ツナグ(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「どうしますか、正式に依頼しますか」
    「お願いします」
    ファンの一人として依頼者のなかに名前を連ねられるなら、それはそれで本望のような気がした。(第一章「アイドルの心得」より)

    平瀬愛美さんの気持ちは、とってもよくわかる。ファンならば、有象無象の1人だけれども、確実にステータスを数段上がれることに命を賭けられる。

    設定(省略)を読む限りでは、私にも「依頼したい人」は、少なくとも7人いる。もっと絞れ、と言われたらやはり4人だろうか。もっと絞れ、と言われたら1人に絞られるかも知れないけど、意味がないと思う。そもそも私が選ばれるはずがない、と最初から諦めている。亡くなった一年は毎日夢に出てきてくれないか、と願っていたし、いまは普通にさりげなく夢に登場してくれることで普通に満足していて、全然切実さがないからだ。

    たとえ、雲の上のアイドルであろうと、母親であろうと、友人であろうと、失踪した恋人であろうと、あの人たちの切実な願いが、こんな奇跡のような再会に導かれる。

    息抜きに読み始めたら置くこと叶わなかった。泣かされた。脳内はツナグの歩美くんは松阪桃李になっている。彼が高校生役なんて、新鮮。おばあちゃんは樹木希林だったんだね。有り触れたストーリーだと思い、観るのを避けてきたけど、見ておこうかな。辻村深月2冊目。実は読み終わって作者名に気がついた。行間を開ける(わざと描写しない)ことと、伏線回収も丁寧に行う。さすが人気作家だな、と思った。

    • 土瓶さん
      これと「黄泉がえり」がいつも混同する。
      どっちも読んで、観て、いないんですがね。
      これと「黄泉がえり」がいつも混同する。
      どっちも読んで、観て、いないんですがね。
      2023/12/25
    • kuma0504さん
      みんみんさん、土瓶さん、
      「黄泉がえり」「いま、会いにゆきます」「コーヒーが冷めないうちに」と、足がついて顔が元のままという幽霊とも違うよみ...
      みんみんさん、土瓶さん、
      「黄泉がえり」「いま、会いにゆきます」「コーヒーが冷めないうちに」と、足がついて顔が元のままという幽霊とも違うよみがえり作品はたくさんあって、「ツナグ」の映画化の時にはなんかスルーしてしまったんですよね。でも「コーヒー‥‥」は観ました。有村架純ちゃんが出るから。そしたら、やはりもういいかな、という気になって‥‥。

      でも確かに、樹木希林の未見作品はあと三作しかない。観ておくのもいいかな。
      2023/12/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん
      > 電子書籍だとそういうこともあるんです。
      そうとは知らず失礼しました。。。

      辻村深月×松坂桃李 対談 「ご...
      kuma0504さん
      > 電子書籍だとそういうこともあるんです。
      そうとは知らず失礼しました。。。

      辻村深月×松坂桃李 対談 「ご縁」が繋ぐ、出会いと想い | 対談・鼎談 | Book Bang -ブックバン-
      https://www.bookbang.jp/review/article/590674?all=1

      2023/12/26
  • 短編集なので小説が苦手な人でも読みやすい。想い人の心得もオススメ。

  • いくつかの短編に別れているので隙間時間で読むことができました!
    死者にあった時の会話、その後の話に感動で泣きました。
    泣ける話が読みたいっていう人におすすめです。

  • ページをめくる手が止まらないぐらい面白かった小説です。

    5つの短編集が入っていて、一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれる『使者(ツナグ)』が、それぞれの登場人物と死者を会わせるお話でした。

    その中でも、特に心にグサッときた短編は親友に会いたい女子高生のお話。
    元々はすごく仲が良かったのに、お互いに後悔していることやすれ違いがあって、もやもやしました。

    私も後から後悔するような行動はしない、って思うけど、その時の感情とか状況によっては、つい怒りをぶつけてしまったり、本心ではないことを言ってしまったりすることがあるので、思わず心を刺されたような気がしてしまいました。

    もし使者が実在するならば、自分なら誰に会いたいかな?と考えながら読みましたが、決めるのってなかなか難しいですね。
    登場人物たちが「この人に会いたい!」って言えるのは、すごいことだと思いました。

    読み終えるのが惜しい本ですが、他の辻村さんの作品もぜひ読んでみたいと思いました。

  • 前半は依頼を受けた『使者(ツナグ)』が依頼者と死者のコンタクトを行う話が依頼者の視点で描かれ、正直に言ってちょっと消化不良気味だった。後半ではツナグが前任者(祖母)からその役割を継承する過程で行われたそれらのコンタクトがツナグ側からの視点で描かれる。ツナグと依頼者の表裏が合わさることで途端に面白さが増し、そこからは一気に読み終えた。続編が俄然楽しみになった。

  • なんとなく、死者に会って希望をもらって再出発!みたいなお涙頂戴ものかと思い、購入以来積みっぱなしにしていたけど、そんなこともなかった。
    亀裂が決定的になり、御園の影を背負いながら前に進むことになった嵐の話が1番印象的。結果としては前に進み始めた訳なので、考えさせられるし、作者的にも一つの形としてこの話を入れることは重要だったんじゃなかろうか。

  • 読んだ後で知ったが、映画化されていた
    とのこと。
    現世の人が、亡くなった人と僅かだけど
    想いを伝える手伝いをするのがツナグの
    役目。
    ファンタジー要素のある作品は、「珈琲
    が冷めないうちに」のような感じだった
    病死した母親に想いを伝える長男、失踪
    した恋人の真実を知ってしまう男の話は
    良かった。
    続編に期待。

