活動なんかも宗教であることがわかる。つまり何かの宗教に属することは社会に属することなので、この本を読んであらゆる宗教から距離を置くと社会から孤立する。そういう意味では危険な本かもしれない。 -
本気なのかネタなのか分からないところが面白い。
人が何かを信じる仕組みが分かる。逆に言えば、仕組みを知ることで騙されななくなる。
さすがに教祖にならないにしても、コミュニティ作りの参考にもなる良書。 -
教祖になるためのノウハウを通じて、宗教団体というものをアイロニカルに理解していく。これを読めば、宗教団体の運営が分かる。
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再ブーム中の『完全教祖マニュアル』。コミュニティ論より、純粋に宗教書として出色の一冊。ぐいぐい読ませる可笑しな筆致と膨大なレファレンスに裏打ちされた考察。反社会性を組織にインストールして、結束するための方法論が明快。
amzn.to/2JxBzWJ
#長リョ本 -
組織論の実践を学べる。一体感を強めるために、他のコミュニティと差別化すること(特殊な組織に所属しているという選民思想)、異端の追放など、意外と参考になった
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「オリジナル宗教を作って教祖になる」という切り口で、宗教とは何かを論ずる本。
食事に対する制限や、決まった時間の礼拝など、宗教の外から見ると理解が難しいルールが、実は合理的な理由から成るものだ、というのが分かって驚いた。 -
十年以上前に読んだ本を再読。初読のときはやたら面白かったので、その時の思い出で星四つとした。衝撃は再読時には薄れた。しかしながら大爆笑の箇所は多々あった。
著者はキリスト教、仏教、イスラム教、儒教、神道と、そのほかにも宗教に精通している。それゆえにキリスト者であまり聖書を読まなかったり、祈らないような人は、他宗教も聖書信仰も並列に考えるのでは無いかと思う故、あまりおすすめはできない書。
それでも再読したほど評価しているのは、背教と世の惑わしが、この世の人の視点で学べると思ったから。事実そのように学べた。
キリスト者としては、生半可な信仰では腹が立ったり惑わされたりしてしまうような内容。でもしっかり信仰を持っているのであれば大いに学べるし笑えもする。
なのでやはり星は四つ。 -
(書き途中)
タイトルが面白くて、つい買ってしまいました。
教祖になりたい人に手取り足取りやり方を教えるという手法で、本書自体が教祖になりたい人の教祖になるというメタ的な本です。
既存の宗教や新興宗教の構造を面白おかしく分析した本、という言い方もできます。
以下、本書風の語り口で本書を紹介してみます。
宗教に帰依されている方など、ご不快に思われる可能性がありますのでご注意ください。
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感動の声多数!!誰でもあこがれの教祖になれる!!!
人に尊敬されたい、人を支配したい、操りたい。
そんなあなたにお勧めの、教祖になるためのハウツー本です。
以下のチェックリストを確認しながら、Step by stepで教祖を目指しましょう!
★チェックリスト★
第1章:教義を作ろう のチェックリスト
□ 神は用意できたか?
□ 教えは反社会的か?
□ 社会的弱者を救えるか?
□ インテリは抱き込んだか?
□ イケてる哲学はできたか?
第2章:大衆に迎合しよう のチェックリスト
□ 誰でも一分で理解できる教えか?
□ 小学生でもすべきことが分かるか?
□ 葬式はしているか?
□ 現世利益は謳っているか?
□ 偶像は用意できたか?
第3章:信者を保持しよう のチェックリスト
□ オカルトに対応しているか?
□ 民衆の不安は煽ったか?
□ 民衆に救いを用意したか?
□ 食物規制はしているか?
□ 断食はしているか?
□ 暦を作ったか?
□ オリジナルの祝祭日は作ったか?
□ 異常な振る舞いをしているか?
第4章:教義を進化させよう のチェックリスト
□ 信者に義務を与えているか?
□ 形式主義に陥っていないか?
□ 権威を振りかざしているか?
□ セックスしてるか?
□ 科学的体裁は取ったか?
□ 悟りはひらいたか?
第5章:布教しよう のチェックリスト
□ 社会的弱者を獲得したか?
□ 金持ちは獲得したか?
□ 親族を仲間に引き込んだか?
□ 戸別訪問は実践したか?
□ 魅力的なコミュニティは作ったか?
□ イベントは定期的に行っているか?
□ 宗教建築は行ったか?
第6章:困難に打ち克とう のチェックリスト
□ 他教団をこきおろすか、もしくは認めたか?
□ 異端は追放したか?
□ 迫害を逆に利用できているか?
□ 日蓮正宗に邪宗と断じられたか?
第7章:甘い汁を吸おう のチェックリスト
□ 出版をしたか?
□ 不要品の需要を生んだか?
□ 免罪符は売れているか?
□ 寄付金の集め方に工夫は凝らしたか?
□ 寄付金は集まっているか?
□ 寄付はしているか?
□ 名誉博士になったか?
第8章:後世に名を残そう のチェックリスト
□ 自分の名が歴史に残ることを疑いもなく信じているか?
