ジゼルの叫び [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 雛倉さりえさんの作品を拝読するのは『ジェリー・フィッシュ』に続いて2作目。前作がわりと恋愛要素が強めだったのに対し、今作はバレエという芸術に身を捧げる少女達のお話でした。でも根底にあるのはやはり、死への欲求や破壊願望、退廃美といった耽美な世界観かなと思います。
    とにかく文章が美しいです。『ジェリー・フィッシュ』を拝読した時も感じたけど、とにかく文章が色彩に溢れていて、一文一文にこだわりが感じられて、あぁ小説ってこんなふうに感覚で楽しむものだった…と思い出させてくれる美しさです。最近、ミステリーをよく読むのでハラハラドキドキ感を求めてしまいがちだったけど、久しぶりにゆっくりと味わって読書できました。

    ストーリーとしては、澄乃という天才的バレリーナの女子高生を巡る連作短編集です。一作目のお話は、澄乃の双子の姉視点から描かれたお話で、正直こちらは美しい世界観だけど何を伝えたかったのかがわかりにくいかな…という感想でした。でも、二作目、三作目と読みすすめるうち、バレエに傾ける情熱の烈しさ、危なさが他の主人公を通して伝わってきて、あらためて一作目を読み返すと、双子の姉というよりは澄乃を描いているのかもしれない、この連作短編集全体がいろんな視点で澄乃を(バレエしかない少女の苦しみと悦びを)語っているのかも(対比的に、澄乃のようには生きられない少女達の生き様も)…と思いながら読んでいたら、最後は澄乃視点になりました。
    私はバレエをしたことがないし、自分が芸術的才能に恵まれているとも思えないので澄乃のように道を極めているようにみえる人をうらやましく思うけど(澄乃以外の主人公達のように)、澄乃は澄乃で理想とする境地があって、その境地に達しようとする危なさが、なんていうかやはり美しかったです。繰り返し出てくる「みずうみ」の存在とそれにまつわるエピソードもせつなくて、あの幕間は短いながら最も深い部分が詰め込まれているように思いました。
    バレエの描写や舞台上で達した境地は、気迫ある反面、やや難しい箇所もありましたが、読後「こんな世界があるんだなぁ…」と圧倒された気持ちになりました。

    個人的には形郎が好きです。彼と佐波の関係性がなんともいえずもの悲しいけれど人間臭さが出ていて、印象に残りました。

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