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感想・レビュー・書評
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日本語の書き方に関する名著。オリジナルは1976年刊行。
日頃文章を書く際、無意識かつ感覚的に行っている(或いは十分には行えていない)ことが、キチンと整理されている。言われてみると確かにそうだな、とか、自分もそうしていることが多いけどここは甘いな、とか、意識して修正した方がいいな、などなと確認できたことが結構多かった。文章力の再点検になった。
著者によれば、語順の大原則は以下のとおり(特に重要なのは①と②)。
①節を先にし、句をあとにする。②長い修飾語は前に、短い修飾語は後に。③大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ。④親和度(なじみ)の強弱による配置転換(「 単語が直列的にかかってゆくときは親和度の強さに従うとして、並列的にかかるときは親和度が強いほど引き離す」)。これらのこと、(無意識にではあるが)一応やれているはず…。自分はカッコ書きを安易に多用してしまう方だが、あまり読みやすい文章じゃないんだろうな。もっと語順を工夫した方がいいのかも(反省)。
「思想の最小単位を示すもの」であるテン(読点)の打ち方については、「長い修飾語が二つ以上あるとき、その境界にテンをうつ」、「語順が逆順の場合にテンをうつ」を二大原則として挙げ、「重要でないテンはうつべきでない」、「構文上高次元のテン(文のテン)を生かすためには低次元のテン(節のテン)は除く方がよい」、並列列挙で「ナカテンが可能なときは、私はテンを避けることにしている」、などと説いている。ナカテンをもっと活用してもいいかもしれないな。
その他参考となったのは、「漢字とカナを併用するとわかりやすいのは、視覚としての言葉の「まとまり」が絵画化されるためなのだ」、「前後に漢字がつづけば「いま」とすべきだし、ひらがなが続けば「今」とすべきである」、「送りがなというものは、極論すれば各自の趣味の問題だと思う」などかな。
日本語における主語不在論に言及する中で、主語必須の英語について、「気象や時間の文章でitなどという形式上の主語を置くのも、全く主語の不必要な文章に対して強引に主語をひねり出さねばならぬ不合理な文法の言葉がもたらした苦肉の策にほかならない。「形式上のit」はイギリス語があげている悲鳴なのだ」と書いているのも面白かった。
電子ブックにはにっていないようだが、「実践 日本語の作文技術」も読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
流し読みでも良いので、一度は目を通してみて欲しい本。
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実用的な文章(詩や小説などではないという意味)を書く上での基本的なルールが丁寧に説明されているという印象だ。私は、紋切り型の表現(がっくり肩を落とすなど)を無意識に使っていることがあるので気をつけたい。また、文末の表現の繰り返しは避けるようにしたい。この2つを特に再認識させられた。
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時々読み返しています。私は接続詞を多様する傾向をどうにかしたくて手に取ったのが最初でした。あと、本多先生も書いていらっしゃいますが、文と文を簡単に繋いでしまう「が」の魔力は本当に怖いです。何となくツルリと読めてしまうのですが、よーく考えてみると「が」の前と後ろが論理的に繋がっていなかったりするのです!
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本書は9つの章から構成されていて、第七章までは文章をわかりにくくしている要素について説明している。
第七章までは以下のようなタイトルになっている。
第一章 なぜ作文の「技術」か
第二章 修飾する側とされる側
第三章 修飾の順序
第四章 句読点のうちかた
第五章 漢字とカナと心理
第六章 助詞の使い方
第七章 段落
各章は命名から想像できる通りの内容になっていて、具体例を交えながらの説明があり、大抵の分かりづらい例は共感できる。
第七章までは著者の批判的精神はたまに感じる程度だったが、第八章からは著者が無神経と感じる文章について感情を顕にして例を挙げて解説をしている。むしろここからが本番といってもいいだろう。
第八章の冒頭では、新聞の投書欄に書かれた文章を例に挙げて以下のような感想を一言目に提示している。
> 一言でいうと、これはヘドの出そうな文章の一例といえよう。...なぜか。あまりにも紋切型の表現で充満しているからである。手垢のついた、いやみったらしい表現。こまかく分析してみよう。(第八章 無神経な文章)
他にも、書き手がおもしろい文章だと思っていることが明に表れているような例を挙げて、落語家の演技と比較をしたりして批判をしている。
> 美しい景色は決して「美しい」とは叫んでいないのだ。その風景を筆者が美しいと感じた素材そのものを、読者もまた追体験できるように再現するのでなければならない。(第八章 無神経な文章)
第九章「リズムと文体」では、著者は高度な文章論と言いつつとくに多くの具体例を挙げて解説をしていて、文章のリズムが乱れることを「血が出る」という表現で書いている。
> 名文で知られるジャーナリストの文章を例にして、リズムを乱したらどんなに「血が出る」のかを見てみよう。(第九章 リズムと文体)
本書は日本語の文章を書く際の tips を知るための情報源としてはもちろん役に立つが、文章に対する感受性がとても強いであろう著者の抑えきれない感情からくる色々な文章への批判は、著者の感情の追体験をするだけの表現力をもっていて、二重に楽しめる内容となっている。 -
◎こころ:論文に独りよがりな美文は無用。分かりやすく書くことにするとしたら、この本が指針に。
○ツボ:「私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したのかと思った」をリライトすると?
☆問い:あなたが過去1週間に書いた、メール、リフレクション、レポートなどを再チェックすると、どれぐらい赤ペンが入れられる? -
文章の書き方が体系的に学ぶことができる。義務教育ではこの本で書かれている日本語の書き方の技術は教えてくれない。しかし、仕事を始めると、文章で相手に自分の主張や考えを伝える技術が必要とされる。インターネットが普及し、メールや提案書類、チャットなどを使い、文章で自分の考えを伝える機会が増えているからだ。この本は出版された当時よりも今のほうが必要とされると思う。おすすめである。
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点の打ち方についての記述が特に秀逸。時代を感じさせる内容もあるが、令和になっても生き残っている理由は、読めばわかる。
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悪い文章について、自分が気になっていた部分をバッサリと切り落としてくれた。
紋切り型、繰り返し型、、自分で書いてて吐き気を催す文章は、まさに悪文の典型例と知れた。ダメパターンから脱せられるように意識して書いていきたい。