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感想・レビュー・書評
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Kindle Unlimitedで読了
大変くだけた言葉で書かれた、初めて出会う有職故実と平安の文学作品を典拠にした生活案内。著者は気鋭の平安文学研究者、川村裕子氏。この本は、岩波ジュニア新書だから、当然中学生くらいとか、初めて古典に出会う読者を対象に書かれている。とにかく、面白いし読みやすい。そして、内容については、大人向けの平安女子案内っぽいエッセイなどより、数倍しっかりしている。まだ手垢の付かない
「古典なんか嫌い!」
と言っていない若い読者に、ぜひ気軽に読んでいただきたい。平安時代の家、装束、しきたりごとに、恋愛事情…知識があって、作品の中でどう出現してくるのかが具体的にわかっていれば、イマジネーションを膨らませて、没入感を持って作品に出会える。当然扱うのは文学なのだから、そういう味わい方が出来れば面白い。そしたらもっと知りたくなるし、理解だって進むわけで。
既に古文が嫌いになったという高校生の諸君も、隣に好きなラノベ置きながらでいいから、ちょっと読んで欲しい。暗記とか文学史とかいいながら知識を詰めるより、断然面白いから。
何なら大学の国文学科の学生さんで、有職故実の授業が眠くて、ぼーっとテキスト見ても入ってこない人にもオススメだ。精密なイラストによる、今自分がそこにいるような寝殿造の解説。着用イメージが人形や写真を見ただけでは掴みきれない装束の、平易で的確な紹介。
「あ、そうよね。こうだよね。」
と腑に落ちて、思い違いをしているところがあれば、知識の修正にもなるだろう。わかるというのは大事で、思い出したり腑に落ちるというのは、知りたい気持ちを増す。だから、自分の知識を再確認するのは、いいと思うのだ。少なくとも平安朝の文学に魅せられた時の初心に還してくれる内容だと思う。
ちょっと詳しい方なら、知っておられる知識かも知れないが、おさらいとして読んでも良いし、来年の源氏物語の大河ドラマを楽しく観る副読本として、一般の方がお読みになっても、ちょうどいい平安案内になるだろう。
引用してある歌や物語も、有名なものを引きながら、無理に原文を載せず、わかりやすい現代訳をつけている。それより、作品の内容や人物の心の動きを理解したり、共感することの方に意識を向けている。
原典を載せてもいいんじゃない?と思わないではなかったけれど、原典見た途端に
「うわ、ムズ!わかんないよ!」
となるよりは、中身が心に届く方を優先したのかもしれない。読了後に原典に出会って
「これ何となく知ってる。そうだ、昔、岩波の、平安女子の本で読んだ場面じゃん!」
となる方が、きっと楽しいだろうから。
男子版もシリーズであるそうで、知ってることが書いてあっても、私は読んでみたい。その後に、あえて別の方の著作だが『殴り合う貴族たち』のようなものも読みたいし、最近現代語訳の進む、貴族の日記にもあたりに行きたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中学生で読みたかったー!
大人になった今はもう全部知識として知っているし、有名どころの文学作品は原文で読んでしまった。
きっとその前に読んでいたら、高校時代の古文読書時代をもっと楽しんだだろうなぁ。
楽しかった。