ローマ亡き後の地中海世界(上) [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
4.00
  • (4)
  • (5)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 34
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (451ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  476年の西ローマ帝国の崩壊から1779年救出騎士団の救出活動終了までの期間において、イスラムに拉致されたキリスト教徒をあつかった作品。欧州側から見た視点でありながら、客観的事実をつなぎ合わせた文章は冷静。
     しかし、論理的展開による領主の責任、不作為を指摘する内容は、客観的であるがゆえに作者の熱い気持ちが伝わってくる。
     古今東西、権力の空白地帯では暴力が支配し、その犠牲者は下層市民に集中する。応力は弱い所に集中する、ということだろう。非武装中立は周辺諸国に理性があることが前提であって、現実世界からみると脆弱な施策であると改めて感じた。

     ところでイスラム側は、キリスト教徒の誘拐によって労働力を無償で得ており、しかも用済みになった奴隷からは身代金を得ることができた。リスクはあるが、人的資本と金融資本を濡れ手に粟で手に入れたということである。
     しかし、イスラムは、19世紀には植民地になったことを考えると、得られた資源を単に消費しただけではないだろうか。人的資本や金融資本を農業や商工業に投資していれば、また違った未来になったのではないだろうか。これを教訓に、再投資の大切さを考えさせられた。

    ユリウス・カエサル
    「後にはどんなに悪い事例とされるようになることでも、それが始められたそもそもの動機は、善意に基づいていたのだった。」

    (上記に対する塩野の注)
    歴史はいかにこの種の事例に満ちているかは言うまでもないほどの真理だが、この真理も裏を返せば次のようになるのではないだろうか。
    「後にはどんなに良き事例とされているようになることでも、それが始められたそもそもの動機ならば、悪意(とまではいかなくても褒められはしない想い)に基づいていたのだった。」

    (衰退国の特質)
    ビザンチン帝国も、真剣に救援の軍の派遣を考えたようであった。だが、衰退しつつある国の特質は、決めるのも遅いがその決めたことを実行するのも遅い、というところにある。

  • 塩野七生はソース書いてくれないんだよね、と思いつつ読み始めたらやっぱりその辺に堪えられなくなり読めなくなった

  • 『ローマ人の物語』の続編、というよりはちょっと長いエピローグと言ったほうが良い。その内容の大半は地中海に出没したイスラム系の海賊と、それに対するキリスト教徒の話となっている。

    流れ的には続いているとはいえ、『ローマ人の物語』に比べると面白さは少ない。これは著者よりも時代のせいだろう。キリスト教徒側の視点で見ると、ひたすら海賊に抵抗していくだけとなっている。これが国対国であるならばまだ盛り上がるが、襲われる多くは奴隷目的の民間人である。どうしたって娯楽要素は少ない。

全3件中 1 - 3件を表示

塩野七生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×