うつ病の現在 (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 医療担当の新聞記者がまとめたうつ病の入門書。読みやすく内容も分かりやすくまた情報も新しい。

    この夏無理をして体調を崩してしまったので、あらためてうつ病について読んでおこうと購入した。自分の知識が症状が今より重かった10年ぐらい前からあまりアップデートされていなかったため。

    昔の本と違うのは、まずモノアミン仮説からの進歩。脳内のセロトニンが不足するから、という単純な説よりも、海馬のBDNFの増減にセロトニンがかかわっているらしいという説にシフトしている。

    薬についてはNaSSAが加わった。

    先月体調を崩したときに、長期の自宅療養を覚悟して、というかそれを理由に仕事から逃げ出したくて医師に泣きついたところ、「新しい薬があるのでまずこれを」といってNaSSAを処方してもらった。飲んでみたら副作用として聞いていた眠気が出て翌日はほぼ寝込んだが、その次の日から仕事に復帰できてびっくりした。

    それでも効き目はSSRIとあまり変わらないという。SSRIは飲んだことがないから、やっとどういう薬なのか見えてきたような気がする。

    SNRIは最初に診断もらったとき処方されたけど効果を実感できなかった。あの頃は症状が重かったからかもしれない。今SNRIやSSRIを飲んだら同じようによく効いたかもしれない。

    いい本ではあるが、書いた人が健康な新聞記者であるというので、特に自殺に関するところはちょっとだけ物足りない。

    希死念慮といううつ病の症状についてあまり言及せず、自殺には心配事など他の要因もあるはずだというような認識に思える。

    そんなに普遍的ではないかもしれないけど自分について言えば、「死にたい」という気持ちはうつ病とセットでどこからともなく湧いてくる衝動。

    最初は早朝目が覚めて吐き気など身体症状が苦しく、「いっそ死んで楽になりたい」と思う感じだった。この頃は「死にたい気持ちは症状が苦しいからだ」と納得していたところがあるけれど、仕事に復帰しても、ちょっとした心の隙に「死にたい」という気持ちがずっと残っていた。

    なにしろその頃、特にネタがないときに考えることは、「どうしたら楽に確実に死ねるか」ということ。道を歩いていて考えることは、「誰か通り魔が心臓を一突きして殺してくれないか、そうすれば保険金も出る」ということ。

    うつ病で「死にたい」と思うのは、男子が「おっぱいもみたい」と思うのと同じぐらい自然なことのように思う。

    症状が重いときは本当にきつく、「死にたいのは病気の症状に過ぎない」と何度も自分に言い聞かせて耐え忍んだ。

    何年も経って、ようやく、「そういえば最近はあんまり死にたくないな」と、症状が軽くなったことを実感できるようになった。

    先日の調子を崩した件も、医師が簡単に休職の診断書を書かず、まず薬、という対応をしたのは、端から見たらそんなに症状が重い状態に見えなかったかららしい。

    自分としても、つらいけれどあんまり死にたくないということに気づいて、薬を飲んで眠いけど、開き直って休んでしまえ、というぐらいの気持ちになって、夜が明けたら「あれ?」という具合に普通に朝起きて通勤電車に乗れていた。

    して見ると、「死にたい」という気持ちがどこからか湧いてくる状態の人は、かなり状態が悪い可能性が高く、一見普通の生活ができていたとしても、ともかくも医師に相談するのがよいように思う。

    早くに医者にかかって治療に取り組めば、症状も軽くて済み、よくなるのも早いというのは間違いないことなので。

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