異常とは何か (講談社現代新書) [Kindle]

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  • 異常の捉え方を、主に精神科医の視点からまとめてみた内容。

    異常と正常の区分は容易に逆転し得る
    正常であることに拘り過ぎることも異常になりうる
    過剰な状態のみが異常なのではない、不足や欠乏状態も異常として認識される
    精神の問題を身体的に理解することが正しいとは限らない

  • ちょっと前に「正義とは何か」を読んだ。
    時代とともに、為政者が変わることにより、正義が変化する。そんなことが書いてあった。
    今度は異常とは何かw

    初めのところから一部抜粋。

    「一種の欠如態としてのみ異常を捉えようとするのは、きわめて一面的ではなかろうか。異常の一部が、そうした欠如態であるとしても、それは多様な全体像の一面でしかない。むしろ表面的には欠如態に見える様態も、もう少し別の角度から見るなら、過剰態としての側面の方がよりクローズアップされてくることはないのか。あるいは平均的に収まっている「正常」こそが、全て過不足のない理想的な状態であると言えるのか?そもそもわれわれは欠如や不足という事態には敏感であるが、過剰という様態に対しては鈍感で制御ができにくい。」

    特に異常に対しての正常を考え、その位置関係について考察しているところが面白かった。
    正常と異常はどのくらい離れているものなのか、そして、それはお互いにどんな関わりを持っているのか。
    スペクトラム、というのは最近出てきた考え方だけれど、白黒つけない、濃淡で表す、そんな考え方は正常と異常についての私のイメージと合う。
    そして、スペクトラムというと私は何故かミスチルの「タガタメ」を思い出す。
    「僕らは連鎖する生き物だよ」
    歌詞の流れからすると、私の意図するところとは違う意味で歌われていると思うのだけれど、何だかとてもこの表現がしっくりくる。
    何故だろう。
    連鎖、という表現が、強固な結びつきを想起させ、相互補完するイメージを持たせるせいだろうか。

    著者の提案するメビウス。背中合わせな感じが、より狂気的で面白いと思う。

    社会構造が複雑になるにつれ、少し枠に収まらない人達の居場所が減っていってしまった。
    それまでは目立たなかった特徴が、役割分担によって強調されてしまった。
    昔はもっとお互いの足りない部分を補いあい、過剰な部分を許容しあっていたのだと思う。

    どちらが良いか、その答えはない。
    見方が変われば、立場が変われば答えも変わるから。
    今正常とされていることも、いつか異常と見做されることも充分にありうる。

    とはいえ、「枠」に収まっていることが良いとは、考えられてこなかったのだとも思う。
    なぜなら「中庸」の庸という字は「凡庸」、面白くない、つまらないという意味で使われているから。
    ま、普通過ぎるのも面白くはないよね。

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著者プロフィール

元上野メンタル・クリニック院長、精神医学史家

「2022年 『精神分析とナチズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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