本で床は抜けるのか (中公文庫) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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感想・レビュー・書評

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  • 蔵書で床抜けの心配をするのは1000冊からのようでまず一安心。木造の二階が自室だが蔵書は多分400から500冊程度。定期的に売ったり捨てたりして増えすぎないようにしている。

    物を増やすのが嫌で最近は電子書籍で買うことが増えた。装丁のいい本を所有する喜びはあるが。津野海太郎は老眼が亢進する高齢者はフォントサイズが変更できる電子書籍おすすめ、と書いていた。垢BAN食らうリスクはあるものの、それを言ったら紙の本には火事や水害のリスクがある。経年劣化によるヤケや歪みもある。

    著者はうだうだ書いているが妻子がいて1000冊を越える蔵書を広くもない賃貸住宅内に置こうというのが間違い。さっさと電子化した方がよかった。とはいえ10年以上前の執筆当時は現在ほど電子書籍は便利でなかったかもしれないが。「紙の資料でないと執筆できない」って、そうか? PCで複数画面が同時展開できる電子資料の方が利便性高い気がするが。検索も早いし。もっとも、これは「すでに読んでいる資料」に限られるかもしれない。電子書籍の話題になるたび「電子は読みにくい、紙の方がいい」と何度も繰り返すのにうんざりした。

    ただの本読みとしては書庫への憧憬はない。本が多いとなんか体が重くなって身動きしにくくなるような圧迫感、息苦しさを覚える。引っ越すときの箱詰めのだるさ、運ぶときの重さ。壁一面(全面ではない)の本棚が一棹、500冊も蔵書があれば(電子は場所を取らないので何冊でもいい)十分。俺もいい中年。生活はシンプルに、50歳になったら徐々に物を減らしていきたい。本書だと大野更紗さんの感覚が近い。内澤旬子さんの境地には至れていない。

    故人の蔵書を売却しようと見積もり依頼した古本屋が蔵書を盗もうとしたとの話に、先日読んだ『時が止まった部屋』の火事場泥棒が重なった。人間のクズ。

    「本で床は抜けるのか」を調査するうち蔵書が原因で妻に離婚を切り出され「最終的には床どころか、彼の人生の底が抜けて」しまうという悲哀のラスト。仕方がない。蔵書による居住スペース圧迫の問題もあるだろうが、妻からすれば著者の稼ぎや家事育児へのストレスも相当あったのだろう。著者は相応にやっていたと述べているが妻には妻の意見があったのだろう。

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著者プロフィール

フリーライター。1970年(昭和45年)大阪生まれ。旅・現場・実感にこだわった作品を発表し続けてきた。近年取り組んでいるテーマは、日本が抱える国境離島の問題と防衛のあり方、さまざまな親子のかたちと共同親権、入管法改正案や移民の是非など。こうした賛否の分かれる国内の政治的な課題について、イデオロギーに追随しない、まっすぐで公平な取材・執筆にこだわっている。旧日本領のその後を訪ね歩いたルポ『僕の見た「大日本帝国」』(2005年、情報センター出版局)、書斎の床が本で埋まった体験を出発点に本と人の共存を考えた『本で床は抜けるのか』(2015年、本の雑誌社)、爆発的な経済成長を遂げた中国を四半世紀ぶりに回った『中国の「爆速」成長を歩く』(2020年、イースト・プレス)など話題作多数。

「2023年 『誰も国境を知らない 令和版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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