横浜駅SF 全国版 (カドカワBOOKS) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  •  前作『横浜駅SF』に続き、『〜全国版』もオーディオブックで(ついに定額制のaudibleに乗り換えてしまった)。前作の前日譚にあたる短編集。あの人じゃん!と気づく瞬間の喜びはスピンオフならでは。
     すっごく感動したとか、この人が大好きとか、この時代に行ってみたいとか、そういうことでもないのに、もうちょっとこの世界観に浸っていたいと感じてしまう不思議。まだはっきりしない謎(ユキエさんとかサマユンクルとか)が残っているから続編に期待という面もあるが、やはり湯葉さんの真面目なようなすっとぼけたような語りが好きなんだと思う。
     耳で聴いているだけなので、様々な用語や人物名の表記がわからないのだが、検索するとWeb小説サイトのカクヨムで元々この小説が発表されたときの版が今でも読めたので、時折そちらをチラ見しながら聴いた。『横浜駅SF』の方はコミック化もされているらしい。そっちもいっちゃおうかしら…なんかこう、手応えを得るところまで行きたい。ナレーション(陣谷遥さん)はとても良かった。ケイジンはうるさいし大隈さんはいい声。
     あとがきも好きでした。湯葉さん、人体の駅状化という稀有な病状を発症してしまったとのことだが、無理もなかろう。ニーチェも言ってることだと、ロバのベンジャミンも言ってるし。カフェテリアでラテのグランデを頼む話からあららららっと言う間にここまでなだれ込んでいく筆遣いがたまりません。

    ■瀬戸内・京都編
    二条ケイハ!東山くん!

    ■群馬編
    ケイハ父の若かりし頃。

    ■熊本編
    おおくまさん。ってトシルの上司か。

    ■岩手編
    コロポックル型アンドロイドたち。ユキエさんは結局何者なの?

    ■エキナカ都市案内
    東京とか忘れてたわ。

  • シリーズなのか2冊目、2巻ではないと思う、表紙のコイツが自動改札⁉全国の<横浜駅>と人間の歴史を描く短編集■『プロローグ』JR北日本の謀とは…『瀬戸内・京都編』キセル同盟とは…『群馬編』意味深な終焉、キトとは…『熊本編』JR福岡の状況は…『岩手編』JR北日本ふたたび、アンドロイド工作員たち『エキナカ都市案内』追加情報『あとがき』メタ的な…ベストかも■前日譚やら伏線貼りがいっぱいなスピンアウト。黒幕らしいユキエさんの謎は明かされず、実はJR東海の陰謀だったりしない?本編の続きを読みたいSF作品(2017年)

  • オーディブルは柞刈湯葉『横浜駅SF 全国版』を今朝から聞き始める。前作のスピンオフ的な本らしい。

    「瀬戸内・京都編」は二条ケイハとキセル同盟の京都時代の活動を、四国に渡るために瀬戸内海のとある島に立ち寄ったハイクンテレケにキセル同盟の生き残り・熊野シドウが語る。京都のスカイネットをほぼ手中におさめていたケイハはおそらく、亡き父が遺したノードに取り囲まれた「42番出口」のことを調べ始めたとたん、Suica不正認定の対象となり、キセル同盟は壊滅に追い込まれた。

    シドウの生まれ故郷の村を支配していた住人は、ミリエン(実態をもたないデジタル通貨)の採掘機械をひそかに独占所有していて、ミリエンを供給することで村の住人を飼い慣らしていた。

    「横浜駅で人口が増えるたびに、Suikaの導入でネットに五〇万ミリエンが徴収されるでしょ。でもそれを繰り返すとエキナカで流通するミリエンがいつか枯渇する。変だと思ったことはない?」
    「それはね。減った分のミリエンを採掘して、流通上に戻す機械があるからなの。(後略)」
    「違うわ。そもそもミリエンにそういう物理的実態はないから。Suikaのミリエンはつまり、取引の履歴をすべてスカイネットに流通させることで、どのSuikaにどれほどの残高があるかを規定してるの。それの技術的背景にいくつかの暗号化システムが絡んでいて、ある種の計算の困難さがその暗号システムを保証している。だからミリエンを発生させるのに特殊な機械が必要になるんだよ。私はそれを発掘機械って呼んでるわ。見たことは無いけど。だからその人たちは一方的にお金を供給できて、それで下の人たちに命令できるのね」

