叢書 東アジアの近現代史 第4巻 ナショナリズムから見た韓国・北朝鮮近現代史 [Kindle]
- 講談社 (2018年1月30日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (280ページ)
感想・レビュー・書評
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ナショナリズムという視座を通して、近現代における韓国・北朝鮮の行動と理念を読み解く。論文集としての域をでず、まとまりの欠いたシリーズ前巻と異なり筆者の主張が全編を通じてまとまりがあるものになった。両朝鮮との関係についてアイデアをくれる。
南北統一について筆者は
「統一韓国の成立過程に積極的に協力し、統一韓国との関係改善の姿勢を示すことによって、統一韓国の対日政策は相当程度可変的になりうる。にもかかわらず、そうした可変性に目をつぶることは、外交的な敗北以外の何ものでもないはずである。」
「統一過程において、歴史問題を管理することによって競争規則の共有化を図っておくことは必要である。」
と昨今の韓国と日本の関係希薄化に警鐘を鳴らして、日本が貢献することの重要性を謳っている。
ここで疑問に思うのは、筆者自身が他で言及している
「日本からすると一旦解決したはずの問題を韓国が「蒸し返す」ように映るのに対して、韓国から見ると正義という価値が実現しないままの「解決」は未解決ということであり、それは正義が実現する形で解決されなければならないと考える。」
という韓国(おそらく北朝鮮も)の競争規則である。
突き合わせると、南北統一に日本が貢献することで歴史問題を解決しようと試みても、統一プロジェクトという両朝鮮に困難を伴う時期(しかも日本に責任があると考えている)にまとまった話なので、やはり公正対等な立場での交渉という正義は実現されていない。と、統一後にも現在の歴史問題と同じことを繰り返すことになるのでなないだろうか。
全体として筆者の主張は少し理想を語りすぎているように感じる。両国民の啓蒙が目的であればそれは大事なのだが、外交の提言まで踏み込むのであればもっと現実的、実際的な考察であるべきだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示