LGBTを読みとく ──クィア・スタディーズ入門 (ちくま新書) [Kindle]
- 筑摩書房 (2017年3月10日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (186ページ)
感想・レビュー・書評
-
LGBTやクィアスタディーズに関する議論の前提となる知識について、歴史的な議論の変遷や社会運動とのつながりを踏まえながら、分かりやすく解説してくれる本。
LGBTなどのトピック自体に関心が薄かったとしても、差別や偏見との向き合い方、知識の重要性、「普通」が持つ問題とその相対化、など考え方の枠組みも参考になるものが多かった。
一方で簡潔さと引き換えに、事実と価値判断の区別が不明確であったり、自明ではないように思える二元的な対立軸が前提となっていたり、特定の価値判断から結論を先取りされているように見えたりする部分が少なくなく、しっかりと理解するには他の文献にも当たってみる必要がありそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
セクシアルマイノリティの基礎をやさしく解説。最低限知っておきたい知識を、それらの歴史も含めて辿っていく。本書の内容が(現在の学術的な水準に合わせて必要な論点をカバーしているという意味で)どのくらい信頼の置けるものかはわからないが、少なくとも僕自身には馴染みのない議論が多く、非常にためになった。
とくにジュディス・バトラーの[「パフォーマティブ」の議論が多少なりともわかった(気がする)のは収穫。「セックスは、つねにすでにジェンダーなのだ」と言われてもいまひとつピンとこなかったけど、そう説明されればなるほど、そうか、と。
著者も無知は罪と再三書いているとおり、こういう知識はしっかりと持っておかなくてはいけないと思うのだけど、その必要な知識を得る機会は生活・教育の中でどの程度あるものだろう。 -
貸出状況はこちらから確認してください↓
https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00277598 -
英語英文学科 相木裕史先生 推薦!
「LGBT」という言葉だけでは括りきれない、現代の多様な性のありようをきちんと理解するための優れた手引きとなる本です。 -
歴史や用語の説明が面白かった。
関連する他の書籍への案内もあり、好奇心を刺激される本だった。
繰り返される部分やまとめが多くて読み返すにはいいかもしれないけれど、読んでいる時の読み応えは少し薄かったかもしれない。 -
溢れる読書案内。
バトラー読まなきゃ!
読み返したい、教科書的な位置付け。
ただしカバーされていないセクシャルマイノリティの属性もいくつかあると思った。(アロマンティックやノンバイナリーなど) -
セクシュアル・マイノリティの入門書.この分野を学ぶ人の必読本.教科書としても使える本.
-
これまで人種に関する勉強を続けてきて、人種と性については不可分で深く結びついていること、これまで生きてきてぼんやりとしか知識を持っていない性についてしっかりと学びたいという思いから、まず手に取った一冊。
結論から言うと、初学者であり、ジェンダー/LGBTについて学び始めた自分のような人にとっては非常に良書だった。
「LGBT」と聞くと、「ああセクシュアルマイノリティの人たちの事だな」と容易に連想するが、一方でそれ以上考えたことがなかった。
「自らの性別をどのように捉えているか」と「どのような人を性欲求の対象にするか(あるいはしないか)」は全く別の問題であり、まずはここの理解から始まる。
また、そのようなセクシュアルマイノリティの人々が社会からどのように区分けされ、差別され、それでも対抗してきたか、時にはセクシュアルマイノリティ内での差別にも焦点を当てており、如何に私たちの社会が「普通」を押し付け、当事者の事を「分かった」気になっているのかについて、自分自身も内省しながら読み進めた。
そう、LGBTは正に「読みとく」必要があるほど複雑であり、単純化してはいけない。
ではLGBTはややこしいだけの学問なのか?と言われるとそうではない。
基盤にはクィアスタディーズというしっかりとした視座があり、LGBTを知るだけではなく新しい視点を身につけることができる。
読んで終わりではなくて、日常に触れる情報、子供や家族との関わりにおいてもこの視点を加えていこうと思えた。
また、本書の構成はこれから社会学や学問を始める上での大切なメッセージが多分に散りばめられており、構成の優れた1冊になっている。
ゼミや読書会はもちろんの事、たくさんの人に読まれることを願う。