映画と本の意外な関係!(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル) [Kindle]
- 集英社 (2017年1月17日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (176ページ)
感想・レビュー・書評
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町山さんの映画評論が好きなので、よく動画を観ています。
監督が映画で伝えたいことは、
映像における表現の仕掛けや、
監督自身の思想、宗教観、過去の経験などから紐解くことが出来る、というのを、
町山さんの解説で知ることができ、
それが、映画の楽しみをより倍増させるきっかけとなりました。
この本でも、
映画の原作となった本や、
映画内で引用される特徴的なメッセージから、
作品が伝えたいことを考察しています。
どの作品も町山節炸裂で、
町山さんの喋りが脳内で聞こえてくるよう。
ピックアップするセリフが絶妙だから、
観たことのない映画の評論なのに、映像が想像できます。
映画紹介のリズミカルな文の流れは、
町山さんの評論の特徴の1つでしょうね。
「メイド・オブ・オナー」の解説なんか、
ど下ネタやお下品ワード炸裂ですが、
他が黒人奴隷制度やユダヤ人虐殺、貧困といった
重たい国際問題を扱った映画の解説なので、
作品ごとに緩急がつけられていて、面白かったです。
特に、私が個人的に面白いと思ったのは、
「キャロル」の解説です。
原作者はハイスミスで、彼女自身が同性愛者であったといいます。
偶然出会った女性と恋に落ちるエピソードは彼女自身の体験が元となっていますが、
彼女の過去の作品、「かたつむり観察者」「見知らぬ乗客」も読み解いてみると、ハイスミスの同性愛者を描いた作品には、世間や時代背景によって抑圧されてしまった愛が
歪んだ形で表現されていることがわかります。
同性愛をテーマにした彼女の数多くの作品からは恐ろしいほどの執念を感じつつも、
小説という形で表現することで自身の孤独を癒していったのだろうか、と、切ない想いになりました。
原作者の人生、当時の世情や時代背景によって押し込められた思いが源流となり、1つの映画がつくられているのだと知ると、
もっと色んな本を読もう、
もっと色んな映画を見よう、
もっと色んな人の人生を知ろう、と思えるのです。
それが、映画って面白いな、と思える心の豊かさに繋がる。
改めて、映画の楽しみ方を教えてもらいました。詳細をみるコメント0件をすべて表示