タイトルに魅かれて手に取りました。
158回芥川賞候補作で、映画化もされていたようですね。
月光荘の大家である高齢女性の雪子さん。
そこへ入居した大学生の薫(男性)。
雪子さんと同居していた息子が突然亡くなってしまい、その寂しさを埋めるかのように、薫や、同じ入居者の一人小野寺さんを食事に誘うようになる。
断り切れない薫が雪子さん宅での食事会に訪れたことをきっかけに、雪子さんは執拗とも思えるほど、食事に誘うようになる。
お小遣いまで渡すようになり、雪子さんとの距離が近くなりすぎ、過干渉になっていることを疎ましく思いながらも、お小遣いほしさ、また食事をご馳走になれる、という好都合もあるため、雪子さんのペースに呑まれ、ズルズルと引き込まれていきます。
雪子さんの家の居間を『サロン』と名付けているけれど、決して薫にとっては明るい社交場という感じではなく、何だかじめッとした気味悪さも感じます。
振り回されている薫は気づけば、好きだった人も友人も失ってしまっているのです。
この本の感想を説明するのは、なかなか難しいと感じました。
雪子さんの孤独の根深さが印象に残ります。