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感想・レビュー・書評
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本書は、帝京大学ラグビー部を大学選手権9連覇に導いた著者が取り組んだ「体育会系イノベーション」(脱・体育会の組織づくり)を解説した書。
著者は、「メンバー一人ひとりが自律的に考え、行動し、仲間と助け合いながら、自ら学習、成長する集団」づくりを目指して様々な改革を行っており、その改革の多くは、ダニエル・ピンクの「モチベーション3・0」を実践したもの。
それ以外で特に注目したいのが、①体育会系気質の一掃と、②「フロー」に入るためのスキル磨き、の2点。
著者は、平成世代の特徴(「他人からの「強制」には敏感で、拒絶反応を示し」、「自分の意見をなかなか言わない・言えない」)をうまく掴み、その上で、「昔の軍隊のような縦社会で上下関係が厳しく、規律も厳格で、時に上級生や監督、コーチの理不尽な仕打ちもまかり通る」体育会系組織の旧弊を廃し、逆ピラミッド型の組織を構築した。これがとても面白い。なにしろ、四年生が雑用のほとんどをこなすこととし、一年生を雑用から解放する役割の逆転を行ったのだ。精神的に余裕ができ一年生は、自分づくりに専念できるようになり、四年生をリスペクトする気持ちも生まれたという。確かに、いいことずくめだ。著者は、「脱・体育会系組織のよさは、上下関係の「強制」や「圧力」を小さくすることができた点です。共感力を身につける環境として、脱・体育会系組織が有効に機能しているのではないか」と分析している。
「普段の練習、生活を通じて、フロー状態に入る技術を身につける」取り組みも凄い。「フロー」とは、「集中して何かに取り組み、あっという間に時間が過ぎてしまった──その時の感覚」のことで、「フローになった時、人は持っている能力を存分に発揮することができ」、「人は充実感や楽しさ、生きることの幸せを感じ」るのだという。
本番に備え、フローに入る練習を平常時に積み重ねておくことがとても大事で、そのためには、「①明確な目標を定め、心理的エネルギーを集中させる、②あらゆることに成長マインドセットで取り組む、③いまのレベルより「ちょっと上」にチャレンジする、④即座のフィードバックがある、⑤大事なのは「未来」や「過去」ではなく「現在」、⑥「楽しさ」を活動の中心に置く、⑦パフォーマンス向上の天敵、「間接的動機」を少なくする。」の7つの鉄則を実践すべし、とのこと。これはかなり有効なトレーニングだ。
著者は学生に対して、勝つための指導ではなく「大学4年間を社会人の準備期間と位置づけ、好きなラグビーを通じて、社会で通用する「基礎能力」をつけ」るための人間教育を行っているのだという。著書のような立派な指導者の指導を受けられた学生は幸せだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
帝京大学ラグビー部を全国大学ラグビー選手権9連覇を成し遂げるまでに変貌させた心理学的マネジメント手法について書かれた本。
メンバー自身が学び続け、成長を続ける自律型組織を創るためのヒントが本書に書かれています。
指示命令はリーダーが楽をするためのツールにすぎません。リーダーの役割はメンバーが自ら成長できるようにサポートすることです。 -
とても感銘を受けた。自身のコーチング体験の際に得た学びと合致する部分も多く、忘れてはいけない部分だなと再認識。