新選組隊士吉村貫一郎をテーマにした、述懐形式の歴史小説。
吉村本人や関係者の一人称視点や手紙の内容、あるいは聞き手が様々な語り手に話を聞くことで、様々な角度から吉村貫一郎という男の姿が浮かび上がるようになっており、読み進めるのが小気味よい作品。
大変面白かったです。
◆様々な視点
元新選組隊士から見た吉村の印象も、語り手によって結構違う。
さらにその外、異なる身分の目から見てまた違う。
しかし、そうやって異なる吉村像を見ていくと、重なる部分があることも、明確にわかってくる。
複数人の述懐形式の物語をあまり読んだことがなく、新鮮な気持ちになりつつ、とても楽しめました。
そうして「わかってきた」後の、終盤の大野千秋編や佐助編が泣けるんですよね。
この構成力、さすがの素晴らしさですね。
◆Audibleとして
朗読担当は平川正三さん。
非常によい朗読だったなと。
吉村貫一郎があまりに完成されていて、ぶれつつ統一されている吉村像という、小説の持つ力を見事に引き出していた印象です。
それ以外だと、(キャラのせいもあるけど)沖田あたりが好きだったかな。
というかまず、(俳優等含め声優以外の職種の方と比べ)目の前のマイクに向かって話す、ということにかけて、声優の技術力ってやはりすごいんだなぁと再確認した次第です。
(感想を書いてない、ベテラン俳優が担当するAudible作品がかなり微妙だった……。それと比較するのも失礼な話なんですが)
今後読もうかなと思っている作品の中にも、平川さんが担当されている作品がありそうなので、また出会うこともあるかもしれませんが、またその時を楽しみにしています。
◆余談とか
三浦護衛時に、うっかり土方を殺しそうになる斎藤に思わず笑ってしまったw
斎藤編は本編もちょくちょくそうですが、ジョークもブラックで(本人がジョークで言っているかはともかく)、小気味よかったです。
本作は漫画版も出ているみたいだし、そっちも見てみようかな。