    ビットコインとそれを支える分散型取引台帳システムであるブロックチェーンそのものだ。マイニングマシンを(域内で排他的に)独占していれば、たしかに打ち出の小槌のようにゼロから価値を生むことができる。

    「ユキエさんは、ボクたちがエキナカで団結して謀反を起こすのを恐れてるのかな?」と口にした東北担当の工作員サマユンクルのその後が気になる。

    「でも本社に反抗するんだったら、たしかにテレケの力は借りたいなあ。いちばん戦力になるし」
    「つまり私のボディが目当てなわけ」

    ハイクンテレケが無意識に口にしたこのギャグが(またしても走りながらニヤニヤしてしまった)、たぶん、なにかの伏線になってる。

    オーディブルは柞刈湯葉『横浜駅SF 全国版』の続き。

    「群馬編」は二条ケイハの父ニジョー・ケイジンと青目先生ことエディ・シマザキが群馬県の浅間山の噴火に遭遇したときの話。

    オーディブルは柞刈湯葉『横浜駅SF 全国版』の続き。

    青目先生のもとに居候することになったSuicaをもたない少女キト。噴火前の山の南側の駅孔で出会った言葉を話せない少女らしく見えるのだが、噴火後の駅孔には、少女のものらしき人骨が残されていた。ならば、キトは誰?

    「熊本編」はJR福岡の技術部門化学班の新入社員・島原ミイカが、宿舎棟で起きた横井教官殺人事件を調べるプロセスで、情報部門の大隈隼光と出会う。犯人は、横井に恨みをもつ化学班の先輩・黒木だという。

    オーディブルは柞刈湯葉『横浜駅SF 全国版』が今朝でおしまい。

    「岩手編」はJR北日本で最も優秀な工作員サマユンクルがみずからの目的に目覚めて職務(人間から与えられた目的)を放棄する話。その目的とは、生命と同じく、生存すること。ユキエさんが何者なのかは最後まで語られなかった。

  • 「横浜駅SF」のスピンオフも面白かったです。
    各地のエピソードもそれぞれ楽しくしんみりとし、熊本の殺人事件にふふっとなりました。
    本編の頃から、ユキエさんとは…と思っていましたが、最終話でユキエさんの野望が垣間見えて慄きました。横浜駅乗っ取りとは…。。
    本編もこちらも、描かれている事以外の事や、その後の事が気になって世界が広がります。楽しかったです。
    あとがきも好きでした。

  • 先日読んだ横浜駅SFのスピンオフである。
    短編集。
    いやあやっぱり面白いなあ。
    ワケわからんけど。
    やたらとややこしい文章で荒唐無稽なことが書かれているので脳が楽しくなってくる感じ。
    本編は色々謎だらけでかなり何も解決しないで終わったので、その一部がこうやってクローズアップされて読めるのはよい。
    まだまだ色々謎が残ってるので、もっと書いて欲しいわ。

  • 地元横浜駅がSFになった⁉︎しかし横浜駅が全国に増殖している作中では地元感全くナシ!残念!
    前作の伏線のいくつかが回収されたけれどもまだまだ残っているので続編に期待だ!
    あとがきも面白いよー

  • 前作『横浜駅SF』が横浜駅の歴史年表の最後の2,3行を記した話だとしたら、この全国版は年表の後半部分を補完した話になるだろう。登場する地域も北海道から九州まで幅広く、前作でもっと掘り下げて欲しいと感じた部分が網羅されている。

    また"キセル同盟"や"サマユンクル"など、名前は挙がっていたが前作ではあまり触れなかったキャラや団体にも焦点が当てられている。

  • 横浜駅SF 全国版 (カドカワBOOKS) [Kindle] 「横浜駅」の世界観がしっかりしているためか、周辺のストーリーも面白い。続編が期待される。

  • 横浜駅SFをベースに、奥行きを描写。

  • 「横浜駅が滅亡に向かう後日譚」を期待したが、ただの外伝であった。すべての話が、横浜駅キャンセラーが発動する前の話であった。

    思えば、横浜駅SFの最後はあっさりしていたなと思うし、その後がかなり気になる。あと、有史以来の人間の文明を退廃させてしまった冬戦争がどのようなものだったのかも、説明がいるのではないか?

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著者プロフィール

2016年、小説投稿サイト「カクヨム」に投稿した『横浜駅SF』が第1回カクヨムWeb小説コンテストSF部門大賞を受賞し、デビュー。著書に『重力アルケミック』『未来職安』『人間たちの話』『まず牛を球とします。』他。

「2022年 『SF作家の地球旅行記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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