人魚と十六夜の魔法 ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫) [Kindle]

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    『ぬばたまおろち しらたまおろち』シリーズの2冊め。今回は、小川未明の『赤い蝋燭と人魚』のお話が題材。

    綾乃は高等部に進学して、白藤寮に移り、後輩の桜子たちが元気に入学してきます。時を同じくして、ウラジオストクからやってきた、ボダくんという男の子が転入してきて、みんなの人気者になりました。雪之丞との間をやっかまれることも、ボダくん人気のおかげでなくなり、ホッとした綾乃。しかしそのころから、校内では小さな事件が続発し始め…といったお話。

    相変わらず賑やかで楽しい学園生活で幕が開き、転校生のボダくんも良い子で、嫌味のない展開です。今回は綾乃と後輩の桜子ちゃんの、ダブルヒロインのような感じ。亡くなったおばあちゃんがディアーヌの卒業生だという桜子。彼女から見ると綾乃も憧れのお姉様で、このあたり、ちょっとくすぐったくも可愛い感じです。

    実は桜子ちゃんが、おばあちゃまから贈られた着物には『小袖の手』という妖魅が宿っていて、それが小川未明の書いたお話とご縁があって…と。今回『赤い蝋燭と人魚』を軸にして、実にいろんな種族の妖魅が絡んできます。『小袖の手』『人魚』『ヴォジャノイ』そして『吸血鬼』とドモヴォイまで。まあ、よくぞこの話が一本の線でつながったものだと感心したくなります。

    ただ、そうですねえ。一方その頃…という場面転換のやり方が、あっち行きこっち行きしすぎて、無理やりそれを一本に纏めている感があり、読んでいる方は、ちょっと感情移入すると、他の場面や他の登場人物にお話が切り替わるので、盛り上がったところで頭を切り替えるのが大変です。いろんな種族や色んなお話が絡み合うところを見せたいのでしょうけど、もう少し整理した方がすっきりしますね。

    和製ハリポタと言われますが、魔女たちの養成機関ならではの授業やお勉強の内容など、映像で見るのではなく、文字で読んで想像する楽しさがあって、とてもいいと思います。学園のおおらかで上品な雰囲気や賑やかさ、男の子たちの腕白さなど、良いところは前回そのままに引き継いでいるので、ディアーヌの学園生活に浸るのが楽しければ、今回も楽しく読めるでしょう。ハリポタに比べると、白鷺さんの描かれる学園生活は、重苦しさがなく、とても軽やかです。そこがとっても好き。

    事件のドタバタがすごくて、ちょっと脇に置かれてしまった感がありますが、雪之丞とアロウ×綾乃の恋について、やっぱり綾乃は、雪之丞とアロウ『違う形で存在した、同じ男の子に無意識に惹かれた』という意識でいたようで、「蛇でいようが雪女メインで人間の姿をとっていようが(同じひとりの)あなたが好き。」という気持ちのようです。私もそう解釈していたので、彼女に対しては悪い感情はありませんでした。ところが、雪之丞とアロウの間は、そうすっきりとは行かないらしく…。別の人格を持つひとが、お互いをライバル視しているような雲行きです。

    そこをひとつのものとして愛せる綾乃ちゃんの性格を、雪之丞の実家の人たちは見込んで婚約を認めたのですし、綾乃は、浮気してるのとは違うと思います。ですが…別々の自分たちというふたつの人格に戸惑う彼らに寄り添って悩みを理解しようとするまではいいとして、アロウが出現すれば、アロウをハグして「好きな感触」といい、雪之丞が悩んでいると聞けば、「じゃあアロウをずっと封印しておこうよ。」と持ちかける…というのは、些か自分勝手で、「そんなにあっさり提案できることでもないだろうよ」と読んでいるこっちが呆れてしまいます。

    今後、二人の(三人の??)恋において、この三角関係と、綾乃に目をつける他の種族の男子…というのがメインになるのでしょうが、アロウと雪之丞の統合に、綾乃が大活躍の一つもしないと、いくら二人が統合されたと思っていた、という綾乃の言い分がもっともだとしても、自分勝手な子だなと思われてしまいそう。そこはこれからの読みどころでしょう。少女小説的な読み方をすれば、カッコいい二人の間で揺れるヒロインって、本当に王道なので、いかに綾乃ちゃんを、女の子から見ても共感できるヒロインとして保つか、っていうのが大事ですね。わかるわー!って思いながら読みたいですもの。基本、綾乃は、男女どっちに対しても、友達としては良い子なので、ぜひハラハラさせつつも、嫌な女!って思わせないように書いてもらいたいですね。

    それと、最後にひとつ。このお話、お茶する場面やお菓子食べる場面が多いのですが、どれも美味しそうで…ついクッキーと紅茶が欲しくなる…。ダイエット中なのに(笑)。レシピ本とか出たりしないかなあ。あったら見たいな、ぜひ。

    評価の星は3にしてありますが、実際は3.8くらいの感じ。次も早速読ませてもらいます。

  • 23/3/12〜

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