日経サイエンス 2017年 06 月号 [雑誌]

  • 日本経済新聞出版社
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  • / ISBN・EAN: 4910071150671

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  • 特集は2題。宇宙誕生のインフレーション理論と、進化論の恐竜と鳥の関係。
    インフレーション理論は宇宙誕生直後に起きた現象として有力視されてきている。宇宙は誕生直後に急速に膨張したとするものだ。だがこの理論が本当に盤石なのか、疑問も生じてきている。インフレーション理論が提案された背景の1つとして、宇宙が一様かつ等方である(特別な場所、特別な方向がなく、大きなスケールで見ると、どこも同等である)こと、平坦であることがある。しかし、そもそも一様等方にインフレーションが起こるためには、インフレーション以前の宇宙が一様等方でなければならないとする見方がある。また、インフレーション理論は非常に柔軟で、さまざまな可能性を受容してしまい、定量的に確率を計算することができないという。ある意味、そうともいえるけれども、反論の余地も残ってしまうことになる。
    観測データからインフレーション理論で説明がつかない減少も出てきている。
    インフレーション理論の枠組みの中で最も合致するモデルを選ぶのか、新たな理論が提唱されてくるのか、先を楽しみにしておきたい(*結局のところ、このあたり、自分の理解不足で、「わかったら教えてください(^^;)」というしかないというかw)。

    恐竜から鳥類への進化。
    鳥類が実は恐竜から進化してきたというのは少し前から定説となってきている(cf:<A Href=" http://www.honzuki.jp/book/204470/review/96783/">『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』</A>)。この進化の過程がどのようなものであったかという点についても徐々に解明されてきている。恐竜から鳥への転換は瞬間的なものではなく、一瞬にしてティラノがニワトリになったわけでもない。長い長い時間の流れとともに、継ぎ目のない移行が起こってきたと考えるのが妥当であるという。
    例えば羽毛は鳥類発生よりずっと以前、祖先の恐竜類で生じていたようだ。おそらくは飛行のためではなく、体温維持のためであったと考えられる。
    羽毛だけでなく翼も実は別の目的のために発達したものかもしれないという仮説も提唱されている。その前に、少し「色」の話に触れる。恐竜の「色」については、昔から関心が寄せられさまざまな説が立てられてきたが、近年、色素を作るメラノソームと呼ばれる細胞小器官の構造が、どうやら色ごとに異なるらしいことがわかってきた。つまり、化石に色自体が残っていなくても、化石に残る細胞小器官の形から色が推測できるようになった北のだ。そこからわかってきたのは、どうやら翼を持つ恐竜が光沢のある黒や玉虫色、赤い差し色など、派手な色や模様でその身を飾っていたらしいことだ。これらの恐竜は飛ぶことはまだできなかった。となれば、こうした派手な色は力を表すためであり、翼も自らを大きく見せるなど、威嚇や自己顕示のためであったとも考えられる。あるいはそれは現在の鳥にも見られるような、求愛行動のためであったかもしれない(cf:<A Href=" http://www.honzuki.jp/book/224133/review/133131/">『極楽鳥 全種 世界でいちばん美しい鳥』</A>)。
    「翼が鳥をつくったのではない」とかつて寺山修司は謳ったが(「飛行機よ」)、もしかしたら翼も羽毛も偶然の所産であり、別の目的のために作られたそれらが、たまたま鳥を作り出してしまったのかもしれない。
    詩人のロマンとは異なるが、別の扉が開くような一大ロマンである。

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