正しさとは何か [Kindle]

著者 :
  • サイゾー
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  • 「正しさ/正義」は「誰が、どこで、どのタイミングで決めるか」が大きな要素になるので、一般的な認識と乖離してしまうことが多々あるし、逆により多くの人々に共感してもらえる「正しい主張」が響き渡れば「権力者」も「場の空気」をも粉砕するほど力を持つこともある。

    自分で「正しさ」や「公平性」などについて熟考する時は、思想や哲学が道具として役立つが、これらは問題の深部にある発生源を直接的に触れようとするあまり、使い勝手が悪いことが多い。痛みが伴うのに体質改善的なアプローチとなりがちで切れ味も悪く、即時性もない。だけに自分の中ですら辛抱しきれなくなって結果的に「正しさ」が負けてしまうのだ。

    また中年男性ともなると「私だけが正しい」という気の病に陥りがちだ。それが頑固親父、雷親父、老害、コンサバ、レガシーなどと煙たがれることになる。退職して家族からも鬱陶しがられたりしたらその脅かされた「承認欲求」が爆発して暴走老人化してしまう。自分の考える「正しさ」の力にすがって個別の事情を拒絶し、攻撃して得られる自己重要感は、「ゼロ⇔100」にしか認識できない能力の限界を晒しているばかりか「自分の弱さ」の象徴ともなる。

    つまり「正しさ」とは、心強い武器にもなるが、取り扱いが難しいということ。というのも「誰かにとっての正しさ」という前提が背面に隠れているので「その社会の構成員の誰にとっても正しい」が成り立つまで関係者らと熟考と微調整を繰り返さないとならない。

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著者プロフィール

1961年、東京都生まれ。早稲田大学教育学部教育学科教育学専攻教育心理学専修卒業。早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了。早稲田大学大学院理工学研究科電気工学専攻電子通信工学専門分野博士後期課程単位取得満期退学。フェリス女学院大学文学部コミュニケーション学科教授。著書に『現代思想のコミュニケーション的転回』(筑摩書房)『世界をよくする現代思想入門』(ちくま新書)『難解な本を読む技術』『私のための現代思想』(以上、光文社新書)など。

「2022年 『哲学史はじめの一歩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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