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- / ISBN・EAN: 4988105073814
感想・レビュー・書評
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平日昼下がり、窓を開けていると、心地よい風が身体をくすぐる。
信号が赤に変わったのか、青の終わりなのか、ふ、と外を走る車の音が止む瞬間がある。
その時、この部屋からセックスの声が溢れ出しているのではないか、という不安がよぎる。
音量調節、大事。
松坂桃李のセックスがエロい。
先日「ユリゴコロ」を観て、あまり間を空けずに観たまほかる作品。
そしてまた独特なタイトル「彼女がその名を知らない鳥たち」、某アニメ風に言うなれば「その鳥」みたいな感じにしたくなる。
憎しみ、嫉妬、不満、不安、洗脳、性欲…
ホラー要素はなく、人間が抱えるネガティブな感情にぐぐぐっとフォーカスし、闇を描くことで光を感じさせるような、心理描写系の作品です。
誰といても孤独で、全てが嫌で、でも誰かにわかってほしくて認めてほしくて、感情をぶつけまくる蒼井優。
全力で彼女を受け止め、それゆえに、時にその感情が暴走してしまう不潔な男を阿部サダヲ。
狂気じみていた「ユリゴコロ」とはまた違った、巧妙な嘘で女性を弄ぶ、見かけは紳士な松坂桃李。
典型的なダメンズを竹之内豊。
名役者揃い、安心して最後まで自分の感情の蓋をぶっ壊したまま観ることができた。
心のどこかに、ずっと残ってるダメな元彼っている。そんなダメな元彼ほど忘れられなかったり、別れてもうだうだつながっちゃってたり。
近くにどっぷり甘えられる人がいるのに、どうしてわざわざ危うい方へいっちゃうんだろうね。そういう人に、心の隙間にそっと入られると、中毒のようにはまってしまって、狂わされる。そいつが見ているのは、こっちのようでいて、こっちじゃない。
作品の中で、阿部サダヲは観ているこちらが苦しくなるほど、蒼井優に罵倒される。それなのに「俺しか幸せにしてやれない」と、蒼井優を決して手放さない。なぜ。どうして。最後、それがわかる。わかった時には、とっくにわたしの感情の蓋はどこかへ行っていて、走る阿部サダヲと一緒に、わんわん泣いていた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017年公開作品。ちょっと前に原作を読みました。私は読んだ本が映像化されると必ず作品を観ます。自分の頭で描いた原作の世界がどのように表現されているのか確認してみたいからです。この作品は脚本の方が原作の主要な部分を残してくれていると感じます。キャスティングが上手くハマっています。黒崎役の竹野内豊さん、自分の私利私欲のために女を利用することをなんとも思っていない下衆な男を登場時間は少ないですが、演じてられます。水島役の松坂桃李さん、性欲のはけ口にだけ十和子を利用する中身のない薄っぺらな男を演じています。そんな男たちに利用されても引きづられる十和子を蒼井優さんが演じます。彼らの前では可愛い女、笑顔を見せる彼女が陣治に対しては眉間に皺を寄せて罵倒する。そんな扱いを受けても、ひたすら十和子に尽くす陣治を演じる阿部サダヲさんの下品で卑屈で、多分誰にも好感を持たれないだろう男。原作同様で観ていて辛くはなります。結果的にはハッピーエンドと言ってもいいのかなあ。主役の大阪弁に少しばかり違和感を感じた部分はありましたが、楽しめました。ムロツヨシさんと吉高由里子さん主役と言うのも面白いかなと個人的には思いました。蛇足ですが、おいでやす小田さんが、チョイ役で出ていたのに笑いました。
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生きとってくれ、十和子
小汚い男・陣冶(阿部サダヲ)に養われながら複数の男性と関係を持つ十和子(蒼井優)
男運の無い十和子の人生に光を与えた陣冶が何を思って生きていたかをよーく考えさせられる作品。
愛と死は非常に近い場所にいて、どちらも人間の意思の範疇では無い。ラストをどうこう語るようにキャッチコピーが仕向けているが、この手の映画はラストはどっちでもいい。そこに行き着く思いに共感できるかどうかだと思う。
大切な人を守るとは、愛するとは、自分の一生をかけても分からずに死んでいく中で、陣冶にはその答えが見えていたように思える -
名も知らない鳥だったけど、青い鳥だったんだな
そう思わされたラストでした -
女性は愛するよりも愛される方が幸せ・・・なのかな?
蒼井優と阿部サダヲの演技力。 -
旦那さんの献身的な愛は何事にも変え難いもの。
しかし、罪は償うべき。
俳優さん達の演技の素晴らしさに魅入る作品でした。 -
阿部サダヲがシリアスな演技をしているのを初めて見た気がする。いつもテンション高めの人柄の良い役柄ばかりで、コミカルさが抜けた狂気ばしった演技も迫力があって新鮮だなと思いながら見ていたら、けっきょく善人っぽく落ち着いてがっかりした。
とはいえ蒼井優、阿部サダヲ、竹野内豊、松坂桃李、それぞれにダメっぷり演技の個性が際立っていてとても良かった。
(さらに)とはいえ、このストーリーは何なの?倒錯しまくっている。本作が終始描いている命題は、「人は誰かに服従せずには生きられない。自由なんて、ない」、だ。さしずめ、SMファンタジー。
阿部サダヲ演じる陣治の独りよがりで本作は結末を迎えるのだが、その独りよがりによってトワ子があたかも救われるかのような仄めかしさえある。
あげく、トワ子は、陣治が唯一の恋人とか言い出して、ちょっと待てよと笑ってしまった。
ここは、トワ子が陣治のあいかわらずの独りよがりの死を、鼻で笑うところだろう、と。
感動に媚を売ったばかりに、せっかくのリアリティをも売ってしまった作品だと思った。