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感想・レビュー・書評
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浅田彰対談部分のみ読む
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この現代日本批評というジャンルについては詳しくはないが、読んで21世紀の15年間が概観できる最良の案内書と感じた。佐々木敦氏の基調報告から始まって、平成批評の座談会、「はてなダイアリーの時代」と題したネット批評論壇の話と対談形式で、読みやすく内容濃くこの時代の思想史の流れが把握できる。
この本編ともいえる章の前には久々という感じの浅田彰ロングインタビューがあり、このジャンルの本として異例に売れたという背景にはこれがあったのでは?と思われる。一世を風靡したポストモダンの思想家の面々に、当時すでににっちもさっちも行かなくなったマルクス主義者の方向転換の匂いは感じてはいたのだが、このインタビューを読むと、浅田彰とはもはや信者と言っていいマルクス帰依者であり、ここまでマルクス濃度が高いのにはびっくりした。彼の80年代現代思想とは、マルクス経済学者としての「左翼ロマン」と臆面なく語る。政治と経済の実効的な解決案として「マルクス経済学」は全く生きられておらず、実効性から離れたところで反対・批判を繰りかえす左翼思想が一般から見捨てられていくのはやむを得まい。
個人的にもっと突っ込んで欲しかったのは、80年代にファッションとなったニューアカ(赤)浅田論説がファッショ的影響力を持って優れた芸術家を誹謗嘲笑したことの総括(怒)。今回読んでも単なる好き嫌いが先鋭化した攻撃(当時の影響力はスゴイものがあったので)以上のものが感じられない。ということで、浅田彰について、80年代のトリックスターとしてかなり批判的な自分の見方は変わらなかった。
それと、巻頭には、な、なんと「安倍をたたき切ってやる」の山口二郎の対談。これはどう見てもブラック・ジョークにしか見えない。例のシールズ安保闘争から鳥越都知事選など、編集長の東浩紀はかなり核心を突いた突っ込みをするのだが、二郎の話は中学県大会で敗退したした卓球部がマクドナルドで反省会してるレベルにしかみえないお答え(中学校の卓球部に失礼か)。柄谷行人とか國分功一郎とか政治と思想の対談が無理なら、こりゃせめて巻末がいいところ。この後の誌面がとても良質なだけに非常~に残念かつ不可解な巻頭だ。