  • 死者の存在、記憶、言葉が自分たち生者の心を良くも悪くも影響を与えていくものだと感じた。

    よくあることだが、自分の思っていることは相手が感じていることと相違があって自分の中で理解したとその瞬間だけは腑に落ちていても、後から取り返しのつかない後悔をすることもあるんだ。と改めて感じれた。自分の視野は思い詰めれば詰めるほど狭まり自分勝手になってしまう。そんなことも感じた。

  • 2011年第32回吉川英治文学新人賞受賞。
    【アイドルの心得】
    平瀬愛美は、使者と会わせてくれる使者(ツナグ)の存在を知り、都市伝説のようなものかと半信半疑ながら、急性心不全で突然死した売れっ子マルチタレントの水城サヲリに会いたいと依頼します。彼女は国立大学教授の父と見栄っ張りで専業主婦の母、優秀な兄のいる家庭で育ち、大学卒業後は理想的なエリート男性と結婚して海外赴任について行っていることになっていて帰省もままならない状態でした。仕事仲間にも「何を考えているかわからない」と嫌煙され、仕方なく参加した飲み会では過呼吸で倒れてしまいます。そんな時、行きすがりの水城サヲリに助けられ、そのことをきっかけにサヲリの大ファンになり、大量のプレゼントや手紙を送ります。サヲリはプレゼントの一つ一つを全て覚えていた上、この面会の後で愛美が死ぬつもりなのを察知して面会し、生きるよう励まします。

    【長男の心得】
    畠田靖彦は、高校三年の秋に工務店を経営していた父を亡くし、弟の久仁彦を東京の大学に進学させつつ、自分は跡を継いで働きます。今では、地元の私立大学3年生のおとなしい息子太一と、妻祥子との3人暮らしです。母の三回忌では、地元の役所勤務の弟夫婦、東京の名門大学に進学した甥の裕紀と成績優秀な姪美奈と会いますが、いつもながらの横柄な態度で煙たがられてしまいます。実はいろいろと気に病むことのある靖彦は、母から教わった使者と連絡を取り、当の母と再会します。そこで、母が自分を愛し認めてくれていたこと、19年前に孫の太一を連れて急死した父に会って、二人で跡継ぎの初孫の誕生を涙を流して喜んでいたことを知ります。

    【親友の心得】
    少しわがままな嵐美砂は、高校に入って御園奈津と出会い、初めて親友を得ます。美人で一年生の頃から主演を務める嵐と、いつも嵐を立てて裏方に回っていた御園ですが、2年生になって、御園の人望に嫉妬する出来事があったり、嵐の憧れの役をオーディションで御園が射止めたりしたことから、二人の関係がぎくしゃくしてしまいます。ある冬の下校時、御園さえいなければ自分が主役だったと思い詰めた嵐は、通学路の急坂が翌朝に凍るよう細工をします。その願い通り、御園は翌朝に自転車ごと勢いよく滑り落ち、下の道で車と衝突して亡くなります。自分の悪事に苛まれる嵐ですが、ツナグに会い、それが同じ高校で御園の憧れの男子だったことに驚愕します。再会した御園に何も謝罪できないまま別れの時間が来ますが、後に、御園が全てを知っていたことを知り、嵐は半乱狂になって後悔することになります。

    【待ち人の心得】
    土谷功一は、過労で運ばれた病院である老婆と出会い、使者の存在を知ります。土谷には、2年の交際後にプロポーズし、その直後に失踪した婚約者の日向キラリがいます。7年間忘れられず、ずっと同じアパートに住み続けますが、亡くなっているかもしれないと意を決して依頼します。キラリも、会うことで自分の死を知らせることになり、忘れられることへの恐怖も感じつつ、土谷の幸せを願って会うことを決意します。本名鍬本輝子は、熊本の離島から家出してきており、土谷との結婚を告げに2年ぶりに帰省する途中で水難事故に遭い命を落としました。土谷はその事実に愕然としつつも、幸せだった時間を思い、彼女の両親に挨拶に行くことにします。

    【使者の心得】
    渋谷歩美は、幼い頃に両親を亡くし、親戚の家で育てられます。駆け落ち同然で結婚した両親でしたが、父は母を殺した後で自殺したらしいという噂があります。17歳になった歩美は、祖母アイ子に使者(ツナグ)の存在を知らされ、後継者に指名されます。一回目の依頼人愛美と畠田、2回目の同級生嵐、3回目土谷との交渉(偶然にも愛美と再会します)を通じて、歩美は使者としての約束事を学んでいきます。死者を呼び出すには鏡を使うこと、使者以外の人が覗いてしまった場合には使者共々命を落としてしまうこと、等、数多くの決まり事を学ぶ中で、歩美は様々なことに気づいていきます。長く続く占い師の当主で大伯父の秋山定之は、厳格で長く商業高校の校長を務めた祖父と結婚した妹を心配して、実家が妹を大切に扱うよう関係維持の意味も込めて使者の仕事を譲ります。その息子で長男の亮は、国立大学を中退しデザインの専門学校に入り直した挙句、許嫁を拒否して香澄と授かり婚をしたため、父の逆鱗に触れ勘当同然となります。そんな亮を心配して母のアイ子は使者の力を譲りますが、脳梗塞で亡くなった父を思い落ち込んだ亮を心配して、亮とその父を会わせようと鏡を覗き込んだ香澄共々命を落としてしまいます。歩美は両親の死がお互いを思いやってのことだったことに気づき、一層使者の仕事への使命感を感じます。

  • 心洗われる一冊。
    実在して欲しいと強く願う一方で、会わない方がいいのかもしれない・・・

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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