興亡の世界史 東インド会社とアジアの海 (講談社学術文庫) [Kindle]

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  • 日経
    東インド会社のはじめなど

  • 本書は東インド会社の興亡という切り口で17世紀から18世紀の世界を記述しています。特定の地域の歴史を時系列に見ていくのではなく、東インド会社というレンズを通して各地域の関係を見ていくという試みです。

    東インド会社に先立って、十六世紀にヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を開拓して交易を始めるところから始まります。ヴァスコ・ダ・ガマが暴力的な手段を当たり前のように使っていたことや、当時のポルトガルが貧しくインドが豊かであったことなどが、当時のインド海域の文化を踏まえながら紹介されていきます。十六世紀の終わりには、ポルトガルによるインド航路はヨーロッパでよく知られるようになり、オランダとイギリスが東インド会社を設立します。しかし会社としての性格は、軍事力の有無や資本の集め方など大きく異なっていました。また、当時ヨーロッパでは国民国家の概念が形成され始めていた一方で、インド洋海域の王権は外(ヨーロッパ)からきた人々を特に区別せず扱っており、このような国家や統治に関する考え方の違いが東インド会社という組織の在り方にも影響を与えていきます。

    日本についての記述も結構あリマス。十六世紀のイエズス会による布教活動やじゃがたらお春など東インド会社と関わりのあった日本人についても紙面が割かれており、当時の人々の生活について知ることができます。また、貿易の対象となった胡椒など香辛料、茶、織物や貴金属がヨーロッパと日本を含むアジアでどのように売買されていたかもわかります。

    十七世紀から十八世紀という時期はフランス革命やアメリカ新大陸の発見など大きな出来事がありますが、間接的に東インド会社によるインド洋海域での貿易活動と繋がっていることにも触れられており、この頃からグローバル化が始まっていたんだなと思いました。

  • そもそも東インド会社がいくつもあることを知らなかったため、本書の内容のほとんどが驚きに満ちていた。15世紀から16世紀の間、日本に最初に関わりはじめ、鉄砲の伝来もポルトガル人からだったのに、いつの間にかオランダとの取引が主となったのがよくわかっていなかったのだが、本書でその謎が氷解した。
    また、オランダが国や地域によって態度を変えていたことに驚く。鎖国の中、出島に押し込められていたオランダ人というイメージだったので、ほかの地域ではブイブイ言わせていたとは知らなかった。利益のためなら多少の屈辱は甘んじて受けるその姿勢、さすが世界の海上貿易の覇権を一度は掴んだ国だ。

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著者プロフィール

1953年生まれ。東京大学名誉教授。専門は世界史。現在は東京大学東京カレッジ長を務める。従来のヨーロッパを中心とした世界史像からの脱却をめざし、国民国家やヨーロッパ対アジアという構図にとらわれない新しい世界史=「グローバル・ヒストリー」の方法による世界史理解を提唱し、各国の歴史学者との共同研究にとりくんでいる。著書に『新しい世界史へ』(岩波新書、2011年)、『輪切りで見える!パノラマ世界史』1~5(大月書店、2016年)、『グローバル化と世界史』(東京大学出版会、2018年)など多数。

「2022年 『角川まんが学習シリーズ 世界の歴史 全20巻+別巻1冊定番セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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