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第1章:教義を作ろう
・神を作るかどうか、これはとても重要です。ユダヤ教のような排他的な神にするか、イスラム教のような受容的な神にするか。もしくは仏教のように神は作らないか。
どれでも良いのです。要は信者をハッピーにできるかどうか?であり、そのためにどのような機能の神にするかを考えましょう。
自分で作るのが面倒だったら既存の宗教の焼き直しでも構いません。昔からある宗教は現代の問題にマッチしてないこともあります。キリスト教だってユダヤ教への批判から生まれたのですから。
・宗教は既存の社会の問題点をあぶり出す形で生まれます。ロックな反社会精神でいきましょう。既存の社会では報われない、社会的弱者に焦点を当てて救っちゃいましょう。イエスキリストも徴税人や売春婦を救おうとしましたしね。
・理論武装ができると尚よいですが、難しい方は「前提」と「問題点」だけ述べて、あとはインテリに任せちゃいましょう。仏教でいえば「輪廻転生」と「人生は一切皆苦」ってことだけ言っとけば、釈迦のようなインテリが「あ、じゃあ悟ればいいんだ。」
第2章:大衆に迎合しよう
・一般大衆に難しい理屈はわかりません。超簡単な教えと、お手軽な現世利益を用意するのが肝要です。浄土真宗で言えば、「南無阿弥陀仏を唱えれば、極楽浄土に行けるよ!」みたいなことですね。
・葬式はやっておくとお得です。元々の仏教ではお墓や葬式といったものは不要でしたが、日本では儒教的な精神やら江戸時代の政策やらで葬式仏教が定着しました。というわけで、あなたの教えが本来は葬式とは関係なくても、やっておいた方が大衆にわかりやすいでしょう。
・人は見た目から入る生き物です。偶像を作って崇拝させましょう。仏教には仏像、キリスト教には十字架があります。形から入るのが大事です。
第3章:信者を保持しよう
・お風呂で髪を洗ってるとき、何かが背後にいる気がして怖くなった経験はありませんか?よくわからない不思議なことがあったとき、イスラム教なら「精霊の仕業」、キリスト教なら「サタンの仕業」だと思うでしょう。あなたの教えでもオカルト現象に対する説明を用意しておきましょう。本当に気合の入った唯物論者なんてそうはいませんから、役に立ちます。
・今は困ってないように見える人に、将来の不安をあおって救いを用意するのも有効です。例えばエコ。地球環境の危機を訴え、このままじゃまずい、エコに取り組まなければ!と大衆に思わせることに成功していますね。
・教団内に特殊なルールを作ることで、所属感を高めるのも有用です。簡単なのは食事の規制で、規制が日常化すれば、あなたの教えも信者の日常に溶け込みます。例えば、イスラム教で豚肉や飲酒を禁じているのと一緒です。断食も悪くないです。イスラム教のようなプチ断食もありです。
・教団の記念日を作るのもいいですね。ユダヤ教の安息日のように。敬虔なユダヤ教徒は安息日には車も乗らないし料理も作らない。
・ハードコアな宗教行為というのも一考の余地があります。ゾロアスター教では儀式の最中に信者が牛の尿を頭からかぶるそうです。傍から見たら不合理ですが、それで内部の結束が高まって信者がハッピーになるならありでしょう。
第4章:教義を進化させよう
・義務を信者に与えれば、「これだけ義務をこなしたんだから、きっと天国に行けるはず」と思いやすくなりますが、形だけで信仰が伴わないとハッピーにはなれません。信者が形式主義にならないよう注意しましょう。
・権威を持つことで信者たちを従えましょう。イスラム教徒はムハンマドの予言に従って、豚肉を食べません。おばさんたちはテレビの権威に従い、納豆をやたら食べたりコンドロイチンのサプリを飲んだりします。彼らは決して嫌々従うのではなく、喜んで従うはずです。
・性欲を満たしたいなら、教義の中でセックスを正当化しましょう。道教やチベット仏教ではセックスが宗教上重要な役割を持っていたようです。
・残念ながら新興宗教はうさん臭さをぬぐい切れません。科学的体裁を取り、うさん臭さを解消しましょう。その際、本当に科学的に妥当かどうかなんて大衆は気にしません。グルコサミンやコンドロイチンを口からとっても関節内の関節液に補充されるのは医学的には考えにくいですが、「ぐるぐるぐるぐるグルコサミン」のあのサプリは爆発的に売れていますよね。
・悟りは難しい道のりですが、教祖としてより高みを目指したい方は目標にしてもいいかもしれません。仏教のような「悟りマニュアル」を真似するのも一つの方法です。
第5章:布教しよう
・まずは病者、貧者、社会的弱者などを狙い目に布教しましょう。彼らの不幸な状態に宗教的な意味付けを行い、導いてあげるのです。
・上記対象だけでは金銭的に潤いませんから、金持ちも取り込みましょう。金持ちだって死は怖いですから、死をネタにして取り込むのも一つの手です。秦の始皇帝も中国統一後は不老不死を求めて霊薬を探しましたしね。
第6章:困難に打ち克とう
第7章:甘い汁を吸おう
第8章:後世に名を残そう -
宗教が宗教となっていく過程が、教祖側の視点から見ると思いがけずロジックが通っていて笑える。