- Amazon.co.jp ・電子書籍 (1005ページ)
感想・レビュー・書評
-
prime readingで無料で読ませて貰ったが、総計1000頁近くある読み応えのある実録漫画である。大正4年(1915)の12月、北海道苫前に人喰いグマが現れる。袈裟掛けと称される巨大羆は12月9日に主人の留守を守っていた妻と男子を、翌10日に熊狩りを避けて避難していた二家族の女子どもを襲い胎児を含む4名を殺害、3人に重症を負わせ、結局最終的に8人を惨殺した(この事件以前に3人を殺していた可能性もある)。
村人たちはマタギを招集、自警団を組織して迎え撃つが、3回も取り逃す。やがて県組織の到着、熊撃ち名人の仕留めにより翌々日に死体となるのではあるが、その一部始終をリアリズムの極地の漫画によって再現している。戸川幸夫の「羆風」を原作としているが、実際はその小説の基になった木村盛武「獣害事件最大の惨劇 苫前羆事件」の奇跡的な調査記録が原作と言っていいだろう(事件から46年後、昭和36年に生き残りの方々に聞き取りして完成させた)。北海道開拓民と、森の主である袈裟掛けを同等に描き、一人ひとりの殺害場面は、幼児や妊婦といえども一切手加減なしに描いている。羆は羆のルールで、獲物(人間)を殺害し、美味いところを食し、保存し再び襲う。猟師たちは後手後手に回る。事実の持つ重みが、読者を撃つ。
まるで一人で30人を殺した「津山事件」のような悲惨な場面が続くのではあるが、読後感は全く違った。ここで描かれるのは、惨劇の悲惨さというよりも、自然の厳しさである。
半世紀以上に渡り、日本の自然を描いてきた矢口高雄の大人の漫画である。矢口高雄は同じ頃、海津波の恐ろしさを約一年かけて連載したこともある。それはリアルタイムで私は読んでいて、海岸ではあまり揺れは感じなくても、小さな津波でも釣り人にとっては命取りになることをまるでドキュメンタリーを見るように知ることが出来た。自然を甘く見てはいけない。それは海津波で友人を失った矢口高雄の切実な警告だった。
大正時代の開拓民の暮らしや、村人総出の橋作りや、囲炉裏の構造、ムシロのひとつひとつの機模様に至るまで妥協することなく描いていて凄かった。primereadingが読める環境にある人ならば、読んでおいて損はない。
(初出1996-97年「月刊ビッグゴールド」連載)
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
昔から気になっていたお話。
amazonで読めるので漫画で読みました。
羆の心理(?)が描かれていて考えさせられる。
読む前はひたすら羆が恐ろしかった。
もちろん読後も恐ろしいが
それだけではない。
現在も熊の被害のニュースを聞かない年はない。
人間も自然の掟から大きく踏み外さないようにできたらいいのだが。 -
1915年(大正4年)12月に北海道天塩山麓の開拓村で、一頭の羆が2日間で6人の男女を喰い殺した「苫前羆事件」の全貌を、【矢口高雄】が激烈に描写した胸迫る作品です。原作は【戸川幸夫】の『羆風』ですが、【吉村昭】の『羆嵐』を読んだ時のおぞけを振る衝撃の記憶が生々しく蘇ってきました。もう一遍の『飴色角と三本指』は、大正14年に国の天然記念物に指定された“あお(カモシカ)”の中でも高値の “飴色の角を持つあお” を追う執念の密猟者 “三本指”を、迫力ある画筆で物語った宮城県刈田郡七ケ宿村の息つかせぬお話しです。
-
100年程前に山奥の山村で起きた大型羆による襲撃。それによって女子供含め、何人もの村民が羆に食い殺された。
こうして文章にするだけでも恐ろしいが、マンガという形で視覚的に知るとより一層羆の恐ろしさ、事件の凄惨さが伝わってくる。やはり羆の襲撃シーンはグロテスクというよりもホラーである。幾分のフィクションも混在していようが、歴史上稀に見る獣害は知る価値があろう。
ページ数も多く、読み応えがかなりあった。 -
2020/08/11
-
読了日 2020/08/13
Kindle unlimited にあったので読了。