- Amazon.co.jp ・電子書籍 (396ページ)
感想・レビュー・書評
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重かったです。
読んでいて何度も胸が詰まって苦しかったです。
生活保護の何たるかを突きつけられました。
ニュースで知るのは不正受給など負の部分ばかりで、どうしても悪いイメージが先行しているような気がしてなりません。
そのせいで余計に生活保護を敬遠してしまう人も出てくるのだろう……と思うとやり切れません。
ゆっくり進んでいた中盤までと違い、ラストへ向かう終盤はスピード感があり一気に読み終わりました。
どんなに嫌なことがあろうとも、ちゃんと仕事があり、働けて、お金を稼げることのありがたさを改めて考えさせられた作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あまり縁の無い生活保護にフォーカスした話なので興味深く読み進めたけど、話は理不尽な現実を炙り出しながらの犯人探しが地味目に展開する。護るに値しない者が護られて、真に護られなければならない者を見捨てている不条理な事実を問題提起しつつの話には胸が痛む。実態は職員皆さんが懸命に取り組んで居られるとは思いますけど、しかしながら小説の世界では終盤に来て犯人間違いなしの筈の人間が実は!のエンディング に星ひとつ進呈 でしょう♪
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途中から犯人がわかってしまったので、終盤は答え合わせになってしまったが、生活保護受給を題材にした社会問題を真っ向から取り上げた本書は考えさせられた。
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ネタバレとなるのでストーリーや結末についてはコメントしないが、本作のテーマの重さには衝撃を受けた。生活保護制度の矛盾については度々マスコミでも取り上げられているが、コロナ禍における困窮者に対する諸々の支援制度にも共通する「護られなかった者たち」という現実に思いを馳せた。また、自分の護るべきものを必死に護っている人達の存在にも改めて気付かされた。単なるミステリーに留まらぬ名作と言えるのではないだろうか。
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中山七里さん。初めて読破。
最後までぐぐーっと引き込まれたのは私が公務員だから、というのもあるのかも。
悪い噂がひとつも聞こえてこない人達が連続殺人に巻き込まれる。
犯人はだれなのか。
表面的に日常が戻ったかのように見える東北の町。
垣間見えてくる社会の闇。
映画化、かなり楽しみな作品です。 -
阿部ちゃんと佐藤健くんの映画トレーラーを見て俄然興味が湧いたので原書を読んでみることにした。だって、映画公開日になってもコロナで足を運ぶのはためらわれそうだから。
読みやすい文章で刑事は阿部ちゃん、容疑者は健くんのイメージでどんどんページが進んでいった。が、予想を裏切り(!)やられたのは倍賞さんだ。私の脳内では倍賞さんが<けい>として存分に呼吸して生きていた。「受けた恩は別の人に返しな」
これ、今年のアカデミー助演女優賞、いくんじゃないかな。
====データベース===
号泣必至!
佐藤健、阿部寛出演!
10月1日映画公開予定の「骨太社会派ヒューマン・ミステリー」ついに文庫化です。
誰もが口を揃えて「人格者」だと言う、仙台市の福祉保険事務所課長・三雲忠勝が、身体を拘束された餓死死体で発見された。
怨恨が理由とは考えにくく、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。
しかし事件の数日前に、一人の模範囚が出所しており、男は過去に起きたある出来事の関係者を追っているらしい。そして第二の被害者が発見され――。
社会福祉と人々の正義が交差したときに、あなたの脳裏に浮かぶ人物は誰か。
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この通りの内容で、<どんでん返しの帝王>の異名を放つ中山七里さんらしい最後もまっている。
私は実際に襖に残されたけいの言葉を読んだ瞬間涙がわーっとあふれてきたし、映画ではきっと桑田さんの曲がながれてさらに感動を誘うのもじゅうぶん予想できるし、ぜひそうであってほしい。
ただ、ちょっと思ったことがある。
この本を手に取る人はだいたいが生活保護に興味があったり、なかには生活保護なんてまったく知らない=無縁の人たちだろう。そういう人に、生活保護の現場はこの本のとおりだと鵜呑みにしてほしくは、ない。そういう声は生活保護の実際の現場からも出ている。
物語上仕方ないのかもしれないが、あまりにも極端な生活保護申請却下の話しか出ていないという印象を私はもった。
そう思ったのは私だけじゃなく、いろんな人の感想を見ると「生活保護に関することが新聞記事の扇情的な釣りタイトルのレベル」とか「生活保護行政の現場を、中途半端な聞きかじりで書いている」、中には「扶養照会をして20年以上、連絡がない弟の扶養の連絡や結果がわからないから生活保護却下とかありえない」「銀行口座の照会で、銀行が何ヶ月も返事をしないとか、有り得ない」「ベンツに乗っているヤクザの家に職員一人で辞退届けを書いてもらいにいくとか絶対に有り得ない」という証言(!)もアマゾンレビューで見かけた。
実際に作者の中山さんのインタビューによると取材をせずに執筆したそうだ。
実は私の父は最期の3か月を生活保護のお世話になった。その申請を行ったのは娘である私自身だ。
引退後ふだんの生活は年金と貯金でつましく暮らしていた父だったが、体調を崩していよいよ手術が必要な病気かもしれないとなったとき、のちのちの医療費などのことを考えて私は父の生活保護の申請に行き、その日のうちに認可してもらえた。
おかげさまで入院、治療費などは生活保護によってすべて免除していただけ、病院に通えなくなった最期は近所の内科の先生に父の訪問看護もしてもらえた。
父の最期を見届けてくださったのは、当時パートに出ていた娘の私ではなく、その訪問看護の内科の先生と看護師さんたちだ。ふつう自宅で亡くなると検死に出されるのだけれど、訪問看護の先生が診続けてくださったおかげで死亡診断書もすんなり出してもらえた。「健康で文化的な最低限度の生活」にはお葬式も含まれていることを私はそのときはじめて知ったわけだが、お葬式代は遠慮させていただいた。
本当に父の最期は生活保護のお世話になり娘としても本当に助かった。当時我が家は義父が脳梗塞で身体障碍者1級だったこともあり、父の生活保護がなかったら、私たち娘世代の暮らしもこうはいかなかったと思う。
すぐに申請を通してくれた担当の役所職員さんにもありがとうという言葉しかない。
なので、本書ではそういう役所職員さんのほうが稀有な存在のように書かれているのが気になったので、そこは☆ひとつマイナスにさせていただいた。
◆ひとりごと◆
それにしても~ 阿部ちゃんだ。
阿部ちゃんの刑事姿をイメージして読んでいくと、途中で変な錯覚が。
それは「あれ、これ、東野圭吾じゃないよね。「新参者」シリーズじゃないよね」だ。
今、東野圭吾の「白鳥とコウモリ」を読んでいるのだけれど、これは新参者・加賀恭一郎ものではない。
それなのに、脳内ではなぜか刑事さんは阿部ちゃんで動いているのだ。
阿部ちゃ~ん!!
私はどこまで阿部ちゃんを好きなんだろう。 -
最後の方に来て、「あっ!」と思う。
うわ、そうか、そうだったのか!やられた!
そしてラストスパートをハラハラしながら読み進める。
だんだん文字が見えにくくなる。ウルウル。
もう、あとは願うように読んだ。
ジーンと来た。ズーンと来た。
護るものがある者として、これから生きていきたい…なんて思えた。