- Amazon.co.jp ・電子書籍 (267ページ)
感想・レビュー・書評
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感情が意思決定においてどのように働くかを解説した行動経済学の本。人間の振る舞いをゲーム理論で説明した後、どうしてその特性を獲得したのか進化心理学で解き明かす。
行動経済学の本は、人がどのように振る舞うかを紹介する本が多いように思える。このように不合理な振る舞いをしてしまうのだ、と。対して本書は、一見すると不合理な振る舞いを人はなぜしてしまうのかに焦点を当てている。流行りの学問を素人にも分かりやすく、いい感じで統合してあるのが良い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
感情によるコミットメントや、ゲーム理論でよく言われる囚人のジレンマや信頼ゲームなど、いわゆる行動経済学としてよく扱われるジャンルに対して感情の面に着目して描かれた本。
また互いに感情的であるからこそ利己的で合理的な判断が行われずに、互いの利益を高める部分もあるというのはたしかにそうだと思った。
文化の相違が生む悲劇も、身近で起きる誤解や小さな諍いは同じような心理状況が産んでいるし、やはり俯瞰して背景的状況がその人の考えにどう影響してきたのかなど想像できる人たちが増えれば、そうした争いもまだ冷静になれるし、SNSでの醜い争いも起きないだろうなとも思う。 -
このジャンルの著作は「ファストアンドスロー」の著者、ダニエル・カーネマンを筆頭にユダヤ系の学者が多い気がする。
本書の著者もイスラエル国籍を有しているが、本書「信頼と寛大」の章でのイスラエル人・パレスチナ人・ドイツ人を対象とした信頼ゲームの実験や、知人の娘の失踪未遂(勘違い)、親族の第2次世界大戦中のエピソードなど、戦時下の国のひりついた日常が垣間見える。
本書で一番印象に残ったのもこの部分で、前述の信頼ゲームでは一度相手に抱いた悪感情はゲームを重ねるごとに解消するどころか逆に増幅していった。この実験結果は民族紛争解決・和平合意の難しさを如実に表しており、グローバル化と異文化交流の壁について考えさせられるものがあった。